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反転攻勢に向けての活路が見えた―参院選の結果と平和運動の課題(その1)

〔以下の論攷は、日本平和委員会発行の『平和運動』9月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 「参院選は本当に与党の圧勝だったんでしょうかね。私はむしろ危機感を持ちましたけどね」
 この言葉は、東京選出の自民党議員・菅原一秀前財務副大臣のものだ。インターネットで配信されている「現代ビジネス」の「賢者の知恵」で、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が紹介している。その特別リポート「安倍官邸は、これからの野党共闘にとてつもない焦りを感じている~『年内解散』を急ぐ本当の理由」には、菅原氏の次のような指摘もある。
 「マスコミは改憲勢力で3分の2を獲ったのだから圧勝だと報じていますが、一方で1人区で11も落とした。共産党と民進党の協力がうまく行くはずがないとタカをくくっていましたが、野党協力をナメてはいけなかった、ということです。落ちた現職大臣二人も、安倍政権の重要な政策の柱の『沖縄』と『原発』を担当する二人ですからね。勝った勝ったと緩んでいたらしっぺ返しを食います。」
 もう一人、「勝ったからって、浮かれていられる状況じゃないんだよ」と指摘する人物がいる。『毎日新聞』7月18日付の山田孝雄「風知草」というコラムで取り上げられている小泉純一郎元首相である。小泉氏は言う。
 「与党が大勝したからって、そんなに変わるもんじゃないよ。これから大変だよ。アベノミクス」 「これまで、目標はわかるけど、その通りにいってるか、実証しなくちゃいけない。『目標と実態が違うじゃないか』っていう人が出てくるよ。勝ったからって、浮かれていられる状況じゃないんだよ。もっと厳しくなるんだよ」
 参院選で安倍首相は当初の目標を達成した、かに見える。しかし、自民党の中に「むしろ危機感を持」つ議員がいる。元首相も、「もっと厳しくなる」という見通しを語っている。
 それは何故か。どうして、危機感や厳しい見通しが語られるのだろうか。

1、 与党と自民党

 与党は確かに勝ち、野党は負けていた

 今回の参院選の結果は自民56、民進32、公明14、共産6、維新7、社民1、生活1、無所属4となっている。これを見ても分かるように、政府・与党が勝ったことは明らかである。与党の合計で、安倍首相が目標としていた改選議席の過半数である61議席を突破したからだ。自民党は56議席、公明党は14議席で、与党の合計は70議席となって目標を9議席上回っている。
 前回3年前の参院選では、自民党だけで65議席を獲得していた。これに比べれば、公明党を加えた与党の合計で61議席という目標は低すぎる。初めから十分に達成可能なものだった。
 とはいえ、選挙にあたって掲げた勝敗の目安をクリアーすることができた。目標を達成したのだから勝利である。
 加えて、野党が阻止すると言っていた改憲発議可能な議席である3分の2議席も、改憲勢力全体で突破した。安倍首相は、ひそかにこれを狙っていたに違いない。この点で、野党は目標を達成できなかったのだから敗北である。

 自民党は圧勝しきれなかった

 しかし、冒頭に紹介したように、「本当に与党の圧勝だったんでしょうかね」という声が、当の自民党議員からあがっている。それは何故か。
 与党が勝ったとはいえ、自民党が圧勝しきれなかったからである。与党全体としても、3年前の前回と比べれば、76議席から70議席へと6議席減らしていた。
 自民党だけの議席ではもっと減少した。3年前の65議席から56議席へと9議席の減である。比例代表では1議席増やしたものの、選挙区では10議席も減らしている。この選挙区での10議席減が大きなショックを与え、「本当に与党の圧勝だったんでしょうかね」という発言を生み出した背景である。
 しかも、自民党が秘かな目標としていた参院での単独過半数の回復という目標も、この選挙では達成できなかった。自民党公認候補の当選では過半数に2足りず、これを補おうとして当選した無所属議員を開票速報中に追加公認した。
 しかし、それでも1議席足りない。ということで、無所属の非改選議員であった平野達男元復興相を口説いて自民党に入党させ、ようやく27年ぶりの単独過半数回復という悲願を達成できた。とはいえ、これは選挙での成果ではなく、姑息な政治工作の結果にすぎない。

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