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まだ完全には解明されていない低線量被曝

Blogosを見て気がついたのだが、池田信夫氏が武田邦彦氏にけんかを売っている(参照)。池田氏がこの手のけんかをしばしば仕掛けるのは良く知られたこと。トラフィックを稼ぐのには良いかも知れないが、他の人にはあまり真似をして欲しくない手法だ。

池田氏の発言で一つだけ気になった点があったので指摘しておく。
(武田氏は)...(前略)...と書いているが、何を根拠に「ほとんど判っていない」などといっているのか。被曝と健康被害の関係については、不幸なことに広島・長崎の被爆者12万人のデータがあり、きわめてくわしく正確にわかっている。その被爆者の調査をした近藤宗平氏もいうように、100mSv以下の被爆者には統計的に有意な健康被害が出ていないのだ。
この「きわめてくわしく正確にわかっている」という表現は私の理解とは大きく異なっている。広島・長崎の被爆者のデータに関しては、米国が軍事秘密扱いしたこともあり、正確なデータがすべて公開されているとは言いがたい。その上、当時は爆発の瞬間の外部被曝ばかりに注意が注がれていたため、内部被曝や、長期的に低線量の被曝をした人たちに関する追跡調査が十分にされたとは言えない。

また「100mSv以下の被爆者には統計的に有意な健康被害が出ていない」という表現も、科学的には「100mSv以下の被爆者に健康被害が出たかどうかは、統計的にはどちらとも言えない」とした方がより正確である。だからこそ、「安全を見越して100mSv以下でも(しきい値なしに)被曝量に応じた健康被害があるという前提で住民を避難させるのが適切」という国際標準があるのである。

低線量の被曝の被曝や内部被曝に関しては、まだ解明されていないことが沢山あり、科学者たちの間でも意見が分かれているのだ。「きわめてくわしく正確にわかっている」という表現はここにはあてはまらない。

ちなみに、今回の事故のように、原子力発電所から放射性物質が漏洩した場合に、周辺の住民にどのくらいの被害が生じるかを予測するモデルは存在する(注:あくまでモデルなので、必ずしもその通りになるとは限らない)。詳しくは別のエントリーに書いたのでそこを参照していただきたいが、近隣住民の総被曝量(人・レム、person-rem)から、被曝が原因で晩発性の癌や白血病でなくなる人の数を予測する計算式だ。

たとえば、もし福島県に済む200万人全員が今年だけで(国が年間被曝量の上限と定めた)20ミリシーベルト(2レム)の放射線を(内部・外部被曝の両方をあわせて)浴びてしまったとすると、総被曝量は400万人・レムとなる。

このモデルによると100万人・レムあたり約400人が晩発性の癌や白血病で死亡すると予想されるので、その数式をあてはめると4倍の約1600人となる。

この200万人中1600人という数字を多いと見るか少ないと見るかは人によって違うだろうが、子供を抱える福島のお母さんたちに向けて「100ミリシーベルト以下なら健康に被害がない」と言い切ってしまうことは、あまりにも無責任だし誠実ではないと思う。

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