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あらゆる正面で閉塞状態の中国 - 岡崎研究所

 8月15日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙コラムニストのラックマンが、南シナ海や中国の対豪投資の問題によって、中豪関係が緊張していると述べています。主要点は、次の通りです。

標的にされる豪州

 南シナ海とオリンピックという二つのことが相まって中国のナショナリズムの毒舌は豪州を標的にしている。南シナ海に対する中国の主張を否定した先月の国際仲裁裁判所の裁定が発端になった。豪州は日米と共に中国に対し裁定の尊重を求めた。中国は烈火の如く怒った。人民日報傘下の環球時報は豪州が南シナ海に入って来れば豪州は格好の攻撃目標になる等と主張している。オリンピック水泳競技も紛争の種になっている。豪州の選手が中国の選手を薬物使用者だと呼んだため、中国メディアは対豪批判を爆発させた。

 これは、中豪関係を超え、中国の台頭と西欧の間の緊張を示している。南シナ海と太平洋が競争の海域になれば、豪州は、中国がアジア太平洋を支配することを受け入れるのか、あるいは引き続き同盟国である米国の支配に賭けるのかという難しい選択に直面する。

 これまでは、安全保障上の懸念は経済上の利益に比べて重要性が少ないと考えられてきた。資源の対中輸出により豪州は20年以上、不況を回避することができた。しかし、経済関係でも問題が出てきた。今年に入って、豪州政府は中国企業によるSキッドマン社(豪州の国土の1%を所有する)の買収を阻止した。先週は2つの中国企業によるオースグリッド送電電力公社の買収を阻止した。買収阻止に当たって豪州政府は安全保障上の懸念を理由にした。

 米国は、南シナ海の航行の自由作戦への豪州海軍の参加を求めている。一方、中国は、豪州がそのような活動に参加すれば厳しく対応することを明らかにしている。中国の対応は、当面心理的、外交的なものであろうが、中国からの投資が阻止されることになれば中国の反発は一層強まるであろう。

 このように考えると、豪州が今後数十年の間地政学上の引火点になる可能性がある。豪州にとり21世紀はそう幸運な時代にはならないかもしれない。

出 典:Gideon Rachman ‘Why Australia’s luck may be running out’ (Financial Times, August 15, 2016)
http://www.ft.com/cms/s/0/126470e0-62c5-11e6-a08a-c7ac04ef00aa.html#axzz4Hdp0WXHm

 上記は、興味深い見解です。従来、豪州の中国観は総じてソフトなものであり、中国の脅威も左程感じてきませんでした。同時に、価値を共有する国として対米同盟は強固に保ってきました。ところが、南シナ海の問題や中国の対豪投資の問題などを契機に、豪州の中国に対する安全保障観がより現実的なものに変わり始めています。これは、悪いことではありません。

 ラックマンは、今の問題の根源は中国の台頭にかかる戦略上の問題であるといいます。まさにそうでしょう。中国がかつて宣言したように「平和的」な台頭であれば問題はありません。しかし最近の中国の言動や振る舞いを見れば、とても「平和的」とは言えません。覇権主義であり、拡張主義です。

中国の最大の障害

 南シナ海の問題を契機に、今中国の対外関係はほぼあらゆる正面で閉塞状態にあります。中国から見て最大の障害は、米国を中心とする日本、豪州、韓国などの同盟です。それを打破するために、第一に日本への対応を厳しくし、第二に韓国、豪州と米国の間に楔を打ち、第三はASEANの国々を分断しようとしています。中国の対豪州戦略は対韓国戦略と同様に中国の対ミドル・パワー戦略とも言えるもので、今後経済分野を含め対抗措置をとっていく可能性もあります。この戦略には結構高い優先度が置かれているものと思われます。 

 THAADに関する韓国に対する中国のメディアの執拗な批判や中国における韓国文化活動の停止などは、韓国の政府内外に大きな心理的圧迫を加えています。今の中国の言動を見る限り、対中均衡を強化していく他により良い政策はありません。米国を中心に日本、豪州、韓国の連携を一層強めていくことが重要です。

 中国の海洋進出の行動は国際秩序に挑戦する勢力であるとの中国の姿を世界に印象付ける結果になっています。中国に対する信頼感は大きく低下しています。英国のメイ新政権は、仏EDFと中国の企業が建設するヒンクリーポイント原発の最終決定を延期しました。在英中国大使が激しくこれを批判する書簡をメディアに投稿しましたが、問題の深刻さが窺われます。メルケル独首相の対中姿勢も最近厳しくなっているといわれます。漸く欧州がアジアの現実を理解し始めたのであれば良いことです。

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