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日本の役所は能力のない人が上級職には多すぎる。社会保障を良くするには、数理の専門家を要職におかなければダメだ―「賢人論。」第23回(中編)高橋洋一氏

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どう見ても介護は衰退分野ではないのに、介護報酬が下がるのは興味深い現象

みんなの介護 年金額がどのように計算されて出てきた数字なのかをきちんと公表するべき、ということですか?

高橋 当たり前じゃない。当たり前すぎて話になりませんよ。

みんなの介護 現状の日本はそうなっていないんですね?

高橋 保険なのにそうなっていないのはおかしいですよね。保険には収支相等の原理があって、保険収入の見込みと保険支出の見込みがイコールになるようにするんです。何年かたったときや、計算に誤りがあったりしたときには、検証が可能な世界なんですよ。

それなのにみなさんは、上がっただの下がっただの、感覚的な話ばかりしているから、何を言っているのかよくわからない。保険料が上がったんだとしたら、数字の妥当性を第三者が見て、客観的に議論できる話なんですよ。見込みの利率の話だったら、将来の話だから利率が当たるとは限らないんだけれど、ブレてしまったときはどうなるかというのも全部計算するんですよ。その検証でもっての保険料ならば、納得できます。

受給額が下がるというのは、どう計算しても下がりますよ。それは、少子化だから。少子化の話は出生率に依存するんだけれど、当面の間は劇的に変わらないというのはわかっているから仕方がないです。そのレベルで破綻と言っているのはおかしいですよ。

みんなの介護 おっしゃることはわかりますが、介護報酬は引き下げになり、それと連動して介護職員の給料も下がるという現状があります。

高橋 介護報酬が下がるのは不思議ですよね。“保険収入が上がらない”という前提に立たない限り、そういう現象って、数理からはなかなか出てこないですよ。介護報酬が下がるときに、介護職の分配の問題なのかなと思うくらいだよね。

介護は、基本的にどう考えたって衰退分野ではないってわかりますよ。なぜなら、これからしばらくは要介護の人が増えるに決まっていますから。日本の総人口に対する要介護者の比率が増えるじゃないですか。少なくとも仕組みさえうまく作れば、そこで働く人の労働条件の改善にしても、それほど難しい話ではないと思いますよ。

一般的には、介護保険料収入は増えていくわけだから、平均単価がものすごく上がらない限り、介護報酬が下がるはずがないんです。私なんかは、数式を見ながら合理的に考えて、納得性の問題だと思うだけですよ。

みんなの介護 先生から見れば、介護報酬が下がるのは理解できないですか?

高橋 興味深いですよね。おもしろい現象だなというふうに思うよ。だって、介護保険の収入が上がっていくのは当然でしょ。じゃあ、どうして下がるの?と思いますよ。誰かが、どこかに取ってしまっているんじゃないの(笑)。そう思ってしまうくらいです。

みんなの介護 介護保険で保険数理というものを考えると…。

高橋 要介護認定それぞれのコストと、高齢者と要介護者の増加数の過去データを5年分くらい収支計算するだけだと思いますよ。高齢になればなるほど介護の比率は増えるから、高齢者数がどれくらい増えるということさえ言ってくれたらね。ある一定の関係はあるだろうから。

要するに、高齢者の比率が高くなると、要介護の比率はこれくらい、介護費はどれくらい、というように計算できると思うよ。介護何日分でいくら、と決めてしまえば、保険の支出は無限大にはならないでしょう。そうすれば、介護保険だって保険数理にきちっと乗るから。それらを具体的に言うか言わないかだと思うけどね。あと、厚生労働省は計算した結果を言ってくれればいいんですけれど。

みんなの介護 会計の透明化をする、ということですね。

高橋 今の厚生労働省にはできないんじゃないかな。こういうのって、ド文系の人はいらないのよ。保険数理の専門家が数人いればできますから。でも、そういうことをすると、実は今の厚生労働省の中にいる人たちなんてこういうのがわからない人が多いから、みんな失業しちゃうんじゃないかな(笑)。海外だったら、年金数理官が一人いればできちゃうから。

私は東大出身で数学が専門なんだけれど、アメリカにあるプリンストン大学の数学科を出て研究者にならず、SSA(アメリカの社会保障局)といって日本でいう年金機構で年金数理の仕事をやっている人を知っています。で、そいつが長官になった。機械的な計算だけでですよ。


日本は文系公務員天国だ。専門家へのリスペクトがまるでない

高橋 私が厚生労働省に行かなかったのは、厚生労働省でアクチュアリーをやると数理課長くらいにしかなれないから。つまり、課長止まりなんですよ。

みんなの介護 日本では、伝統的にそういう仕組みなんですか?

高橋 もともと、日本では専門家に対するリスペクトがないっていうのが社会のベースにあるよね。一般企業のメーカーでも、トップに技術職が就くケースはあまりないでしょ。おかしいと思うよ。メーカーなんて、本当は技術がすべてなのに。

みんなの介護 省庁では専門家を採用しないのでしょうか?

高橋 そうですね。採用してしまうと、文系の人が脅かされるから。私は、役人というのは専門家がやるべきだと思いますよ。役所ではたいてい1、2年ごとに部署を渡り歩くのが慣例でしょ。これって、専門家とは言えないですよ。年金局には私の友達もたくさん行っているけれど、彼らは厚生労働省の中では数理課長あるいは数理官までしか行けないわけ。要は、専門家なのに幹部になれない。

でもね、企業で年金数理の専門の人を雇わなければならなくなったときには、彼らはものすごく希少価値が出るんです。役人のときより、辞めたときのほうが給料も上がる。企業から見たら、年金数理のプロは「あなたがいないと会社を運営できないから、本当に来てください」っていう世界(笑)。だから、たまに面会に行くと、みなイキイキとしていますよ。

国の機関にも保険数理の専門家を配置するというのは、制度を良くするためには一つの道だと、いつも信じているけれどね。だいたい、日本の役所は能力のない人が上にいすぎなんですよ。

みんなの介護 そういったスペシャリストを配置する決まりを作るべきなのでしょうか。

高橋 財務省にはいろいろな仕事があるんだけれど、公務員の年金、つまり共済年金の財務運営は、厚生労働省ではなくて、実は財務省なんです。民間の年金ならアクチュアリーを置かなければいけない決まりがあるんですが、財務省にはいつもいないわけ。で、いないと格好悪いから、厚生労働省から一人借りてきているんですよ。これ、いかに専門家が冷遇されているか、という例です。日本の文系公務員天国には専門家がいないんですよ。

私なんかは、手に職があって自信があったから辞めたけれど、こういうふうに思える公務員は少ないんじゃないかな。役所にしがみついている人が多いですよ。なぜか?って話を聞くと、「外に出て泳げないからだ」ってみんな言いますよ。それがまた、官僚の世界が悪循環になっている理由でもあるんですが。

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