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企業年金や個人年金は、高齢者家計に役立っているか?~全国消費実態調査の集計表を使った確認 - 中嶋 邦夫

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■要旨

公的年金は老後の収入の柱であるが、企業年金や個人年金などの私的年金は高齢者の家計にとってどのような役割を果たしているのだろうか。本稿では家計の消費支出に注目し、総務省統計局が実施している「全国消費実態調査」(二人以上世帯)の結果を利用して、私的年金が果たしている役割を概観した。

その結果、公的年金に加えて私的年金も受給している世帯では、公的年金のみを受給している世帯と比べて、同程度の収入であっても、教養娯楽やその他、食費を中心に消費支出が多い傾向が見られた。私的年金も受給している世帯では預貯金や有価証券の残高が多いため、その影響でこのような消費支出の差が生じている可能性もあるが、私的年金という公的年金以外の収入源があることで将来の収入のリスクに対して安心感が生じ、消費支出の増加に繋がっている可能性も考えられる。

■目次

1 ――― はじめに
  1| 問題意識
  2| 利用したデータ
2 ――― 高齢者世帯の全般的な状況
  1| 現役世代との比較
  2| 世帯類型別
3 ――― 私的年金も受給している世帯の特徴
  1| 全体的な傾向
  2| 年間収入を揃えた場合
  3| (参考) 金融資産残高の影響
4 ――― 総括と考察

1 ――― はじめに

1|問題意識
「高齢者世帯の収入の7割を公的年金・恩給が占めており、6割の高齢者世帯では収入の全てが公的年金・恩給となっている」というフレーズは、厚生労働省が公的年金の重要性を語る際によく使われる。では、企業年金や個人年金などの私的年金は、高齢者の家計にとってどのような役割を果たしているのだろうか。本稿では家計の消費支出に注目し、総務省統計局が実施している「全国消費実態調査」(二人以上世帯)の結果を利用して、私的年金が果たしている役割を概観した。

2|利用したデータ
日本における家計に関する大規模調査には、前述した全国消費実態調査のほかに、総務省統計局が実施している「家計調査」も存在する。しかし、家計調査のサンプル数は全国消費実態調査よりも少ないため、私的年金を受給している世帯を抽出した集計が存在しない。また、全国消費実態調査は二人以上世帯と単身世帯に分けて調査・集計が行われているが、単身世帯のサンプル数は少ないため、私的年金を受給している単身世帯を抽出した集計が存在しない。そのため、本稿では全国消費実態調査の二人以上世帯の調査結果を利用した。ただし、全国消費実態調査(二人以上世帯)には十分なサンプル数があるとはいえ、私的年金を受給している世帯に限定するとサンプル数は少なめになる。そこで本稿では、直近3回分(2014年、2009年、2004年)の集計結果を見ることで、傾向の安定性を確認した。 リンク先を見る

また本稿では、私的年金が果たしている役割を概観するために、全国消費実態調査のうち「公的年金・恩給受給額階級・企業年金・個人年金受給額階級別」の集計表を利用した。ただし、公的年金・恩給受給額階級別と企業年金・個人年金受給額階級別は別個に集計されているため、企業年金・個人年金受給額階級別には公的年金・恩給(以下、単に公的年金という)を受給していない世帯が含まれる。そこで本稿では、企業年金・個人年金(以下、両者をまとめて私的年金という)と公的年金の両方を受給している世帯と、公的年金のみを受給している世帯とを比較した。

なお本稿での比較は前述した集計表に基づいたものであり、両世帯の違いの主因が私的年金の受給によるものかは明らかにしていない。因果関係の確認には、統計学に基づいて個票を分析する必要がある。この点には留意していただきたい。

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