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【読書感想】ゴジラとエヴァンゲリオン

リンク先を見る ゴジラとエヴァンゲリオン (新潮新書)

Kindle版もあります。

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内容紹介
戦後日本における特撮とアニメの最高峰――それがゴジラとエヴァンゲリオンだ。異形の怪物はどのように生み出されたのか。なぜ大衆の心をつかんだのか。製作者たちの過酷な戦争体験はどう作品に反映されたのか。庵野秀明監督と「ゴジラ」をつなぐ線とは何か。なぜオタクたちは「エヴァンゲリオン」に熱狂するのか。日本SF大賞受賞の著者が、作品への深い愛情と膨大な資料をもとに、鬼才たちの企みを解き明かす。

 この新書、『シン・ゴジラ』の公開前に上梓されたものです。

 『ゴジラ』の第一作をはじめとした、日本の特撮映画の歴史が概観されており、どちらかというと、『エヴァンゲリオン』よりも、特撮に関する内容が充実している印象です。

 まあ、『ゴジラ』も『エヴァンゲリオン』も、それぞれ、いろんなところで語り尽くされている印象はあるのですが。

 著者は、「はじめに」で、ゴジラとエヴァンゲリオンという2つの作品について、このように述べています。

 このふたつの物語は、どちらも日本本土での決戦を描いている。それは戦後70年の平和の奥底に潜在している戦争の記憶と終末戦争の予感を呼び醒ます。まだ若かった頃の友情や恋愛の残酷さ、あるいは純粋な正義感の美しさと危うさも思い出させる。

『ゴジラ』と『エヴァ』は、非実在の怪物でありながら、観る者たちのアイデンティティーを揺り動かす。過剰な自己投影を誘うこれらの作品が「オタク的」な受容形態と深く関わっているのはそのためだ。『ゴジラ』は、その第一作から日本SFのコミュニティの発展にかかわり、「おたく」の誕生に影響を与えた。そして、『エヴァ』はオタクを「ヲタク」と呼ばれる層へと変化させた。そのヲタク文化は、今や特殊な一部の人々の趣味ではなく、日本文化やコンテンツ産業にまたがる基礎教養となっている。

 2016年の夏には、庵野秀明の総監督による『シン・ゴジラ』が公開される予定だ。『エヴァ』の庵野監督が『ゴジラ』を作るのだ。

 僕は、庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』に関しては、半信半疑、というか、どちらかというと、あまり期待していなかったんですよね。

 アニメーションならともかく、庵野監督は実写映画には向いていないのではないか、『キューティーハニー』の二の舞になってしまうのではないか、と危惧していたのです。

 庵野監督が大の特撮マニアであることは知っていましたが、それにしても、アニメーションと同じ、というわけにはいかないだろう、と。

 この新書のなかでは、TV版『エヴァンゲリオン』の最後の2話に、多めのページが割かれています。
 TV版『エヴァンゲリオン』の終わり方は、当時、かなりの物議を醸したんですよね。映画版も、別の意味で「衝撃的」ではありましたけど。

 番組制作の末期、監督は鬱状態に陥り「死にたい」と繰り返して周囲をいっそう苛立たせた。それはTV放送終了後も続き、感情の振幅の大きさにスタッフは困惑した。

 庵野は『スキゾ・エヴァンゲリオン』で、自殺願望が昂じて一度はガイナックスの屋上に立ち、実際に飛び込めるか試してみたと述べている。これに対して『パラノ・エヴェンゲリオン』では、キャラクター・デザインを担当した貞本義行とアニメーターの摩沙雪が「ちょっとあいつの罠なんじゃないかなって(笑)」「そんなに苦労しているとは、思っちゃいけないんですよ(笑)」と茶化している。

 しかしそういう「苦悩する作者」がファンを魅了するのは昔からの定番だ。

 今回、『シン・ゴジラ』で、庵野秀明監督に再びスポットライトが当てられています。
 そのなかで、庵野監督は、作品をひとつ作るたびに、燃え尽きてしまって極度の鬱状態に陥ってしまう、というのも紹介されていました。

 また、宮崎駿監督との「微妙な関係」について言及された、こんな文章もありました。

 宮崎監督は、庵野の能力は認めていたが、軍艦など兵器への執着や残酷描写の執拗さ、また性的表現への倫理観の低さを批判的に見ていた。出会った当初、強く将来を嘱望していただけに、『くりいむレモン』のような作品に関与したと知って激怒したともいわれている。この作品は、日本初の商業用アダルトアニメといわれており、兄と妹の過激な性描写などを含んだロリコン・アニメだった。

 もっとも宮崎は、能力ある若手に手厳しい苦言を呈することで知られていた。例えば押井守の『天使のたまご』(1985)に対しては「努力は評価するが、他人には通じない」とし、直接本人に「帰りのことなんて何も考えてない」「あんなものよくつくれた」「頭がおかしい」と言ったという(押井守談)。この作品はノアの箱舟が陸地にたどり着けなかったもうひとつの世界という設定で、十字架に似た兵器を担いだ少年や卵を抱える少女、巨大な眼球のような空間など、幻想性に満ちており、『エヴァ』に通じる作者の内面告白的作品だ。ちなみにこの作品にも庵野は貞本義行と共に原画担当で参加していた。

 庵野のほうも、宮崎監督への憧憬は強かったが、自身の表現や好みへの干渉はよしとせず、一時は宮崎の「禁欲的」な創作態度を批判した。しかし深いところで互いに相手を認め合っていたのは言うまでもない。

 庵野さん、『くりいむレモン』にも参加していたのか!

 とはいえ、アニメ制作者としては、食べていくために仕事を選んではいられない、というのも当時の現実ではあったのではないかと思われます。
 宮崎駿監督のように、自分の倫理観を貫ける立場の人のほうが珍しい。

 それにしても、宮崎監督、押井守監督には酷いこと言ってるなあ。まあ、押井さんのほうも、宮崎監督を挑発するようなことを繰り返し仰っているので、この二人に関しては、これがお互いへの挨拶みたいなものかもしれません。

 庵野秀明監督の場合は、なんといっても、宮崎駿監督の長篇アニメーション映画引退作『風立ちぬ』の主人公の声に抜擢されているわけですから、険悪なだけの関係のわけがないですし。

 2016年7月29日、『シン・ゴジラ』が公開される。脚本・編集・総監督=庵野秀明、監督・特技監督=樋口真嗣という現在考えられる限りの最強タッグだ。

 歴代、『ゴジラ』製作に関わった人々は、この映画は核の恐怖を伝えるもので、反戦や環境保護の願いも込められていると異口同音に語ってきた。それは偽りではないだろう。画面からも、そのメッセージは感じ取れる。しかし同時に、『ゴジラ』は戦いの壮烈さを人々に焼付ける最高のエンターテインメントであるのも事実だ。観客はゴジラが街を破壊する様子に魅了され、爆発炎上に歓声をあげる。

 今回のゴジラのキャッチコピーは「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」。製作発表が2014年12月8日(太平洋戦争回線記念日)だったことからも窺えるように、『シン・ゴジラ』にも社会的メッセージ性が感じられるが、それは原点回帰した怖いゴジラ、最高のエンターテインメントとしてのゴジラと矛盾するものではない。むしろ自己の持つメッセージ性をも蹂躙するパワーが出せるかどうかが成否の鍵だろう。

 庵野は『ゴジラ』第一作について「畏怖の対象として描く怪獣映画の最高峰。怪獣を主役と据える映画に必要な要素が無駄なく詰まり、適切に配置されている最初にして完璧な作品」とリスペクトし、「全てが見事」と賛美している(前掲「『怪獣』という存在の耐用年数」)。だが第一作をリスペクトしているからこそ、庵野監督は先行作品に拘束され、凭(もた)れかかったような作品作りをしてはダメだ、とも感じているだろう。それは逃げであり「逃げちゃダメ」なのだから。

 繰り返しになりますが、庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』は多くの人に高く評価され、商業的にも大成功をおさめています。
 「会議ばかりの映画」などと言われながらも、東京を破壊するゴジラの圧倒的なまでの「破壊美」(と言っていいのかはわかりませんが)も含め、怪獣映画の伝統を受け継ぎながら、「現代の役人の姿」を巧みに描いた『シン・ゴジラ』。

 僕としては、「ものすごく面白かったけれど、これが多くの人に高く評価される時代になったんだなあ、ひょっとして、みんな『オタク』になってしまったのかなあ」なんて考えさせられる作品でもありました。

 『シン・ゴジラ』公開前に書かれたものですが、庵野秀明監督、そして、日本の特撮映画が、どのようにして『シン・ゴジラ』にたどり着いたのかがわかる新書だと思います。

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