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「いまどうしている?」が「いま何が起きている?」に変わるとき

ツイッターはさまざまなメディア装置の道具になりうる。
それはツイッターがたんなるおしゃべりツールではなくて、集団的にファクトを伝える優れた機能を持っているからだ。

●問いを変えた米ツイッター



 ツイッターはほかの人と交流するソーシャル・ネットワークというだけでなく、ニュース・メデイアとしての特性を強く持っているという研究をこのところ取りあげているが、そういう見方をする人は少なくない。

 ツイッター社の幹部たち自身もツイッターをニュース・メディア化することを考えていたという話は前にも書いたが、彼らのそうした考えがはっきり見てとれるのは、つぶやき(ツイート)の呼びかけの変化だ。
 ツイートを入力するウィンドウの上に、日本語ページでは、「いまどうしてる?」と書かれている。こう尋ねられれば、「晩ご飯を食べている」とか「二日酔いでつらい」などとつぶやきたくなる。

 英語のツイッターも最初は「What are you doing?」だった。ところがいまは「What’s happening?」になっている。
 09年11月に変わった。
 英語のツイッターでは、個人の行動ではなくて、より客観的な「できごと」を尋ねる問いになっている。

 ツイッター社のブログでの説明によれば、人びとはネットで「いまどうしている?」とやりとりしていたのでオープン当初はそうしていたものの、そのうちこの質問を無視して「いま何が起きている?」を書き始めたので変えた、とのことだ。たしかにツイッター社は、利用者が新たな使い方を始めると、それを認めて自分たちで提供し始めるということをしばしばやっている。「有名人でもない自分が何をしているかなんて誰も興味を持たないんじゃないか」とツイッターを使い始めると誰しも思うから、客観的なできごとを尋ねる問いに変わっても不思議ではないかもしれない。

 しかし、自分が何をしているかをつぶやいている人は依然として多い。利用者がそうし始めたからというだけではなく、じつは会社としても「いま何が起きている?」をレポートしてもらいたかったのだろう。

 こうした呼びかけの変化からも、ツイッターのニュース・メデイア化の兆候は感じられる。

●動画の「目次」は自動作成できる



 前回はツイッターをニュースメディア化する「ツイッター・スタンド」のアイデアを紹介した。これが役に立つレベルになるまではもう少し時間がかかりそうだが、今回のはもっと簡単にできるだろう。というよりも、もう誰かが作っているかもしれない。

 それは動画の中身の検索にツイッターを使うというものだ。
 08年の米大統領選挙候補者の討論会やオバマの就任式の生中継に触れているつぶやきを集め、時間ごとに頻出する言葉を並べて動画の「目次」に仕立てている。動画が始まって何分後にどんな言葉が飛び交っているかを調べ、たとえば25分後にイラクという言葉を含むつぶやきがたくさん飛び交っているのであれば、このころイラクが話題になっているという推測が成りたつ。イラクのことに関心がある人は最初から動画を見なくても、このあたりを見ればいい。
 この研究者たちのサイトに作られた「スタットラー」と名づけられたページでは、実際にキーワードで作成された目次ができていて、時間をクリックすると、その時点の動画を見ることができるようになっている。

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 またその言葉の出方がどう推移してきたかもグラフ化しており、その話題がいつごろから盛り上がったかが見てとれる。イラクに関心があるならイラクという言葉がつぶやかれだしたあたりから見ればいい、ということになる。

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 おもしろいことに、「おっと」とか「ちくしょう」といった言葉もひろっている。人びとがどんな感情でそれぞれの場面を見ていたかがわかる。

 さらに、ツイッターの情報からは人びとの関心度もうかがえるという。長いつぶやきが多いときは、人びとがおしゃべりに熱中していて、その場面を見ていない。また、特定の人向けにメッセージを送るときに使われる@を含むつぶやきが多ければ、人びとは知りあいとつぶやきあっていて、そのときの場面に関心を持たず、重要だと思っていないことが推測される。@を含むつぶやきの多い少ないでそのときどきの場面の重要度がわかるという理屈だ。このようにして各時点の「おしゃべり度」や「重要度」もはじき出し、時々刻々変化するようすをグラフ化している。

「おしゃべり度」はともかく「重要度」がほんとうにこのようにしてはじきだせるのかはちょっとわからない気がするが、いま見ている動画の場面にほかの人たちがどれぐらい関心を持っているかについてのひとつの指標にはなるかもしれない。

 Uストリームやニコニコ動画では、生放送を見ながらつぶやけるし、動画にあわせてつぶやきやコメントを見ることもできる。これらの情報を使えば、こうした仕組みを作るのは簡単だろう。

●日本語のツイッターの問いはなぜそのままなのか



 英語のツイッターは、「いまどうしている?」から「いま何が起きている?」に変わったと最初に書いた。英語ページは変えたのに、日本語ページはなぜそのままなのだろうか。
 日本人は「いま何が起きている?」では書きこみにくい、とツイッターの運営者たちが判断したからではないか。

 こうした「日本化」は、ツイートを「つぶやき」と訳したときから始まっている。ツイートというのは「さえずり」というような意味だから、「つぶやき」というのはちょっと違うんじゃないか、「つぶやく」という言葉は使うべきではないといった議論もあった。
 ツイッターの日本語のヘルプ・ページでも、「つぶやく」と書いていないわけではないが、「ツイート」が多い。同社のブログでも以前は「つぶやく」と書いていたが、この一年は基本的に「ツイート」を使うことにしたようだ。

「つぶやく」というのは、自分一人でつぶやくわけで、どこか自閉的な感じがする。しかし、シャイな日本人は、不特定多数の人相手に演説するように書くのは苦手で、「つぶやく」だからこそいいんだ、という意見も見かけた。ツイッターが日本でも受けたのは、訳語のせいだけではないにしても、こうした「日本化」によって日本人により受け入れやすくなったということはあるのではないか。

 日本のツイッターも「いま何が起きている?」に変わる日は来るだろうか。
 まあ日本語というのは都合よく曖昧にできている。「いまどうしている?」の主語は「あなた」で客観的なできごとを尋ねているとは言えないが、「いまどうしている?」と主語を省いてしまうと、「What’s happening?」の日本語訳ということで通せなくもない。それならあえて変える必要はないということになる。もっともツイッターの日本の運営者たちが、個人の行動よりも、もっと客観的な「できごと」を書きこんでほしいと考えたときには変えるのかもしれないが。

afterword


大震災のときにはツイッターでデマが飛び交った。次回はツイッターのデマを感知しようとしている研究を取りあげる。

関連サイト



●「スタットラー」(http://shamurai.com/bin/statler/)。それぞれの時点で頻出するキーワードを使って作成した動画目次とキーワードの登場頻度の変遷やそれぞれの場面の重要性とおしゃべり度などをグラフ化した。前々回と同じく、これも米ヤフー研究所の研究員の研究。
●「What are you doing?」から「What’s happening?」に問いを変えたことを告知する09年11月19日のツイッター社のブログ(http://blog.twitter.com/2009/11/whats-happening.html)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.685)

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