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北朝鮮による深刻な脅威を生み出した日本外交の失敗

 北朝鮮による核弾頭の爆発実験が成功したと伝えられました。日本など周辺諸国にとっては深刻な脅威の増大です。
 国連の安保理決議にも違反するこのような核実験と核兵器の開発は許されず、断固として糾弾しなければなりません。同時に、北朝鮮による深刻な脅威の増大を防ぐことができなかった日本外交の失敗についても、厳しく批判する必要があります。

 でも、こうなることは分かっていました。これまでも、抗議決議や声明、制裁の強化はほとんど効果がありませんでしたから。
 また、9月3日のブログ「北朝鮮に対するミサイル防衛(MD)は無駄だとなぜ言わないのか」で指摘したように、「そもそも北朝鮮に対するミサイル防衛(MD)は不可能であり、発射されたら『お手上げ』なのですから、そのための予算も装備も全く無駄」です。日本は北朝鮮に近すぎて、「もし北朝鮮がミサイルを発射すれば7~8分で着弾」するという最大の問題点について、今回の核実験についての論評でも誰も指摘していません。
 核ミサイルが現実の脅威となったとしても、軍事的に対抗することは不可能なのだと、なぜ言わないのでしょうか。だからこそ、対話などの外交努力が重要なのであり、このチャンネルを完全に放棄してしまった日本政府の外交的失敗こそが問題なのだと、なぜ誰も指摘しないのでしょうか。

 今回の核実験に対しても厳しい対応が行われていますが、それはほとんど「手詰まり」状態に陥っています。アメリカは韓国に対してB1戦略爆撃機の派遣や高高度迎撃ミサイル(THHAD)の配備、米韓共同演習など軍事的対応を強化しようとしていますが、それは逆効果です。
 北朝鮮が核開発やミサイル実験を繰り返しているのは、アメリカを恐れているからです。いつ攻められるのかという恐怖感に打ち勝つために核戦力を強化し、それを国民に示して金正恩党委員長の権威を強めようとしているのです。
 そのような北朝鮮に対して、さらに強い圧力をかけて「締め上げ」ようとすれば、もっと強い反発が返ってくるだけでしょう。安全を高めようとして「抑止力」を強めれば強めるほど、それへの反発も大きくなって軍拡競争が激化し、結果的に安全が損なわれてしまうという「安全保障のジレンマ」から抜け出すことこそが必要なのです。

 今日の『朝日新聞』の「オピニオン&フォーラム」欄に、国連「北朝鮮制裁委員会」の元専門家パネル委員の古川勝彦さんと東京国際大学国際戦略研究所教授の伊豆見元さんのインタビュー記事が出ていました。お2人の専門家のご意見は注目すべきものです。
 古川さんは「北朝鮮への制裁に比べ、イランの核開発疑惑に対する制裁は成功したとされています。何が違うのでしょう」と問われ、「大切なのは、制裁は外交の手段の一つに過ぎないということです。イランの核開発疑惑に対しては、制裁と同時並行で外交対話が続けられました。しかし、北朝鮮については、制裁のみで、外交はほぼ皆無でした」と答えています。
 問題は「制裁のみで、外交はほぼ皆無」だったという点にあるのです。転換しなければならないのは、この点にあるということにほかなりません。

 また、伊豆見さんも、「北朝鮮はこれまで全てをなげうって核開発をしてきたわけではなく、核開発を巡って米国との取引を考えた時期もありました。阻止できる時間はあったのです」としたうえで、以下のように指摘しています。

 「米国がオバマ政権になった09年以降、関係国は核開発をめぐって北朝鮮と取引することをほぼ放棄してきました。北朝鮮に一方的に要求をのませようとしたのです」
 「近年は北朝鮮と交渉をせず、制裁だけに頼ってきました」
 「制裁は北朝鮮経済にダメージを与え、いわば嫌がらせのようなことはできました。しかし、制裁の本来の目的は北朝鮮の核開発阻止だったはずです。その効果がないのに、制裁だけを続け、関係国は問題を先送りしてきました」
 「若い金正恩(キムジョンウン)氏や既得権益層は統治のために、正恩氏の権威を確立する必要がありました。制裁を受けて孤立が進むなか、権威確立には核開発しかないという論理です」

 こう述べたうえで、伊豆見さんは「国際社会はさらなる核開発を阻止するため、効果はなくても制裁は続け、強化すべきではあります」としつつも、「そのうえで、関係各国の首脳は再び北朝鮮との取引を検討する必要があります。大変不愉快ではありますが、北朝鮮とギブ・アンド・テイクの取引をする覚悟を決める時が来ています」と指摘しています。
 
 ようやく、外交や交渉の必要性を指摘する声が聞こえるようになってきたということでしょうか。6カ国協議の再開に向けて関係国は努力しなければなりませんが、カギを握っているのはアメリカです。
 今回の核実験に際して事前説明を受けた中国筋は、「北朝鮮当局者から(中国側に)米韓が北に対して外科手術的な方法を取ろうとしており、対抗するために核実験を行う必要があるといった話があった」と語っているそうです(『朝日新聞』9月13日付)。「外科手術的な方法」など取ろうとしていないということを、分からせなければなりません。
 また、必要なら無条件で直接対話にも応ずる姿勢を示すべきでしょう。核放棄という前提条件を付けたままでは、交渉や対話は一歩も進みません。

 北朝鮮との国交回復交渉を打ち切ってしまった日本政府の過去の対応も完全な誤りでした。拉致問題の解決を優先するということで、交渉より制裁を選択したからです。
 小泉内閣のときに交渉を進めて日朝間の国交を回復していれば、その後の拉致問題についての進展も核やミサイル開発の経過も大きく違っていたのではないでしょうか。拉致問題の解決を優先したために、かえって拉致問題の解決の手がかりを失ってしまったという痛恨の失敗を繰り返してはなりません。
 北朝鮮を話し合いの場に引き出すことでしか問題解決の道はないということは、はっきりしています。しかし、そのような道を選ぶ意思も能力も今の安倍政権にはないというところに、本当の危機が存在しているのではないでしょうか。

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