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池田信夫先生から誤解の指摘がTBで来た

前のTV:原発が事故ったからってがたがた言うなと言う人たちというエントリで以下のように書いたら、池田信夫先生からトラックバックがやってきた。→TB元エントリは私は原発推進派か

(1)「池田信夫先生は、原発の安全性を高めると火力発電に競争で負けちゃうから、そうはできないという。」
(池田先生のブログでは「経済性が大事で、火力より安く上がらなければ意味がないから、安全性を高めるのはほどほどに、つまりはリスクも飲み込んで作ってきたわけだ」と書いた部分を池田先生の発言の要約とされているが、正確には原子力推進政策の本音として書いた。でもまあ、あまり変わらないかもしれない。)

(2) 「原発に伴う将来のコストを負わせたら、経済性が悪くなって火力発電所に負けちゃうと宣う池田先生は、きっと原発事業者に負わせるべきでないというのだろう。」

このうち後者は、池田先生のご指摘の政府は東電を救済するなというエントリで、確かに次のように述べられている。
損害と補償の合計額は数兆円規模とみられているが、年間の売り上げが5兆円を超え、多くの資産をもつ東電なら、自力で賠償できる可能性もある。少なくとも原子力損害賠償法による政府の援助は最小限にすべきだ。もちろん通常の資産処分だけではなく、社員の解雇を含む業務の合理化が必要だろう。しかし私がかつて東電の平岩元社長にインタビューしたときは、広報と秘書が7人も出てきた。かなり大量の余剰人員が残っているので、政府の援助を受けるのは彼らを解雇してからだ。

東電が自力で全額払えるかどうかについて、私は疑問だと思うが、それを別にすれば前エントリに貼りつけたYouTube動画の発言だけから上記の(2)のように書いたのは誤解だった。この点は池田先生に謝っておく。

しかし、上記(1)の部分は、池田先生の指摘する反論を読んでも、なんだ誤解ではないじゃないかと思うほかはない。
まず、池田先生は「原発のリスクはゼロではない」という。そりゃ当たり前で、どんなに安全設計を尽くしたとしてもヒューマンエラーもあるし予見不可能な事故原因もある。これに対して絶対安全と言ってきたのは電力会社や原発推進論者であり、それに騙されたふりをしてきた連中だ。

で、リスクがあるので、それをゼロに近づけるための安全策をどれほど取るかは、コストとのトレードオフとなるという。それもその通りだ。異論はない。
意見がわかれるのは、おそらく次の点だ。池田先生は朝生で次のように述べている。

「リスクはゼロかって言われれば、ゼロじゃないですね。じゃゼロに近づけるためにはいかなるコストをかけてもいいかって言えば・・・で堤防をね、2000年に一辺のために20メートルくらいの高さの堤防を作れば、作ってもいいけど、そうやってると、原子力発電というのは火力発電と競争できなくなっちゃうんですよ。・・理屈としては分かるんだけど、それは経済性とのトレードオフとなっちゃうんです。」

また、別のエントリで池田先生は次のように書いている。
結果論だが、今回の事故の最大の原因は耐震設計よりも津波の想定である。福島第一の周囲には高さ7mの防波堤が建設されているが、今回の津波は14mだった。これは1000年に1度ぐらいの「ブラック・スワン」で、想定しろというのが酷だろう。

 マスコミが今回の地震を1000年に一度とか、観測史上初とかセンセーショナルに扱っていて、これにずいぶんと影響されているかもしれない。たしかに日本ではM9というのは初めてだ。
 
 しかし、マグニチュードという点でいうと世界ではM9が異例というわけではない。そして直近のM9クラスの地震は、タイ・プーケット島を大津波が襲ったインド洋大地震だった。陸地の奥深くまで達するような大津波は決して予見不可能な事故というわけではない。
 そして東北地方で大津波被害が起こったのは、明治三陸沖地震(1896)、昭和三陸沖地震(1933)に続いて明治維新以後の近代に限っても3回目なのだ。120年に3度目では、1000年に一度どころか、40年に一度位の頻度だ。なんだ、60年に一度という関東大震災よりも頻繁に起こっているんじゃないか。

 これではとても、予見不可能なブラックスワンとか、隕石に当たるのと同じくらいの確率とかということはできない。
 池田先生は「今回のような巨大地震が原発から至近距離で起こったのは隕石ぐらいの確率だろう。いいかえれば原発事故は計算可能なリスクではなく、ナイトの意味での不確実性であり、それを織り込んだ設計はできないということだ。」と書かれているが、新潟にせよ東北地方にせよ、地震と津波の被害は当然予見されるべきリスクであり、計算可能であり、それを織り込んだ設計はしてもらわないと困る。
 
 少なくとも今までは、電力会社や原子力推進官庁は、どんな巨大地震にも耐えられる設計ですと胸をはっていたのであるから、今更「地震は想定外」とか言うことは出来ない。
 安全とコストとのトレードオフはその通りだが、予見できるリスクにカネがかかるからと言って目を瞑ることは、原発の場合は許されないのである。

 そういうわけで、リスクは限り無くゼロに近づけて欲しいし、ゼロになり得ない以上は万一の事故に備えた費用を引き当てておくべきだし、それは原発エネルギーを利用する者すべてが負担しておくべきだ。ついでに廃炉費用や使用済み核燃料の処理費用も可能なかぎり見積もって引き当てておくべきだ。
 
 その結果、原発は火力発電と比べものにならないくらい高コストなものとなるかもしれないが、それはもともとそういうものなのだから仕方がない。高いコストを払ってでも原発を使うかどうか、後は国民的選択の問題だ。
 そのような不確実なコストは算入しないで「安い」エネルギーだと言い張っても、いずれは現実化してしまうのが事故コストであり、廃炉や核燃料の処理コストだ。原発エネルギーを享受する世代の者が引き当てておかなければ、それは将来世代の負担となる。

 子どもや孫たちに迷惑を掛けたくなければ、せめて金銭的な引き当てだけは十二分にしておくべきであろう。

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