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【読書感想】アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国

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リンク先を見る アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国 (PHP新書)

Kindle版もあります。

リンク先を見るアメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国 PHP新書
内容(「BOOK」データベースより)
アメリカはいま、百年に一度の転換期に立ち、三つの大問題に直面している。第一は格差と移民の問題。EUは100万人の難民で大騒ぎになったが、アメリカは過去25年に亘り年平均100万人の移民を受け入れており、16年大統領選挙の争点となった。第二は力の行使の問題。全家庭の43%が銃をもつ米国は力の行使を是とし、長年「世界の警察官」を自任してきたが、一転して孤立主義に立つ可能性が生じている。第三はエネルギーの問題。シェール革命後どのようなエネルギー・モデルを構築するかによって、この超大国の命運は決まる。歴史的転換の本質を外交官の目で読み解く。

 著者は、2013年の秋から2年間、ヒューストン総領事としてアメリカに赴任されていた方です。

 外交の最前線に立ち、アメリカの担当者と丁々発止のやりとりをし、現地で生活しながら感じた「現在のアメリカが直面していてる3つの大問題」について、この新書で分析しておられるのです。

 その3つの大問題とは「格差と移民」「力の行使(軍事力の行使や銃の規制について)」「エネルギー」。

 これら3つのテーマに沿って、この新書は書かれているのですが、「日本からみたアメリカ」と「アメリカからみたアメリカ」の違い、みたいなものがうまく掬いとられていて、感心しながら読みました。

 日本人である僕の感覚からすれば、「なんでアメリカ人はあんなことをするんだろう、ちょっとおかしいんじゃないか?」と思うようなことでも、彼らの立場からみたら、それなりの合理性があるんですよね。

 「そういう視点」を無視して、日本人の、太平洋を挟んだ外側からの感覚だけで考えても、ギャップはなかなか埋まりません。

 アメリカの「格差」は、あまりにも大きいように僕には感じられます。
 すでに述べたように、行き倒れが病院のERに担ぎ込まれたら、一文無しでも治療が受けられる。そこまで極端なケースでなくとも、例えば、働くことのできない障害者や親のいない子供といった社会的弱者を支援する施策に反対する人はいないだろう。

 しかし、貧困層に対する食費補助になると、いろいろな意見が出てきる。1964年に民主党のジョンソン大統領によって始められた、アメリカの代表的貧困対策、通称フードスタンプに関しては、民主党と共和党が対立している。

 この、正式名「補助的栄養支援プログラム(SNAP)」では、貧困層に一人当たり平均130ドル弱のクーポン券(最近はカード)が配布され、受給者はそれで食料品を買うことができる。受給者は年を追うごとに増え、現在では4500万人と国民の7人に1人の多数に上る。総支給額は690億ドルと、日本円にして8兆円近い。

 日本の生活保護費受給者が217万人と国民の2%にも満たないのと比べると、アメリカのフードスタンプ受給者がいかに多いかがわかる。この人たちは、全て給付を受けるべきなのか。共和党は、フードスタンプの受給者を減らしていくべきだと主張している。

 さらに、この最低限の生活の保障を、アメリカ国民以外にどこまで広げるかというのも悩ましい問題である。すでに1100万人に膨れ上がった不法移民の中でも、子供がアメリカ国内で生まれれば、不法滞在者といえどもアメリカ人の親である。

 「自己責任」というイメージが強いアメリカなのですが、7人に1人が、フードスタンプの受給者なのです。

 日本の生活保護に比べると、一人あたりの受給額は低そうなのですが、どうしようもなくなってしまっている人に生活できるだけのお金を出すのか、生活が苦しい人たちに食費だけでも少額ずつサポートするほうが良いのか、というのは、なかなか難しい問題です。

 いわゆる「不法移民」も含めて、アメリカは多数の移民を受け入れている国で、移民に対して、どこまで援助していくのか、というのも悩ましい。

 お金が無尽蔵にあるのならば、彼らに十分な援助をしても、文句は出ないでしょう。

 しかしながら、元からアメリカに住んでいて、ギリギリの生活をしている人たちは、不法移民の存在が、自分たちへにまわってくるはずの社会保障費を減らしているのではないか、とか、そもそも、なんで他所から来た連中が「われわれの税金」で助けられるのか?と考えてしまうのです。

 彼らは、アメリカのために何かしてきたわけではないだろう、と。

 トランプ氏は、アメリカ国民が何を望んでいるかを知っている。大量の不法移民の流入とイスラム過激主義によるテロリズムは、アメリカ国民に経済的、そして治安上の、ぬぐい去ることのできない根本的な不安をもたらすものであり、単なる一過性の問題ではない。そして本章で筆者が述べたとおり、移民の問題は格差の問題と密接に絡んでいる、今世紀のアメリカ内政上の最大の問題である。
 この大問題に対する処方箋を何ら示すことなく、冷静になって慎重に判断すべきだと「政治的に正しい(politically correct)」正論を吐くだけの既存の政治家に安心できず、怒りさえ覚える国民がいる。 


 トランプ氏は、このような国民の真っ当な不安感、焦燥感そして怒りに率直に向き合っている。これまでワシントンの経験の長い政治家の「政治的正しさ」にがんじがらめにされた物言いに辟易して政治から離れていた人々が、トランプ氏に帰ってきているのである。それが彼の人気の原動力になっており、この点がトランプ現象の一つの本質である。

 日本でも「生活保護バッシング」をやっている人がいることを考えると、トランプ支持者は「政治的に正しくはない」のかもしれないけれど、自分の気持ちには正直だと言えるのかもしれません。

 そもそも、「政治的な正しさ」というのは、恵まれた人々に押しつけられたものではないのか?

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