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支離滅裂なFRBとバーナンキ議長

 FRBが新たな政策を発表しました。バーナンキ議長の帽子からは、次から次に新しい政策が跳び出してくるのです。まるでマジシャンみたい!

 しかし、政策は尽きることがないのですが、その効能はとなれば‥

 そももそのはず。もし、有効な手段があれば、当の昔に使っていたからです。

 ところで、今回の新しい政策は、なんと呼ばれるかご存知でしょうか? 答えは、オペレーションツイスト。実は、このテーマを取り上げるのは、私、余り気乗りがしないのです。何故かと言えば、オペレーションツイストなんていっても、一般の人々は関心を示さないからです。

 オペレーションツイストは‥ひょっとしたら、中高年の方々のなかには、「聞いたことはあるけど‥」なんて言う人もいるかもしれませんが、多くの人にとっては、まったくチンプンカンプン。

 でも、内容自体は、それほど難しいことではないのです。

 
 つまり、オペレーションの中身をツイストさせる‥市場にマネーを放出するために購入する国債を、償還期間の短いものから、より長期なものに変更するということなのです。

 何故、そんなことをするかといえば、購入の対象が償還期間の長い国債になれば、長期金利をさらに引き下げることができ、そうなれば、より一層設備投資や住宅投資を刺激できるからだというのです。

 どう思います、そう、そこの貴方!?

 「長期金利の低下をもたらす訳だ!」

 まあ、そういう風に主張する人々がいるということです。

 「他に手段がないのであれば‥何もやらないよりましじゃないの?」

 そんな風に考える人が多いのです。 ダメで元々! だったら、考えられることは何でもやるべし! これで、アメリカも10年前の日本と同じになったと言えるでしょう。日米友達作戦の完了! でめたし、でめたし!

 「しかし、そんなにいい手段があったのなら、何故もっと早くからやらなかったの?」

 そう、いいことを仰いました! 本当に有効な手段であれば、そして、それが正当な手段であれば、とっくにやっていたはずです。

 つまり、これまでやらなかったということは、それなりの理由があるのです。皆さんは、中央銀行が国債を引き受けることが禁じ手だということをご存知でしょう。財政法では、日本銀行が直接国債を引き受けることを禁止している、と。そして、世界中の中央銀行が同じ考えでいるのです。

 では、何故、中央銀行は国債の引き受けを禁じられているのか? それは、安易にそんなことをすれば、インフレを招いてしまうことを過去の経験から学び取っているからです。

 では、中央銀行は、国債を保有することは絶対にないのか? 絶対にないどころか、中央銀行が国債を市場で購入するのは日常茶飯事です。つまり、金融政策には、国債の売買が欠かせない手段であるのです。国債を購入することによって、市場にマネーを放出し、その反対に国債を売却することによって、市場からマネーを吸収する、と。

 しかし、そうした国債は、長期間保有することを前提にしてはいないのです。一方、今話題になっているオペレーションツイストというのは、例えば、10年物とか、或いは30年物の国債を購入すると言っているのです。つまり、幾ら、そうした長期の国債を市場で買い入れるとしても、そうした行為は、中央銀行による国債の直接引き受けと類似の行為になるので、中央銀行関係者としては、そのような行為に手を出すことに躊躇してしまうのです。

 それだけではありません。そもそも理屈としておかしいという学者も多いのです。

 「どういうこと?」

 つまり、幾ら中央銀行が、長期国債を中央銀行が買い入れたからといって、長期金利を引き下げる効果はないのだ、と。それに、仮に長期金利を引き下げようと思うのであれば、それは金融政策の範疇ではなく、政府の国債管理政策の範疇になり、長期金利を引き下げる仕事は、政府がやるべき仕事だというのです。

 で、ついでながら、では、どうしたら長期金利を引き下げることができるかといえば、それは財政赤字を減らすこと、つまり、国債の発行額を減らすことによってであって、決して中央銀行が購入する国債の額を増大することによって実現できるわけではないというのです。

 皆様には、この理屈がお分かりでしょうか?

 私、想像がつくのですが、この話を理解するのはそう簡単ではないのです。だから、政治家のなかでも、この話を理解できるのは一部にしか過ぎない、と。多くの政治家は、「日銀は何をやっていいるのだ!やれることがあれば何でもやれ! 長期国債を買い入れて、長期金利を引き下げろ!」などと言うのです。

 もし、貴方が支持する政党が、そんな風なことを言うのであれば、一度よく考え直した方がいいでしょう。

 いずれにしても、あの聡明なバーナンキ議長が、こんな理屈を理解できないはずがないのです。しかし、何もしない訳にはいかない。何もしなければ政治的にも持たないと判断して、今回オペレーションツイストに踏み切っただけと思うのです。

 でも、正確に言えば、オペレーションツイストは、既に実行済みであるのです。というのもQE2というのは、長期国債を対象としたものであったからです。つまり、今回は、長期国債の長期の意味が、さらに長くなるだけなのです。


 では、今回、オペレーションツイストを採用することによって、どのような効果が期待できるのか? 長期金利は低下しそうなのか?

 実は、アメリカはQE2の実験をしたばかりです。6月まで長期国債の買い入れをやっていたではありませんか? 

 で、その結果どうなったかといえば、長期国債の買い入れという行為が、予想インフレ率を高めることによって、却って長期国債の利回りは上がり、さらにガソリン価格の上昇を含め、マイルドなインフレまで起こしてしまったのです。

 で、FRBは言ったのです。インフレになって、消費者の購買力が損なわれた結果、消費が落ち込んだ、と。

 それから、まだ80日程度しか経っていないのです。アメリカはまた、同じことを繰り返すつもりなのでしょうか? あるいは、今度はインフレになっても、オペレーションツイストを継続させ、バブルを起こしても仕方ないと思っているということなのでしょうか?

 いずれにしても、私、nprを聴いていて、驚きました。次のように言っているのです。
 And yesterday, four top Republican leaders in the House and Senate released a very unusual letter to Mr. Bernanke, asking him not to do anything more to help the economy for fear that whatever he does could hurt it.
「昨日、共和党の上院と下院の4人のリーダーが、バーナンキ議長に異例の手紙を手渡した。中身は、景気を良くしようとしてこれ以上何もするな、と彼に頼むものであって、バーナンキ議長がやることは経済にとってよくないことばかりだというのです」
It's unusual because politicians almost always want the Central Bank to do more - lower interest rates, put more credit in.
「それは大変に異例なことです。何故ならば、政治家は、常に中央銀行に対し、もっとやってくれと頼むものであるからです。もっと金利を下げろ、もっと資金を供給せよ、と」
 But the Republicans are saying no, don't do that.
「しかし、共和党員は、ノーと言っているのです。そんなことはするな、と」

 中央銀行の尻を叩くことばかりが仕事ではない、と知っているだけアメリカの政治家の方がマシということなのでしょうか。

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