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反原発に転じた小泉元首相がイラク戦争の過ちだけは認められない理由

 原発の過ちは認められるのに、アメリカの過ちだけはどうしても認められないのだろうか。

 小泉純一郎元首相が9月7日、外国特派員協会で講演し、東日本大震災で救援に関わり、その後、健康に異常を来したとされる米兵を支援するため「トモダチ基金」を設立した経緯や、小泉政権時の原発政策やアメリカによるイラク戦争を支持した理由などについて語った。

 「原発は安全で安く、クリーンなエネルギーだという専門家の話を信じていた。」

 小泉氏はこう語り、首相当時は原発の必要性を信じてこれを推進したが、福島第一原発事故でそれがすべて嘘であることがわかり、反原発に転じたと語った。

 専門家に騙されていたためとはいえ、自らの政策の過ちを歯切れよく明確に認め、「原発を推進したことを恥じている」とまで言い切るその姿勢には、歯に衣着せぬ言動で人気を博した元首相の現役時代を彷彿とさせた。

 ところが、その小泉氏でも、こと対米外交については、全く話が別のようだ。

 政権時、米国によるイラク戦争を支持したことの是非について記者から質問を受けた小泉氏は、日本が反対してもアメリカが戦争を始めることが分かったので、「同盟国としての重要性を重視した」と語り、その後、大量破壊兵器の存在が否定されるなどその正当性が揺らいでいるイラク戦争を支持したことへの自省の念は一切、聞かれなかった。

 イラク戦争については、日本と同様にイラク戦争を支持したイギリスで、その後、独立調査委員会(チルコット委員会)が設立され、ブレア首相自身が議会に召喚されて厳しい追及を受けるなど、正当性の無い戦争を支持したことへの厳しい責任追及が行われた。

 小泉氏はイギリスでそのような追求があったことは知っていると語りながら、「日本は同盟国としてできることをやったまで」と語るなど、イラク戦争支持については肯定の姿勢を全く崩そうとはしなかった。
 
 原発については、自らの判断が誤っていたことを全面的に認めながら、その後、全ての根拠が否定されたイラク戦争を支持したことの過ちだけは認められないのはなぜか。イラク戦争支持の過ちを認めれば、アメリカが間違っていたことを認めることになるからなのか。

 日本の政治風土における原発政策と対米政策の次元の違いを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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