- 2016年09月10日 15:17
今の介護業界にはプロのマーケティング視点が足りないと、両親の老人ホームを探したときに感じました―「賢人論。」第16回成毛眞氏(後編)

稀代のビジネスパーソン、成毛眞さんへのインタビュー企画も今回が最終回。前編、中編と続けては、社会保障や介護業界が抱える問題点を解決するための策について語ってもらったが、今回のテーマは成毛さんの両親の老人ホーム選びに始まって、自身の老後観について。「介護業界には、マーケティングの視点が足りないところが多い」と、手厳しい指摘もいただいた。
取材・文/篠塚祭典(編集部) 撮影/公家勇人
一方的な説明ばかりするのは素人。相手をちゃんと見て、必要性を見出すのがプロのマーケティング
成毛 実はちょうど1ヶ月前くらいに、両親が「今のマンションだとガスコンロの消し忘れが怖い」と言うので、「自立型の老人ホームを探そうか」という話になりました。当初は抵抗があったみたいですが、iPadで見せたら「行きたいかも」なんて言い出して。中編で話した補聴器もですけど、よく知らないから余計にイメージで嫌がるんですよね。
みんなの介護 先入観で苦手意識をもってしまうことは、往々にしてありますね。では、ご両親の先入観を取り払うためにも、何か工夫をされたんですか?
成毛 iPadを使ったんですよ。自分で触ってもらったんですけど。「便利だねー、これいいね」なんて言いながら、人生初ピンチ、初フリックですよ。自分で操作したから、参加意識がうまれたんだと思います。私はとある銀行の役員もしているのですが、ローンを組もうかどうか迷っている高齢のお客さんがいたら、iPadを使ってもらおうと思ったくらいです(笑)。
聞いた話ですが、車を買おうか検討しているお客さんが色を選びだしたら、大体は買うらしいんですよ。「どの色がいいですか?」って聞いて、「わからない」って言っているうちは、買わない。「白より黒のほうがいいね」なんて言い出したら、半分くらいは買う気になっているサインだって言うんです。
高齢者に何か提案するときには、そういうテクニカルな部分も大きいと思いますよ。音量とか明るさとか。一生懸命説得しようという熱意は伝わりますが、一方的に説き伏せようとするのは素人です。相手の反応をちゃんと見ないと。
みんなの介護 余計な先入観を持っていると、見えないかもしれません。それこそ、マーケティングの視点がいかに大事か、ということですね。
成毛 その通り。相手をちゃんと見て、必要性を見出すのがプロのマーケティングです。私が役員をしている銀行では、高齢者がきたら、テーブル上に手元ライトを置くようにしています。暗いと見えにくいというだけの理由なんですが、たったそれだけのことで契約率も違ってきたりするんですよ。両親の老人ホームを探したときに、介護業界には、まだそういう部分が足りないと感じました。

私に介護が必要になったら、とにかく気の合う人にお願いしたいなぁ
みんなの介護 その後、ご両親の施設選びはどうされたんですか?
成毛 最終決定は、本人たちに任せています。私が確認したのは、経営母体についてだけですね。黒字の期間が長いということと、資産が大きいこと、つまりPBRが高いこと(※PBR:株価純資産倍率のこと。高いほど倒産のリスクが低いと言われている)。運営主体が15年は潰れないかということを、財務諸表を見て確認しました。
みんなの介護 長年、ビジネスの世界で活躍されている成毛さんらしい判断基準ですね。
成毛 みんながそうだとは思いませんが、私がサービスについて考えるのはその後です。最近、家を買ったんですが、その時も、家を作った会社が潰れないかを一番に考えましたね。
みんなの介護 私たち『みんなの介護』も、老人ホームを選ぶ基準として、そこも大切なポイントだと考えています。成毛さんご自身の老後は、どのようにイメージしていらっしゃいますか?
成毛 うーん、まだ想像もしていないですね。本当にヨボヨボになって、病気がちになって…、介護や看護が必要になったら、個人で面倒をみてくれる人を雇うかなぁ。在宅でも施設でも、どちらでも良いんだけど、とにかく気の合う人にお願いしたいとは思っています。
聖路加病院の日野原先生は100歳を超えてるでしょ?退任されたけど、元セブン-イレブンの鈴木敏文さんは83歳、スズキつながり…でスズキ自動車の鈴木会長も86歳でしょ。
歌舞伎役者なんか、けっこうな高齢でも、20kgくらいある女形の格好をして1時間くらい踊るんですからね。バケモノですよ(笑)。国会にもとんでもない人がたくさんいますからね。そうかと思えば、若くてもなんでこんなにくたびれちゃっているの?というような人もいる。人って本当に千差万別ですよ。私も、いつまでも若く元気でいられるのか、自分自身でも楽しみにしているところです(笑)。



