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日銀の総括的な検証の目的は、市場との対話の回復か(期待を込めて)

 9月5日の黒田日銀総裁の共同通信主催のきさらぎ会の講演は、時期的にそろそろ総括的な検証の大筋がまとまっているタイミングとみられることで、多少なりそれについても触れてくるかなと思われたが、タイトルそのものが「金融緩和政策の「総括的な検証」 ─ 考え方とアプローチ ─」となっていた。

 9月2日の櫻井真審議委員のロイターとの単独インタビューは、総括的な検証を取りまとめている執行部の意見が色濃く反映されていると思われたので、それと今回の黒田総裁の講演内容を照らし合わせると、ある程度の総括的な検証の概要が垣間見ることができそうである。

 現行のマネタリーベース目標を含めた量・質・金利の3つの次元による金融緩和政策に限界はないというのがそもそもの前提にあり、ここは曲げることはしないようである。

 物価目標が達成できなかったことに対して黒田総裁は、原油価格の下落、消費税率の引き上げ後の個人消費を中心とする需要の弱さ、新興国経済の減速やそのもとでの国際金融市場の不安定な動きなど外部要因を指摘した。これについてはいろいろと指摘したいことはある。それはさておいて、物価目標の未達成について緩和の努力が足りなかったとの結論とはなってはいないようである。

 今回の検証のポイントとなりそうなのが、黒田総裁の講演のなかでは「マイナス金利の効果と影響」という部分となろうか。櫻井委員はインタビューでこんな発言をしていた。

 「イールドカーブの形状をどう変えていくかも、可能性としては政策の選択肢に入る。検証作業の中でいろいろな議論が出てくるだろう。イールドカーブが予想を超えて下がったのは事実である。それによって効果はあったが、いろいろなコストも出てきた。それも踏まえて今後の政策の組み合わせを考えていきたい」(ロイター)

 日銀の金融政策では本来、長期金利は動かせないというのが日銀の解釈であったはずだが、いつの間にかコントロール可能なような発言であった。黒田総裁からも同様の発言があった。

 「日本銀行がイールドカーブ全体に影響を与えることができることを示唆しています。」

 もし日銀がイールドカーブのスティープ化を今回の検証のハイライトとしているのであれば、確かに功を奏している格好となっている。しかし、債券市場がいつまでも素直に日銀の政策に従うと認識しているとすればそれは大いなる勘違いに繋がる懸念も存在する。

 とはいえ今のところ日銀の思惑と債券市場参加者の思惑の方向性は一致している。日銀とすれば評判の悪かったマイナス金利政策のコストを解消させる手っ取り早い政策がイールドカーブのスティープ化であり、市場参加者も10年債あたりまでの利回りのプラス回復はその運用から考えても望ましいものとなる。

 今回の検証の胆はこの国債のイールドカーブのスティープニングにあるとみている。黒田総裁は講演の最後のまとめで次のような発言をしている。

 「金融政策で意識すべきは「限界」ではなく、どのような公共政策においても考慮すべき「ベネフィット」と「コスト」の比較です。」

 櫻井委員もやはりコストという表現を使っている。つまりこれまでは異次元緩和の効果ばかり強調し、その弊害や副作用については見て見ぬふりをしていたが、今回の検証ではこのコストにも焦点を当てている。これにより乖離していた市場参加者との距離を狭め、より現実的な政策に方向転換しようとの意図も伺える。

 市場は総括的な検証を受けての追加緩和手段や追加緩和時期に注目しているが、今回の総括の目的は追加緩和手段を増やしたり、無理矢理でも三次元の追加緩和の実施を可能にさせることよりも、市場と向き合う姿勢を示すことにあるのではなかろうか。日銀もここにきて市場との対話の欠如がコストとして認識してきたのではないかと思われる。やや期待を込めて、今回の日銀の総括的な検証の目的は市場との対話の回復ではないかと予想したい。

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