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地銀はなぜ、ヤンキーに積極的にお金を貸すのか?

藤野英人(レオス・キャピタルワークス社長)=談
高橋晴美=聞き手、構成

全国各地を行脚するレオス・キャピタルワークス社長の藤野英人氏は、高い運用実績を持つファンドの投資責任者も兼務している。カリスマ長期運用者の視線で地方経済を眺めてみると、そのさまざまな構造的問題点が浮かび上がってくるのだ。

マイナス金利は地元ベンチャーに追い風

地方を本拠地に、ミニコングロマリット(さまざまな業種に参入している企業)を形成して成長してきている「ヤンキーの虎」たち。彼らが事業を拡大し、雇用を創出していくには資金が必要だが、ヤンキーの虎が行うのはキャッシュが回りやすいビジネスであるため、地銀は現在、積極的にヤンキーの虎にお金を出しているようだ。彼らが急速に成長しているのは、実は地銀からの貸し出しが増えていることにも起因する。

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レオス・キャピタルワークス藤野英人社長

それにはマイナス金利も影響している。都会ではマイナス金利にしても設備投資が増えていないが、地方において、事業力のある人たちにはきちんと効いているのである。

とはいえ、その数はまだまだ足りない。もっとヤンキーの虎的な人でも構わない。少しでも増えたほうがいい。

例えば地銀は、儲かっている従来の会社に対して融資をすることが中心で、ビジネスをクリエイトするという面での金融の担い手の役割を、20年もの間あまり果たしてきていない。目利き能力がある人が各県の銀行に100名単位でいなければ道府県の経済は立ち行かないと思うが、現状でいうとほとんどおらず、起業家を発掘できていない。

ちなみにヤンキーの虎たちの多くは上場を視野に入れていないが、いずれ上場は増えるとみている。国はハコモノをつくる方向に目が向きがちだが、公開上場を前提としていない、またそこに至る前の地方の企業家に、融資以外の増資の手段を与えられるかが、考えどころだろう。

学校をつくる、職場をつくる。

地方が緩やかな衰退を続けている一番のポイントは、人口の減少であることは言うまでもない。

地方創生の中で最も重要なことは若者を県外に出さないということであり、それには高等教育が重要なポイントになってくる。今の若い人たちは地元志向が強く、本当は地方に残りたい。しかし学ぶ場所、働く場所がないから外に出て行かざるを得ない。若者を引き留めておく場所としての学校も必要である。

大学への進学率は約50%で、その50%を受け入れるだけのパイが地方にはない。そこで都市部に進学し、仕事がないから戻らない。こういった人口流出を抑えるには、大学など、学ぶ場所をつくることが急務だ。

都市部の学校に卒業した若者が地方に戻ってくるには、魅力のある職場も必要である。学校があり、仕事があれば、そこには病院やエンタテインメントなどの生活インフラも集積される。

絶対数が少ないという事実があったとしても、ヤンキーの虎たちの事業を含め、地域に魅力的な働き場所があることを伝えきれていないというケースもある。

活躍してほしい世代は都会に出ていき、働き先がないので戻って来られない。リスクを取れる優秀な人たちが足りず、ビジネスが育たないから、やはり若者が戻れない。

地方の有力企業から東京の優秀な人を採りたいというニーズがあり、大手の就職支援会社が本格的なリクルーティングを検討する動きも出ている。私が運用する「ひふみ投信」「ひふみプラス」という日本株投信では、有名な大企業より、上場はしているものの有名とはいえない中小企業への投資がリターンの源泉になっている。そのような会社は東京以外の都市や地方に多い。

ヤンキーの虎も成長の過程でだんだん近代的なマネジメント能力が必要になるし、それを担える人材を送り込むことによって、競争は拡大され、成長が促進される。ある意味では、国がやるより民間の力のほうが早いだろう。

都会の成功者が地方行政を担うのも一法

ポケモンGOでも地方行政の対応が真っ二つに分かれた。締め出すところがある一方で、チャンスと捉えて、「レアなポケモンが出るから旅行してください」と働きかけるところもあった。地方行政に首長の意識差が色濃く出るようになり、各地を訪れると、今後、地方格差が大きくなることを強く感じる。

つまり地方間競争は既に始まっており、それにすら気付いていないところと、地方間競争を意識して着々と手を打っている自治体では、10年後、大きな差が出るだろう。これまでは都市か地方かという議論をしてきたけれども、同じ都市、同じ地方の中にも温度差があり、地方創生への取り組みや社会の変化をとらえて少しでも良くなる、もしくは下げ止めていくところと、下げを加速するところに分かれるのは明らかだ。

どんな首長を選ぶかも重要だが、このところの地方選をみるにつけ、魅力ある人が出馬すれば意外と勝てるということが明らかになっており、地域の方々の危機意識も感じられる。東京に暮らす人でも、我こそはと思う人は、地方での出馬を考えてみてもいいかもしれない。地方で事業を起こすという道もあるけれども、行政側に立って活躍するのも、地方創生へのチャレンジである。

東京でベンチャーを興し、キャッシュインした人たちが、地方に戻り、首長として活躍する、というパターンは増えてくるのではないと期待している。千葉市長の熊谷さんもビジネスサイドから出てきた方である。

そういう道があること、そこで自身の能力を発揮させるという発想をするためにも、まずはヤンキーの虎や、地方行政で活躍する人の存在を知らせる、ということも必要だろう。

大企業側も、地方移転でチャンスが!?

小松製作所のように、大企業が地方に本社機能を移転するというのも効果的で、税制優遇をする価値がある。

起業家や経営者にアプローチして東京と実家以外に第三のふるさとをつくってもらう、力のある人に思い入れのある地域の面倒を見てもらう、というのもいいのではないか。

上から政策をはめ込むより、ボトムアップで仕事をつくっていく、増やしていく、広げていける人に乗るなり、共に考えるなり、参画を募ることが、地方創生の基本である。

各地域に優れた企業が山のようにあることを若者にアピールし、ビジネスの種を蒔けば芽が育つ地域があることを認識してもらい、帰ってきてもらう。若者のロールモデルになる、宝物のような企業や経営者がいることを、地方の行政は正しく認識し、その宝物をうまく使うべきである。

藤野英人(ふじの・ひでと)
レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者。1966年、富山県生まれ。90年早稲田大学法学部を卒業後、野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。96年ジャーディン・フレミング投信・投資顧問(JPモルガン・アセット・マネジメント)に転ずる。一貫して中小型株・成長株の運用に携わり抜群の運用成績を挙げたため、カリスマファンドマネージャーとして名を馳せる。2003年レオス・キャピタルワークスを創業、主力商品の「ひふみ投信」は4年連続でR&Iファンド大賞に入選している。著書に『投資家が「お金」より大切にしていること』『投資バカの思考法』『ヤンキーの虎』など多数。 レオス・キャピタルワークス>> http://www.rheos.jp/

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