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マイナス金利の自己正当化本能

今年1月、日銀が(銀行の日銀当座預金に対して)マイナス金利を導入したことに対する批判が根強い。これに対して日銀は、9月20、21日、これまでの金融政策に対する総括的な検証を行うという。その前にここで検証してみたい。

黒田総裁が誕生したのは2013年、それ以降、日銀は長期、超長期の国債を積極的に買い、毎年80兆円のペースで市場に資金を供給している。この政策の中には、株式や不動産の間接的な買い入れも含まれている。

この政策に効果があったのかどうか。黒田総裁の誕生当事、円ドルレートにはサプライズをもたらした。株価も上がった。しかし、これらの効果は剥げ落ちている。

2013年当事を振り返ると、貿易収支の赤字から円安の方向に市場の力が働いていたのを、日銀の政策が後押ししたと考えたい。この円安と、アメリカ経済の回復効果から、日本経済も上向き、企業業績に光明が指した。このため、株価も上がったのである。タイミングが良かった以上の何かあったのか。それ以上のものは少なかったに違いない。そうでなければ、現時点のように、ここまで当時の効果が剥げ落ちはしないだろう。

肝心の物価(消費者物価)に関しては、目標の年率2%上昇に届きそうにない。背景として、賃金が増えず、消費が盛り上がらないことが大きく影響している。

賃金に関して、安倍ちゃんはあの手この手で企業に介入するとともに、一億人総労働力化計画をぶち打ち上げた。後者に関して、老人世代はもちろん、知り合いの女性にも評判が悪い。「ロボットじゃないわよ」「産めや増やせや働けやかいな」「退職後を楽しみに働いてきたのやし、もう働くのは嫌や」「政治家の誰かのように趣味と高給で働いているわけやないし」ということだ。

企業もまた、これ以上の賃金を支払う余力に乏しい。実際、大企業が支払っている賃金総額は増えていない。社会保険料の負担増を考えると、実質的には減っているだろう。「あまり役に立たなかった」(僕を含め)団塊の世代前後が退職した影響もあるだろう。しかし、賃金総額が増えないことには、消費が盛り上がらないのも事実である。

今年のマイナス金利政策は新たなサプライズを狙ったものだったのだろう。しかし、効果は空振りに近い。むしろ、銀行の収益力に低下をもたらしている。このため、銀行は収益力を回復させるため、貸出金利を上げる、貸出ではなく社債の発行に企業を誘導する、手数料を上げるなど、やはりあの手この手の対抗策を打ち出そうとしている。マイナス金利政策はかえって逆効果だったかもしれない。

なお、社債で安く資金を調達できることはマイナス金利政策の「効果」と思えるだろうが、その社債を買うのは主に年金などの機関投資家である。この結果、年金制度の不安定さが増す。個人が社債を買う場合もあるだろうが、その時には、長い社債を発行した企業が20年も30年も先、生き延びているかどうか、疑いの眼で見なければならない。これらをまとめれば、企業への効果はともかく、個人に大きな影響が及ぼうとしている。

そもそもマイナス金利とは何なのか。ゼロ金利でも効果がないからマイナスにした。もちろん、経済学的に、ゼロとマイナスには大きなギャップがある。「脅威の」「理論的に想定しなかった」政策である。

しかし経済的にはどうなのか。資金がジャブシャブと、洪水のように溢れているのに、それを誰も使おうとしないから、金利がゼロなのである。

そこに、もうちょっと踏み込んで金利をマイナスにするのは、ゼロ金利での量的緩和が効果のなかった政策だから、もう一押しと言うべきなのか。自身の効果を客観的に評価せず、「まだ足りないのか」というので、もう一歩進めたのか。いずれにせよ、「これまでの金融政策に効果がないのは、政策の質的量的不備というよりも、それを正当に評価し、行動しない民間の不備」「だから、資金を使わせない銀行にマイナス金利の罰則」と言わんばかりである。日銀として、自己正当化のためのマイナス金利なのだろう。そう思えてしまう。

いずれにしても、効かないものは効かないと思えて仕方ないのだが。

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