日本の本部機能は、正社員減の”lean(痩せた)組織”になっている
厚労省が29日発表した2010年の「就業形態実態調査(約1万事業所、従業員約3万人)」には驚いた、民間企業で働く派遣やパートといった「非正社員」の割合は1987の年調査以来最高の38.7%(3年前調査比+0.9%)という。つまり、非正社員が会社全体組織の4割に達しようとしている。これに、アウトソーシングが加わり、本部機能は、lean(痩せた)そのものだ。
いつの間にか、すっ飛んだ”中流意識”
さて、非正社員に現在の就業形態を続けたいか聞いた質問では、嘱託、出向、パートはいずれも「続けたい」が8割前後だったが、派遣や契約社員は半数が「正社員に変わりたい」と答えた。質問の仕方がよくわからないが、半数しかないのは、想像するに、派遣や契約社員の多くは、正社員になるのは予め諦めているから「変わりたい」と答えなかった可能性もある。一方、正社員の待遇悪化も目立ち、賞与を支給した事業所は同13.5ポイント減の65.0%。退職金を出した事業所は同6.1ポイント減の58.4%、昇給・昇格を実施した事業所は同8.1ポイント減の53.3%と軒並み低下した。 これなどデフレも手伝い、多くの正社員も「中流意識」が飛んでいったことが推察される。
勤続年数は”終身雇用”とは程遠く短期化へ
30日付の日経朝刊「経済教室」は、すばらしいタイミングで、「揺らぐ日本型雇用慣行 正社員の“入り口”拡大急げ」という見出しで、労働経済の専門家である一橋大川口大司准教授が、論旨を展開している。ポイントは、男性労働者(非正社員含む)に関しては、1944年〜49年生まれの世代より若い世代では、一貫して平均勤続年数が短くなっていることだ。1945年生まれと比べると、70年生まれの男性はどの年齢でみても、およそ2割短くなっているという。
4割が非正社員の時代、5割も近い?
川口氏の寄稿には先述の厚労省調査が間に合わなかったのか、総務省の「労働力調査」が引用されていて、「1984年当時の非正社員は15%だったが、2010年時点で34%にまで増加している」とある。役所の違いはあるが、厚労省の数字のほうが4.7%分、厳しい見方をしている。東日本大震災は、いずれにせよ、これらの調査には反映されていないから、やはり実質4割が非正社員といってよいだろう。
「世代間闘争」の懸念
非正社員は、これまで日本型雇用慣行の“枠外”に置かれてきた層である。これが、半数に近くになっていく組織体ってなんだろう。サステナブルにコンプライアンスやモラールは維持できるのだろうか。川口氏は「非正社員の増加は、若い世代の男性・女性労働者で、労働市場の新規参入者に集中」と分析している。それは、言い換えれば、高校や大学を卒業した「新卒未就業者」が、正社員の行き場がなく、”非正規”に甘んじているということに他ならない。こんな若者に苛酷な状況では、いよいよ日本にも本格的な「世代間闘争」が芽生えてくるかもしれない。
強い個の確立のため、ギャップイヤーを!
このブログでも紹介したが、8月4日のNHKの報道では、「大学を4年間で卒業できず、1年留年した学生は、4万5千人(2年連続増加)。さらに大学を卒業後、進学も就職もしていない若者は9万人弱(3年連続増加)」とある。
これらが、一つにつながってくるのがおわかりだろう。だから、筆者は、行政に頼らずして個を強くするため、ギャップイヤー(非日常下での3ヶ月以上の社会・就業体験)の導入を訴えている所以(ゆえん)である。
なぜ、「新卒一括採用」のみ残る?
日本の労働慣行を「出口」から観ると、リストラや肩たたきがあり、終身雇用や長期雇用が既に崩れている。退職金だって、今後はあてにできない。年功賃金はおろか賃下げも各世代に広がって、「中流階級」もやせ細っている現状だ。それなのに、どうしてセットであったはずの「入口」のところの「新卒一括採用」だけが几帳面に墨守されているのか、私にはどうしても理解できない。
小学生の入学式じゃあるまいし、大のおとな(?)ががん首そろえて、社長の薫陶を全国一斉に受けるあの”入社式”の風景も、どうも”20世紀の遺物”のような気がしてならない。