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50年前から進展していない「平和」希求者たちー細谷雄一『安保論争』を読む➀

一昨年来の安保法制をめぐる動きを追うにつけて、いわゆる”左翼知識人”の知的及び行動的退廃とでもいうべきものを嘆かわしく感じる。とりわけSEALEDsなど若い世代の動きを持ち上げ、そこに縋ってるかのように見えることに。

それは、かつての60年代から70年代にかけての「安保闘争」へのノスタルジーを重ね合わせているのかもしれない。かつて自分たちが歩んだ道を、また歩もうとする後輩たちの誤りを糺さずに、むしろおもねってるようにしか見えないことは、私には大いなる悲喜劇だと思われる。そういう風に考えていた私が細谷雄一『安保論争』を読んで、まことに共感するところが大きい

▼いま「安保法制」をわざわざ「戦争法」と呼んで反対する人々が、イスラム国への批判やウクライナの現状について、殆ど声をあげているようには見えないことを、細谷氏は不思議であると指摘する。ベトナム戦争への反対を叫ぶ中で、青春期を過ごしてきた私のような世代からすればなおさらだ。ベトナム戦争を経て、南北ベトナムは一本化し、荒廃そのものの地から逞しく蘇った。

一方深く傷ついたアメリカは今もなお戦争から足を洗えないでいる。この結果だけを見ても、今展開されている事態に日本の「平和勢力」が声を上げ続けないのはおかしいといえよう。地球的規模で「平和と戦争」を見つめないと、結局は日本人だけ平和であればいいとのエゴであると見られてしまう

▼安保をめぐる議論は、かつてと大きく違っているはずだ。それは、自社対決の55年体制下の時代は、自衛隊を違憲の存在とし、日米同盟を危険なものとして否定してきたが、今ではそれらを受け入れることが国民的コンセンサスとして定着しているからだ。ところが、「戦争法反対」という人たちは、時代の変化に目を向けず、議論を50年程前に戻そうとしているかに見える。

これでは、かつての安保世代が失敗した経験を、後輩たちに押し付けようとしているだけではないのかと思う。そこには50年の時代の変化が全くこの人たちには見えていないというしかない

▼「安保関連法の必要を説く者が、安全保障環境の未来を想定しているのに対して、安保関連法を批判する者が安全保障環境の過去を想定している場合が多かった」-こう細谷氏が指摘することを一体彼らはどう考えるのか。戦争空間が世界大から宇宙大へと広がり、サイバー空間で争われることなったことの意味を意図的に外していいのだろうか。

こう指摘すると、一体今の世において戦争が起こると本気でお前は考えているのかとの反論が聞こえてきそうだ。戦争に対処しようとするからこそ、却って巻き込まれるのであって、当初からそんなものを考えない方がいいのだ、と。こうした”古き良き考え”というか、「空想的平和主義」とでもいうべき「非武装中立的思考」が今もなお彼らの頭に宿っていることを真剣に憂わざるを得ない。細谷氏の言説を追いながら、「ベトナムからシリアへ」と背景の舞台が変わった日本の「安保」を数回にわたり考えてみたい。(2016・9・5)

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