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未婚の原因は「お金が足りないから」という幻想-少子化社会データ検証:「未婚化・少子化の背景」は「お金」が一番なのか- - 天野 馨南子

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■要旨

本稿の執筆のための分析は、これから結婚を考える男女だけでなく、その家族や職場など彼らをとりまく社会全体も「お金が足りないから結婚できないのではないか」といった結婚観を再考するべきではないか、と筆者に感じさせるものであった。

「お金が足りないから結婚できないのではないか」
確かにお金がなくては生活はなりたたない。お金は結婚を決める際の一要因であることは確かである。

しかしながら
- 次世代を育む相手、老後を支えあう相手、最も近くで生活を支えあう相手を求める男女を前に、人生の一大決意の問題はまずはお金の問題である、といった、ともすればあまりにも安易な結婚観を語らないようにしたい -

そんな結果を本稿でご紹介できれば幸いである。

■目次

はじめに-未婚化が少子化に大きな影響を及ぼす日本
1――そもそも未婚者のライフプランに結婚・出産はあるのか?
2――本当にお金が足りないから結婚できないのか、の検証
  1|結婚にはどれくらいのお金が最低限必要と考えているのか?
   < 既婚者VS未婚者 >
  2|結婚にはどれくらいのお金が最低限必要と考えているのか?
   < 20代未婚女性 VS 30代未婚女性 >
3――本当の原因はお金ではないかもしれない、の検証
  1|男女とも交際相手がいない割合が着々と上昇
  2|結婚していない理由の年齢による変化
  3|既婚者の結婚のキッカケは、「好きな人と一緒になりたいから」
  4|「好きな人と一緒になりたい」なら、 時間との勝負
4――未婚者の「お金が足りないから結婚できないのだ」のイメージ打破のためにbr />   1|未婚男女の思い込みの打破 - 女性:「私の収入はお小遣い」の打破
  2|未婚男女の思い込みの打破 - 男性:「僕が一家の大黒柱」の打破
5――おわりに

はじめに-未婚化が少子化に大きな影響を及ぼす日本 

1995年以降、合計特殊出生率が恒常的に1.5未満となる超少子化社会に突入し20年以上が経過した日本。合計特殊出生率1.8が国の目標とされ、様々な政策が模索されている。

少子化対策の一つとして現在とりくまれている政策が「未婚化対策」である。勿論、結婚しなければ産んではいけないなどということはない。むしろどんな形であれ、この世に生まれくる命を社会であたたかく迎え、社会全体で可能な限り健やかに育もうとする社会のあり方は歓迎されるべきものである。

しかしながら、統計的にみれば日本は結婚を伴わない出生は極めて少ない国1である。

図表1の通り、日本の婚外子比率はこの半世紀以上2%の周辺を推移している。

つまり、日本ではほとんどの場合、結婚から出産というステップを踏んで子どもたちがこの世に生を受ける慣習があるのである。このような慣習の国において未婚化が進行することは、そのまま少子化が進行することを意味している。

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未婚化と少子化に立ちはだかる「まだ若すぎる」の壁-少子化社会データ検証:「逆ロールモデルの罠」-でも示したが、2010年において既に男性の5人に1人、女性の10人に1人が「生涯未婚」2であると定義されている。

20歳から49歳までの男女に対する意識調査結果からは、「結婚できないのは、お金が足りないからだ」という認識が社会の主流となっていることが示されている(図表2)。これはアンケートによる定性的な「意識調査」による結果である。しかし、この調査は未婚者以外も含む一般的な意識調査であるがゆえに、それがそのまま問題の解決策を考えるための前提として有効な回答かは検討が必要である。

すなわち他人事について「こうではないか」と想像で回答しているケースも含まれており、社会の風潮をよく表すものであったとしても、未婚者の実際の意識はまた別にあるかもしれないのである。

本稿では「お金が足りないから結婚が出来ない」にまつわるデータを定量的に分析することで「本当にお金が足りないから結婚できないのか」の解にできるだけ迫ることを目的としている。

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  1 ちなみに厚生労働白書によれば、他の先進国の婚外子比率は、フランス52.6%(2008)、スウェーデン54.7%(2008)、イギリス43.7%(2006)、アメリカ40.6%(2008)、ドイツ32.1%(2008)、ドイツ32.1%(2008)、イタリア17.7%(2008)などとなっている。
2 調査時点で50歳であり、1度も結婚経験がない者を生涯未婚として生涯未婚率は計算される。
 

1――そもそも未婚者のライフプランに結婚・出産はあるのか?

1――そもそも未婚者のライフプランに結婚・出産はあるのか?

未婚化の原因について、検証を行う前提として、まず未婚者の意識について見ておくこととする。

そもそも結婚したくない人が増えているので生涯未婚率が上昇しているのではないかという認識は、図表2でも生涯未婚率上昇の原因と社会が考える要素の第2位となっている。

結婚や出産はあくまでも個人のライフプランの一つである。そのため、もし未婚者の結婚や子どもを持つことへの意欲が減少したならば、(たとえお金があっても)未婚化は進行してゆくと考えられる。

図表3は18歳以上35歳未満の未婚者の結婚希望の推移を表した図表である。男女とも約9割が「いずれは結婚するつもり」と回答している。日本においてはこの20年以上もの間、結婚希望割合は男女とも非常に高い、ということがみてとれる。 リンク先を見る 次に未婚者は子どもが欲しいと思っているのか、についても検証する。結婚希望があっても子どもが欲しいと思わない人々も当然いる。しかし、その割合が高ければ、日本において未婚化が解消しても少子化は解消しにくい、ということになる。

図表4は未婚者の希望の子ども数の推移を示したものである。この20年間をみると安定して未婚男女とも平均すると2人を希望していることがわかる。ちなみに結婚意志がある未婚者のうち、希望の子ども数は0である(子どもは欲しくない)と回答した割合は、わずか男性6%、女性5%であった。 リンク先を見る 以上のデータから、日本における未婚者はほぼ9割が結婚を希望しており、また結婚意志がある未婚者は子どもを希望しており、平均すると2人欲しいと思っているということがわかる。

つまり、結婚意欲のある未婚者が結婚に至らないなんらかの障害が確かにあり、それが取り除かれることによって生涯未婚率を低下させることが可能である、と考えられる。

2――本当にお金が足りないから結婚できないのか、の検証

1結婚にはどれくらいのお金が最低限必要と考えているのか?  < 既婚者VS未婚者 >

前章にて、未婚者が若い割合で結婚希望・子どもをもつ希望があることが示されたので、次に、未婚者のお金に関する感覚について検証してみたい。

民間シンクタンクの2016年実施の最新調査3において、20代から40代の男女が「結婚生活を送るために最低必要だと思う世帯年収」を回答者の既婚・未婚別にみることが出来る。

結婚生活の現実を知る「既婚者」とこれから未経験の「未婚者」との間には、金銭感覚のズレがあることがわかる(図表5)。

既婚者の回答は1位2位の300万円から500万円に約半数がおさまっているのに対し、未婚者は1位2位の400万円から600万円に約半数がおさまっており、既婚者よりも100万円以上必要と思う年収ゾーンが高額となっている。また、既婚者ではランクインしてこない、最低年収700万円から1000万円といった回答も未婚者では1割を超えている。

図表5からは、過半数が最低ラインを世帯年収400万円以上と考える未婚者の世帯年収感覚を現実的な感覚とのズレが指摘できるであろう。

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  3 明治安田生活福祉研究所「第9回結婚・出産に関する調査」2016年3月実施
 回答者:全国の20歳から49歳の男女3595人、調査方法:WEBアンケート調査


2結婚にはどれくらいのお金が最低限必要と考えているのか?  < 20代未婚女性 VS 30代未婚女性 >

前節で未婚者が既婚者よりも高い世帯年収が必要であると考え、400万円以上の回答が大半を占めることを示した。そこで本節ではこのように高い水準を希望する未婚女性が必要と考える世帯年収についてもう少し詳しく見てみることにする。

同じ民間調査において、20代・30代の未婚女性がどれくらいの年収を結婚相手に最低基準として相手に求めているのかがわかる調査結果がある。

図表6を見ると、明らかに20代未婚女性よりも30代未婚女性のほうが男性に高い年収を最低基準として希望していることがわかる。

400万円未満の年収男性でも結婚相手である、と考える女性は20代で3割弱、30代では2割弱となっており、未婚女性は年齢が上がると結婚相手の男性へ求める最低年収も上がる結果となっている。

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「20代未婚女性の6割、30代未婚女性の7割が最低400万、またはそれ以上の年収を相手に求めている。」

このような未婚女性の希望はさておき、現実的な日本の給与所得者の年収はどうであろうか。

国税庁の公表しているデータが示す「お金の現実」が図表7である。

図表7は結婚を希望する相手に「せめて日本人の平均的な所得の相手を」と望んだとしても、40歳以下の未婚者「1人」に世帯年収400万円以上を望むのは、相手が非正規である場合は勿論のこと、「たとえ正規社員であっても困難である」ことを示している。

平均年齢45.4歳の男性で、ようやく500万を超える平均給与だからである。一般的には賃金は年齢や勤続年数に比例して上昇してゆくことを考えると、一般論として20代、30代の男性に「最低年収400万円」を求めることは現実を無視した感覚といえるのではないだろうか。

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これとは別に、厚生労働省が公表している平成27年賃金構造基本統計調査においても、短時間勤務を除く一般労働者男性(年齢43.1歳 正規・非正規含む)の平均賃金は月額33万5千円で単純に12倍すると402万円強である。

したがって多くの20代、30代の未婚女性は男性に対し、現実的に見ても結婚の最低条件に非常に厳しい金銭的要求をもっていることが示されている。

以上をまとめると、

女性が男性に現実を度外視した収入要求を持っており、
未婚者は男女とも既婚者よりも生活に必要な収入額を大きくとらえてしまっている

ということができる。

つまり、「お金が足りないから結婚できない」という未婚者の回答は、額面どおりに受け取ることはいささか問題がある、と考えられるのではないだろうか。お金が足りないから未婚でいる、のではなく、結婚するにはお金が足りないというイメージがあるから、結婚できないと回答している可能性が高い。

実際、既婚者は常識的な年収水準で生活できると回答し、日々の暮らしも立てている。

このような現実感覚を未婚者に認識してもらうことが生涯未婚率を低下させるためには有効であると言えそうである。

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