- 2016年09月05日 19:18
「若者が寄付しているから、あなたの年金は6倍になっているんです」と 高齢者に対してきちんと理解してもらうべき - 「賢人論。」第22回(後編)鈴木亘氏
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これまで鈴木亘氏に、社会保障の基本的な知識や海外で行われた社会保障改革の取り組みを伺いながら、我が国における改革案を伺った。「政治家や官僚がリスクをとれるようにならないと社会保障改革は進まない」と言い切る氏の言葉は、まさに、自らリスクをとって大阪市の改革をやり遂げた経験に裏づけされたものである。最終回となる後編では、国民の一人ひとりが身につけるべきコスト感覚について語ってもらった。
取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/公家勇人
本来のコストがわからなければ、国の制度の裏に莫大な税金がつぎ込まれていることを実感できない
みんなの介護 中編「政治家や官僚がリスクを取れるようにならないと社会保障改革は進まない」で、で、アメリカの共済年金などでは、年金の投資先を加入者が自ら選ぶと伺いました。例えば、盲腸になると数百万もかかるアメリカの医療費と比べると、日本は健康保険一つとってみても恵まれていると思うんです。
鈴木 利用者から見れば安く医療を受けられて恵まれているわけですが、その裏では実際に費用が掛かっているんです。借金として先送りしているから恵まれているように見えるだけで、いずれ、そのツケは支払わされます。
アメリカは、加入する保険を自分でチョイスできます。「保険料が高くても、なんでも保証してくれる保険がいい」と言う人がいれば、「最低限の保証でいいから保険料は低いほうがいい」と言う人もいます。アメリカでは、どちらがいいかを国民が自分で考え、選べるんですよ。その分、コスト感覚が正常で、ある意味、「ゆでガエル」の日本より優れている面があります。
みんなの介護 ということは、諸外国の人たちと比べると、日本人はブラックボックスに置かれているような状態なのですか?
鈴木 まさに、ブラックボックスにいる状況です。特に、年金に関してはブラックホールですね。例えばアメリカの場合、カリフォルニア州の公務員の共済年金や、私学共済年金などでは、投資先は自分で選択するんです。国債で安全運用してほしいとか、株でやってほしいとか、一応は選べるんですよ。そして随時、「収益データが出ました」「あなたの年金は将来減らされる可能性があります」などと、レポートが届きます。アメリカは自己責任社会ですからね。
みんなの介護 日本の健康保険とは違いますね。
鈴木 これが何を意味するかというと、アメリカの国民はよく勉強するし、何が自分にとって一番いいかを必死に考えるということです。そして、医療費の高さがわかっている。手術に数百万かかるなら、“自分の数か月分もの給料がかかる手術なんだ”と認識できるということです。例えば、3回も心筋梗塞になってしまったら、“これは破産するぞ”と危機感を持つわけですね。だから、どの保険に加入しようかと必死に考えるようになります。
日本の場合、自己負担を除いた金額は、保険料以外に国が大量の税金をつぎ込んで負担しています。本当は手術に数百万もかかっているのに、実際のところ数万円しか払わなくていいというのは、保険と国が肩代わりしているからです。でも、自分で保険を選んでいないから、当人にはそのありがたみがなかなかわからないですよね。
みんなの介護 海外の健康保険事情を聞くと、日本の制度のありがたみがわかるというか。
鈴木 我々日本人は、はっきり言って医療費のコスト感覚をほとんど持っていないでしょう?高齢者の自己負担額は1割だし。1割どころか、入院や手術には高額療養費制度があるので、高齢者は何百万円もかかる手術をしても、だいたい月4万円を超える自己負担を払わなくていいんです。というか、4万円を超えれば、あとはその月にいくら医療費がかっても、まったく追加自己負担が発生しません。その分は費用ゼロと同じわけです。それじゃコスト感覚がなくなるのも当たり前ですよね。
誰かが払ってくれている保険料と税金によって、恩恵を受けていることを実感するということは、とても重要なことです。保育料でも同じことが言えます。例えば、親たちが支払っている保育料は平均でが毎月2万円ですが、本来はそれだけじゃ済まないんです。ちゃんとコストとサービスの対価を考えればわかることですが。こどもを保育園に預けると、本当は月15万~20万円くらいかかるところを、補助金として国と自治体が10万円以上払っているから、2万円の保育料で済んでいるんです。だから、まずは15万~20万円かかっていることを知らせないと。すると、“本来は15万かかっている保育コストだけれども、国と自治体が、10万円以上をサービスしてくれているんだ”と親がわかるわけです。
今は、なんだかわかんないけれども、「平均2万円でいいです」というだけになっている。その裏には、莫大なお金がつぎ込まれているんですよ。それがわからなければ、「なんだ、2万円のサービスだし」「これは国がやっている制度でしょ。だったら私、払いませんよ」なんていうように、軽々しく滞納する人が出てくるわけです。



