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芸術と政治の関係について考える

今年も、演劇祭「利賀フェスティバル」に行ってきた。建築家の磯崎新氏(利賀村の野外劇場などを設計された)と哲学者の柄谷行人氏(学生時代、悪戦苦闘しながら著書を読んだ記憶がある)という鈴木忠志氏の盟友であり、巨匠のお二人と並んで演劇を観るという光栄に恵まれた。人里離れた利賀村に私が毎年訪れるのは、演劇を観るためだけではない。鈴木忠志氏の言葉を借りるならば、「異質な何かとの出会い」が利賀にはある。

今回、改めて考えさせられたのは官(ここでは政治と官僚機構を含む意味で用いる)と芸術との関係だ。両者の距離感は難しい。劇団SCOT(Suzuki Company of Toga)は官からは独立して演劇活動をしており、演じられるのは、多くの場合、日本の社会、歴史、政治に対して厳しい視線が向けられ作品ばかりだ。SCOTも、企業からのサポートに加え、自治体など公的なサポートなしには運営できないのだが、芸術の中身はもちろん、劇団の運営についても、官や企業からの干渉は排除されてきた。鈴木忠志氏が東京を離れて富山県利賀村にSCOTを創設して40年。以来、鈴木氏は世界中で演劇指導を行い、SCOTは多くの海外公演を成功させてきた。今や利賀村で訓練を積む俳優は多国籍化し、演劇祭に来る外国人の姿も目につくようになってきた。過疎化で滅びつつあった利賀は、今や「演劇の聖地」と呼ばれるまでになった。奇跡的なことだと思う。

劇団は自由な芸術活動に打ち込み、官はその自由な環境を維持するための支援に徹する。この距離感を維持できたのは、鈴木忠志氏という卓越したリーダーの存在と、官の側の包容力があったからだろう。難しいのは、包み込む力が強すぎると、芸術は死んでしまうことだ。思い起こされるのが、新国立劇場とSPAC(静岡県舞台芸術センター)のあり方だ。

オペラと演劇鑑賞が趣味の私は、新国立劇場に年に何回か足を運ぶが、今でも道に迷うぐらい施設は立派だし、広報機能などは民間や地方のそれを圧倒している。しかし、新国立劇場が創設されて20年近くになるが、鈴木忠志氏によると国立劇場発で外国から招待された演劇はない。だとすると、多額の税金が投入されているにも関わらず、残念なことだ。

静岡県の劇団(ちなみに、都道府県で劇団を有しているのは静岡県のみ)であるSPACは、鈴木忠志氏によって創設され、宮城聡氏に引き継がれてきた。地元ということもあり、若い時からしばしば足を運んできたが、演劇のレベルは高く、地域の文化のレベルを上げることにも貢献している。特に、宮城聡氏が演出したインドの叙事詩『マハーバーラタ』は、2014年にフランスの世界最高峰のアヴィニオン演劇祭で高い評価を受けてから、モスクワやパリでの公演も成功させるなど快進撃が続いている。SPACも、毎年GWには演劇祭を開いている。中でも、昨年、宮城氏が演出した『メフィストと呼ばれた男』は、ナチスドイツの下で国立劇場の総監督となった男の姿を描いたもので、官と芸術を巡る葛藤を描いた秀作だった(『メフィストと呼ばれた男』細野の劇評)。

単なる演劇好きで終わることなく、政治家としてよき芸術の支援者でありたいと思う。

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