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「スタートレック」50周年:不滅のSFシリーズ誕生まで

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スタートレックに登場するエンタープライズ号
スタートレックに登場するエンタープライズ号
Photo: Paramount/Everett Collection


By John Jurgensen

 クリンゴン人とロミュラン人とアンドリアン人が廊下を闊歩(かっぽ)し、カーク船長とミスター・スポックもその近くを通り過ぎる――ラスベガスのカジノで先日行われた大規模な「スタートレック」ファンの集いでの一場面だ。会場はシリーズの人気キャラクターに扮(ふん)するファンであふれ、中にはテレビ版にも映画版にもほんのわずかしか登場していない人物の格好をする人もいる。そんな中でもマニアックなコスプレをしていたのが、女優ルシール・ボールさんの格好をした1人の女性だ。

 テレビドラマ「アイ・ラブ・ルーシー」に出演していたボールさんは、実はスタートレックの誕生に深い関わりを持つ。1960年代の半ば、彼女が経営するプロダクション会社デシルは新たなテレビ番組の製作機会を模索していた。そこに届いたのが、ジーン・ロッデンベリー氏が手掛けたあるSF(空想科学)作品の台本だった。ボールさんはその脚本を読むことはなかったが、デシルはスタートレックと名付けられたその番組を製作する決断をする。

 シリーズの記念すべき第1話はスケジュールも予算もオーバー。また61万6000ドル(現在の価値で470万ドル)かけて製作したにもかかわらず、米テレビ局NBCは撮り直しを命じることになる。最終的に初回の放送が実現したのは、ちょうど50年前の1966年9月8日だった。

 番組に登場するエンタープライズ号には地球を代表するさまざま種が乗り込み、登場人物は未来を予知したかのような通信機器を使って連絡を取り合う場面があった。そんな斬新なストーリーだったにもかかわらず、番組は当初からつまずく。視聴率はなかなか伸びず、評論家も番組に関心を示さない。カーク船長を演じたウィリアム・シャトナーさんは「いつ番組が打ち切りになってもおかしくない状況だった」と振り返り、実際にスタートレックは3シーズンのみが製作された段階でいったん幕が下ろされた。

撮影の様子
撮影の様子
Photo: Paramount/Everett Collection


 それから数十年。2009年に公開された劇場版のスタートレックは3億8570万ドルの興行成績を上げ、来年1月からは米CBSで最新のテレビシリーズが開始されることも発表されている。スタートレック関連で150以上のライセンスを持つCBSは、275ドルするスタートレックのチェス盤から数ドルのバービーシリーズ人形まで、今も幅広いグッズをファン向けに生産する。グッズのなどの売り上げは過去5年で2倍以上に増えたという。

 当初は芽が出なかったスタートレックが、なぜ息の長い成功を手にすることができたのか。そこにはオンエア時ではなく再放送でファンを獲得していった経緯や、今では当たり前となったファン向けのイベントに注力していた点などが挙げられる。

 また、番組初期の映像視覚効果は今でも新鮮だとは言えないレベルだが、人間と宇宙人のクルーが最新技術を使って旅を続けるという壮大なストーリーは人気が続く理由のひとつだ。スタートレック人気が確かなものになっていくと同時に、製作陣がスピンオフ映画やテレビシリーズ、本、ゲームなどを通してその世界観をさらに広げていったことも、現在の成功につながっている。

 スタートレックが50周年を迎えるにあたって、今回はシリーズ開始当初の様子を知る関係者に当時の話を聞いてみた。

 スタートレックのエグゼクティブプロデューサーを務めたハーバート・ソロー氏は、1964年にボールさんのプロダクション会社デシルで働き始めた。

 ソロー氏:「当時、ルシールさんは『マダム・プレジデント』とみんなに呼ばれていた。スタジオは継続する新たな収入源を必要としていて、彼女と初めて会った日もテレビ番組を見つけてくるように言われた」

 ソロー氏は指示を受けてロッデンベリー氏と会い、スタートレックのコンセプトについて教わった。番組にはコストの懸念がつきまとっただけでなく、他にも不安材料があった。ロッデンベリー氏は当初、ミスター・スポックを赤い肌ととがったしっぽを持つ火星人のハーフにする構想を持っていたという。

 ソロー氏:「ヒーローの一人が悪魔の姿をしている番組なんて、どのテレビ局も広告主も手をださない」

瞬間移動を行う番組のワンシーン
瞬間移動を行う番組のワンシーン
Photo: Paramount/Everett Collection


 NBCはスタートレックの第1話を製作するようデシルに注文を出したが、その時点では番組の人気キャラクターが全員そろっていたわけではなかった。また仕上がった作品に対して「台本が知的すぎる」とする声なども挙がっていた。

 しかし、そんな中でもNBCは撮り直しを要求し、製作陣に2度目のチャンスが与えられた。当初船長役を演じていた俳優が降板したため、プロデューサーらは新たな主役としてシャトナーさんに注目。カナダ出身の彼は当時注目されていた新人俳優で、「トワイライト・ゾーン」や映画「ニュールンベルグ裁判」に出演するなどしていた。シャトナーさんいわく、ロッデンベリー氏は役作りのために(架空の英海軍将校の)ホレイショ・ホーンブロワーが登場する本を研究するよう勧めてきたという。

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