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電力は「なんちゃって自由化」でもいいのではないか

<金融日記:イマイチ盛り上がらない電力自由化とスマートグリッド

前にも電力自由化には考えを保留すると書きましたが、「金融日記」にも同じ論点が上がっています。
現在の電力会社は、法律で電力の安定供給の義務を負っています。だから夏の数日間のピーク電力を補うためだけに、余剰な発電施設を抱えています。もし自由化したら、誰がそういうコストを負担するのか、という問題があります。(中略)夏のピーク時にだけ電気代を5倍ぐらいにすれば、需要を抑えこんで、余剰な電力施設が必要なくなるかもしれません(中略)が、貧乏人は熱中症で死ねというのか、などという批判を政治家がどう受け止めるのでしょうか。
私も価格メカニズムで解決するのが最も優れているとは思いますが、時間帯価格を設けたりピーク時に強制遮断するような技術が開発できたとしても、それを実用に移すときの政治的な問題は避けて通れないでしょう。

いろんな発電業者の電気が混在するようになれば、電圧や周波数の安定という「電力の質」が低下する技術的な問題と、社会の共通インフラを市場原理主義で行っていいのかという政治的な問題にぶつかります。以下の藤沢氏の表現には感心しました。
通信の自由化はそれなりに進み、電話代もインターネットもずいぶんと安くなりました。ところが電力の自由化というのは、イメージとしては、通信の自由化というよりも、たとえば水道の自由化、という方にはるかに近いのです。
なるほど水道は自治体の事業ですが、民営化しろとか企業の参入を認めろとは聞いたことがありません。それに日本の上下水道は技術的にも運用面でも世界最高のインフラだと言えるでしょう。電気も送電網につなぐと水道のように混ざってしまうので、新規参入業者の品質が悪いとみんなが迷惑します。

では自由化は全く進めないのか?これも、私の今のところの結論は藤沢氏に近いものです。
それでも僕は、なんとか電力の自由化をしたいと思っています。やはり競争がないのは、長期的には健全な発展が期待できないからです。六本木ヒルズは、コージェネレーション・システムを導入して自家発電していますが、このような例をどんどん増やしていくのが、一番いいのではないかと思っています。(中略)スケールメリットがある大型施設にガスタービンなどを取り付け、送電ロスを回避し、排熱を冷暖房などに利用し、トータルのエネルギー効率を高めるのが重要だと思っています。
ところが、みんなの党の田中朝子氏の報告によれば、ヒルズのような特定電気事業者が東電と交わす「保障契約」はかなり割高だそうです。自由化を阻む参入障壁なわけですが、おそらく経産省に文句を言っても「民間企業の契約だから」とかいって逃げるんでしょうね。

東電の大口需要家は割安な料金で供給を受けています。どこの国でも産業用と家庭用の電力料金には差があるようですが、やはりこれも自家発電のインセンティブを削いでいると言えるでしょう。家庭で発電するのはロスもリスクも高いので、自家発電でペイするとすれば大口需要家なのですが、「そんな事しなくても安くしますから」ということになってしまう。

一方で、プロの発電業者を組織して地域電力・冷暖房のシステムなんかを作れば、送電ロスもなく「安くて環境にやさしい」一石二鳥が見込めるのに、東電はそうした業者には高い料金を請求するーーこれこそが問題なんだと思います。

「発送電を分離して地域独占をやめさせる」というのはカッコイイけど、技術的にも政治的にも難しいのなら、まずここを何とかするのが政治の役割でしょう。地域独占そのものよりも、市場メカニズムを阻害する手段を奪うわけです。

地域独占は認める代わりに安定供給の義務は引き続き負わせ、人口集積地や工業団地などで発電業者を誘致しやすい仕組みづくり、参入を阻害しないための公正な料金体系を話し合うのはすぐに出来ることです。

これでは「なんちゃって自由化」かもしれないけど、発電事業参入の自由化にはこうした形態があってもいいんじゃないでしょうか。「発電するからには送電系統につなぐ」という発想のほうが思考停止かもしれないなあと思うのです。

オール電化への補助金(電気料金含む)などは個人の既得権なので、これを取り上げるのは酷ですが、今後は補助金を使ったオール電化の推進もやめるべきでしょう。家庭でガス発電というのにも補助金が出ているようですが、これも補助金をやめればペイしないので金持ちの道楽の位置づけになります。家庭の太陽光電池も同じ位置づけならいいでしょう。

オール電化や太陽光電池への補助金は、原発推進と地域独占力強化の手段だったと思います。家庭で発電してもペイしませんが、ある程度の規模で発電主体を持つなら、補助金なしでもペイすると思われます。「なんちゃって自由化」なら、政治的にも技術的にも経済的にも問題ないのではないでしょうか。

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