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電力自由化には考えを保留する

発送電分離だとか電力自由化とか、「市場経済を取り入れれば電気も安くなるし効率的な解が得られる」と何となく思ってきましたが、しばらくはこの考えを保留しようと思います。

一番の疑問点が、「電力の安定供給義務を解除していいのか」です。当たり前の話ですが、東電や中電などの一般電気事業者には、安定供給の義務が法で定められています。

私は偶然にも地下送電線の敷設工事をしている監督さんに話を聞いたことがあります。その人の話によると、ある1区画の電力需要が2年後には急増するということでした。「そんな事わかるんですか?」という私の問に、監督さんは「はい、わかっていることです」と即答しました。

そして、たった数百メートルの電線埋設工事を1年間かけて行うということでした。何ヶ所かに縦穴を掘って、その間をシールド掘削機(もぐらのようなもの)に掘らせて、わずか直径10センチくらいの電線を這わせるそうです。電線の模型を見せていただいて、「これに一年・・・」と思ったものです。

電線敷設工事だけで1年かかるのですから、前後の工程を入れれば数年がかりの計画でしょう。それだけ先を見越した情報収集をし、着実に送配電設備を準備しなければ、「新しいビルが建ってからこの地区は停電続き」みたいな事態になるのでしょう。

法的義務さえなくなれば東電がそのような仕事をやめてしまうとは思いたくありませんが、少なくとも私たちが普段、意識せずに電気を使えている背景にはそうした努力とノウハウがあるわけです。自由化するということは、一般電気事業者にこの最終責任を負わせないということにつながります。

発電・送電・配電の分離と簡単に言うけれども、停電が頻発した場合にどこに責任を追求できるのかわからないようでは問題です。

発電ひとつとってみても、よほどの工夫がない限り、発電量は使用量に合わせなければならないのが現在の電力の基本です。夏場の昼間の最大需要とそれ以外の時期・時間帯の電力需要には大きな差があり、早い話が「年間ピーク時にしか動かさない設備を誰が温存しておくのか」ということです。

年間で数十時間しか動かさない設備を維持してきちんと管理しなければいけないとすると、その電力は一体いくらならペイするのか、そして供給義務を負う業者がいない中でその価格をどこで解消するのか、その辺が全くイメージできません。

ピーク時の電気料金を高くすれば、市場原理で需給調整はできるかもしれません。でも、需要ピークということは沢山の人が電気がないと困る状況であるわけで、そうした状況下で「たくさんお金を出した人にだけ供給します」で社会が成り立つのか。お金持ちならエアコンもドライヤーもアイロンも使えるけれども、貧乏人は冷蔵庫以外使えないような“市場原理主義”でいいのか? これは、原発反対の人たちに是非聞いてみたいことです。

電気については私も素人で、まだまだ勉強しなければわからないことが多すぎます。でも、自分がわかっている範囲内でもこのような疑問は解消していません。

最大需要に合わせて遊休設備を用意しておくということが、市場メカニズムで保証できるとは思えないのです。

よって、今の段階では、私は電力自由化や発送電分離の政策には距離を置くこととします。

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