- 2016年09月02日 13:51
社会保障を地方分権として市町村やコミュニティ単位の仕組みをつくれば良い。 それが社会保障改革の突破口 - 「賢人論。」第22回(中編)鈴木亘氏
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前編「今の高齢者は、インフレ分を考慮して今の金額に換算しても6分の1しか年金を払っていない」では、財政の現状を明らかにするべく第三者機関の必要性を指摘した鈴木亘氏。改革を成功させるには事実が国民に浸透していなければ不可能と指摘する氏は、橋下徹元大阪市長とともに大阪の改革を行った経験の持ち主。そんな、改革時のエピソードをまじえながら“民主主義の原点”を存分に語ってもらった。
取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/公家勇人
政治家や官僚がリスクをとれるようにならないと社会保障改革は進まない
みんなの介護 前編「第三者機関を作って、事実を国民に明らかにすべき」で、アメリカやイギリスでは第三者の監督庁が国の財務状況を公表していると伺いました。日本でも、そのような機関を作れないのでしょうか?
鈴木 まず、その前段階として情報を公開する習慣や義務がないですよね、日本には。
みんなの介護 ということは、諸外国の人たちと比べると、日本人はブラックボックスに置かれているような状態なのですか?
鈴木 まさに、ブラックボックスにいる状況です。特に、年金に関してはブラックホールですね。
例えばアメリカの場合、カリフォルニア州の公務員の共済年金や、私学共済年金などでは、投資先は自分で選択するんです。国債で安全運用してほしいとか、株でやってほしいとか、一応は選べるんですよ。そして随時、「収益データが出ました」「あなたの年金は将来減らされる可能性があります」などと、レポートが届きます。アメリカは自己責任社会ですからね。
みんなの介護 他国で社会保障の問題をうまく回避している例はありますか?
鈴木 スウェーデンの年金改革は非常に参考になると思います。年金に関しては、どうせ国民にとって不都合な真実を明らかにした上で厳しいことを言わなければいけなかったので、「この際、与野党みんなで責任をかぶりましょう」ということになったようです。与野党が政争の具にしないことを協定し、超党派の改革論をまとめて、思い切った改革をやったんです。
相当批判されましたが、みんなの責任ということにしたので「俺たちは違う」という政党はいないわけで、改革がうまくいったんです。金額をばっさり切ったり、積立方式を一部取り入れたり。いろいろな国のお手本になる抜本的な改革ができました。
みんなの介護 日本でも、同じようにできないんでしょうか?
鈴木 これは非常に重要な話なんですけど、スウェーデンの場合は、あらかじめ情報をきちんと公開していたんですよ。スウェーデンという国は、医療や介護も全額税金でやっていて、年金はちょっと違いますけど、とにかく常に情報を国民に公開しています。その情報を知り、国民もうすうす“やばいな”と思っていたところなので、正しい改革ができたんです。
日本の場合、出発点として情報公開をまったくしていなくて、原発村みたいに安全神話になっているから、「まずいですね」と口にした途端、言った人が批判されるでしょ?まずは事実が国民の中で浸透していないと、その上にどんな改革をしようとしても、実現はできないでしょうね。
みんなの介護 事実が明らかにされれば、スウェーデンのような改革ができるかもしれないですね。
鈴木 もうひとつ重要なことがあります。改革をやるときは、リスクをとれる人間を制度的に作らないとダメですよ。官僚がリスクをとることはあり得ないので、政治家がそうあるべきなんだけど、今はしょっちゅう選挙をやっているでしょ。改革しましょうなどとリスクをとったら、次の選挙で当選しないわけだから、現実的には無理。政府の中にいる有識者の場合は、まったく権限が与えられていませんし。勇気をもって言ったとしても、私のように“屋上の狂人”扱いされるだけです(笑)。
まずは政府内にリスクをとれる人間がいないとね。要は、正しいことを言っても、その人の立場が危うくならないような仕組みを作らないと、日本では抜本的な改革なんて無理だと思います。



