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国会議員の本来業務を見るべきだ

ちょっと「当たり前の話」で申し訳ないのですが、自民党時代に国会議員がやってきたことを当然として見ている人は、国会議員の本来業務を軽視しているんだと思います。

ごくごく簡単に書いてしまうと、国会議員の本来業務は、

・議会に法案を提出し、審議を経て可否を決すること。
・政府の提出した予算を審議し、可否を決すること。
・審議に際し、本会議及び各委員会で質問をすること。
・質問主意書を書いて答弁を得ること。

です。

しかし自民党時代には、自民党内に政策調査会があって、そこで侃々諤々の議論があって、官僚が議員に「ご説明」に回ったり、逆に議員が地元の陳情を予算要求にねじ込んだりと、そうした駆け引きが実質的な法案審議だったり予算審議だったわけです。

そして、政策調査会を通過したものは国会を通るのは時間の問題。そこで、野党提出の法案も含めて審議の順番を決める議院運営委員会が大事な役割を果たすことになるわけです。なにしろ、会期内に審議できる法案の本数は物理的に限られてますから、順番が全てになるのです。

つまり、長い長い自民党政権の中で、国会議員の実質的な仕事は「議会提出前の法案や予算を、他の議員や官僚と駆け引きしながらなるべく自分の意に沿うように働きかける」だったのです。そして国対政治と言って、議事の日程戦術で細かい駆け引きをとめどなく行う。そこにおそらく「与野党のパイプ」というのがあって、裏取引も行われていたと思います。

何だ密室談合じゃん、と思った方、正解です。

本当は国会の場であーでもないこーでもないとやり取りすべきところを、既に与党内でしてしまっている。野党に突っ込まれないための想定問答も済んでいる。これでは、議会は単なるセレモニーの場と化します。議会がマジになるのは共産党あたりが与党議員のスキャンダルをすっぱ抜いた時くらいでした。

しかし、政権後退前からこの雰囲気は変わりつつあります。小泉首相は郵政民営化にあたって議会における審議を100時間以上記録し、そこでは与党の追及も受けました。民主党の政策新人類たちは、政権が行っているおかしなことを、真面目に取り上げだしました。

また、衆議院TV・参議院インターネット審議中継で、いまや本会議や各委員会の質疑はフルオープンです。国会審議が見たい人は、過去にさかのぼって動画で確認することができます。

何も「事業仕分けはフルオープン」などと胸を張る必要は何もなく、国会審議そのものが実質フルオープンなのです。(自民党の名誉のために付言しておくと、事業仕分けの前身は自民党の政策棚卸しで、これもメディアにはフルオープンでした。ほとんど取材に来なかっただけです)

それなのに、「自民党時代の密室談合こそが政治だ」と勘違いしている政治記者が未だに多いのでしょう。(その筆頭は大連立大好きな大新聞主筆)

テレビに流れる映像は、国会審議よりもむしろ夜の会合のほうが圧倒的に多い。これは政調会とか国対会談とか、裏取引をするための人間関係づくりに過ぎないのに(と言っては真面目に勉強会をしている人には失礼ですが)、そこに政治の真髄があると未だに思っているからです。

「事業仕分けはフルオープンだ、新しい政治の時代がやってきた」みたいに報道していた各社も、なぜ国会審議で問題になっていることはスルーしてきたのか。前回もちょっと触れましたが、それはおそらく、見ようと思えば誰でも視聴できる国会審議では記者の存在価値がないからです。

それよりも、官僚が流す噂に飛びついてみたり、与党の政治家がオフレコで言ったことを記憶していたり、というのが「記者にだけできる取材だ」と思い込んでいる。それはそれで重要だとしても、もっと政策について勉強したり取材したりすることがあっていいのではないかと感じています。

記者会見でも政策より政局に関する質問が異様に多いのは、記者の不勉強による所が大きいのではないかと思います。議員にもよりますが、議会でなされる質問を見ていると、議員の政策に関する知識は、政治記者など圧倒的に凌駕しているのがよくわかります。

新聞やテレビでは、尺に合わないような複雑な背景を持った議論もあり、取り上げにくいことは確かでしょう。でも、議会の質疑や質問主意書はもう少し報道されてもいいと思います。

そして、議会の場で議論したことによって、予算や法案が修正されることがもっともっとあっていい(実際にどれくらいあるのか、現状認識がちょっとないのですが)。

つまり、「法案は提出されたら終わり」ではなく、提出されたものに対して、それが可決される方向に向かって、与野党ともに知恵を出し合い、間違いを指摘しあうべきなのです。与野党が連立してはいけないというのは、そういう意味からなんです。

「連立すれば協力できる」「対決しては審議が進まない」ではなくて、与野党ともに、国益とは何なのか、何を犠牲にして何を守るのか、そこを明確にしながらきちんと対峙して時に修正しながら可決すればいいのです。

最終的には与野党の価値観の違いが決裂を招くこともあるでしょう。そこで強行採決というシーンも仕方ない。でも、そこまで議論を詰めていけば、少なくとも「全然納得行かないものができ上がった」とはならないはずです。

野党が指摘した問題点をあとで検証することもできるんだし、報道はそういうことに目を向けて取材を重ねればいいでしょう。

国会議員が「見えないところで仕事してんですよ」 などと偉そうなことを言って、国会質問にも立たずに「地元に予算を持ってきました」というような政治家はもういらない。質問が下手なら政策や社会状況の調査をするとか、法案を書くとか、そうした地味な仕事を「見えないところの仕事」にしてくれればいい。

国会議員は国会議員の仕事をしてくれればいいんです。「被災地を見てこい」という人も非常に多いが、それは社会状況の調査として政策立案に活かすためには非常に重要だけれども、汗を流してくればいいというものではない。国会議員は法律を通してなんぼの世界ですから。

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