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- 2011年06月20日 18:00
【SPEEDIデータ隠蔽】菅政権はここでも法を無視、国家賠償ものだろう
1/2見られる人は是非、上に貼り付けた国会質疑を見てください。いま現在、原発の影響による一般人の深刻な放射線被曝はないと思われますが、事故直後の被曝予測データは結果的に隠蔽されていたことになります。
森まさこ議員の質問の要旨は以下のとおりです。3月12日のベント及び爆発事故を想定したSPEEDIの予測データについて、
1.SPEEDIを使った放射性物質の拡散予測は存在した。
2.SPEEDIによる予測データは文科省ないし保安院の指示を受けて作成された。
3.しかしそのデータは国民はもちろんのこと、地元首長や消防庁にすら伝わっていない。
4.政府はIAEAへの報告の中で「SPEEDIが活用できなかった」というが、機能していたにもかかわらず隠蔽したのが事実ではないか。
1.に対して、文科省答弁は「停電等により現地データがない中で、あくまでも一定の条件を入れて計算したものにすぎない。内部資料として参考にしていた」。
しかし森議員は災害対策基本法において、現地データのない事態は想定済みであり、その場合にSPEEDIのデータは公開することになっていると指摘しました。
念のため、防災基本計画を確認してみましょう。内閣府、防災基本計画のページにリンクされたPDF の270ページにありました。(太字筆者)
国[文部科学省]は、特定事象発生の通報を受けた場合、直ちにSPEEDIネットワークシステムを緊急時モードとして、放射能影響予測等を実施し、安全規制担当省庁、関係都道府県の端末に転送するとともに、関係省庁の迅速な応急対策の実施に資するため、予測結果を関係省庁に伝達するものとする。
データを「端末に転送する」というのですから、内部で吟味するような参考資料ではないわけです。
防災基本計画だけで400ページを超すもので、これに基づいた規則や法令がまたおそらくわんさかあるのでしょうが、ひとつひとつはだいたい常識的なことが書いてあるようです。
おそらく「やれるべきことは全部やれ」「非常識なことはするな」で貫かれているんだと思います。SPEEDIについても別に難しい話ではなく、関係機関には速報することになっているわけです。
2.の指摘部分まではきちんとマニュアル通りの対応をしていたのに、どうして3.のところでつまづいたのか・・・官邸内で何かあった、と思わざるを得ません。
このデータ自体が災害対策本部長たる総理大臣にも、副本部長たる海江田大臣にも伝わっていなかったというのですが、ちょっと信じがたい。保安院も文科省もSPEEDIによる予測を指示しておきながら、その結果をトップに知らせずに握りつぶしていたとしたらその人は「死刑」でしょう。この判断には役人ではなく政治家(@首相周辺)が絶対にかんでいるはずです。
何度も言いますが、想定外の津波に対して迅速にリカバーするシステムすら構築できていなかったのは自民党の責任です。しかし、その自民党が用意してきたマニュアルを踏みにじり、被害を大きくしているのは菅直人とその取り巻きの責任です。
マニュアル通りにやらなくても、良い結果が出せるのならばそれが政治であり、私はいちゃもんを付けるつもりはありません。しかし、マニュアル無視で結果を悪くしているのだから問題外です。
4.の指摘についても、自民党議員が怒るのは理解できます。
自民党時代に用意したシステムはかなり正確に作動していたにもかかわらず、それを「政治判断」で握りつぶしておきながら、SPEEDIが使い物にならなかったように言われるのは心外でしょう。
原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書−東京電力福島原子力発電所の事故について−(首相官邸HP)によると、(太字筆者)
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)については、放出源情報を得ることができずに大気中の放射性物質の濃度等の変化を定量的に予測するという本来の機能を発揮できなかった。様々な形で補完的に活用されたが、その活用の体制や公表のあり方にも課題を残した。
森議員がフリップにまとめていたように、実際にSPEEDIが行った演算と報告データは、後からの調査でかなり正確だったことが判明したわけです。それなのにこの報告書では、自民党が残してくれたSPEEDIが役に立たなかったというのですから、見事な「ジミンガー」です。
こんな報告書を作成しておきながら、政府はSPEEDIが正しかったというデータを明らかにしているのだから、世界の研究者の物笑いの種になるでしょう。
やはりどんなに公平に見ようとしても、菅政権はあらゆる自民党政権以下です。官邸における実務経験者(みんなの党の小野次郎議員など)に聞けばわかるはずですが、こういうことが起きるのは、間違いなく菅直人個人の資質の影響だと思います。
【追記】
1〜3にいたる森議員の指摘をビデオで見なおしてみたら、一部誤解していることに気づいたので、追記・訂正します。
IAEAへの報告書にも、SPEEDIが正確に運用できなかったのはERSSによる放出源(つまり原子炉)の情報が上がってなかったからだ、という言い訳が書いてありました(以下、太字はいずれも筆者)。
SPEEDI は、原子炉施設から伝送される放射線モニタリングデータから成る放出源情報や気象庁から提供される気象条件及び地形データを入力として、予測計算を行うものであるが、今回は ERSS を通じて放出源情報を得ることができなかったため、大気中の放射性物質の濃度や空間線量率の変化を定量的に予測するという本来の機能を活用することができなかった。
(IAEA閣僚会議に対する報告書>原子力災害への対応)より
つまり、「SPEEDIは、放出源の情報がなければ外部に公表できる正確なデータが作れない」と言っているのですね。
では、これに対して原子力安全委員会の指針集から7:環境放射線モニタリング指針を引用してみましょう。
ここでは緊急時モニタリングの種別として、(1)第1段階モニタリングと(2)第2段階モニタリングを定めています。
(1) 第1段階モニタリング
第1段階モニタリングは、原子力緊急事態の発生直後から速やかに開始されるべきものであり、この結果は、放出源の情報、気象情報及びSPEEDIネットワークシステム等から得られる情報とともに、予測線量の推定に用いられ、これに基づいて防護対策に関する判断がなされることとなる。したがってこの段階においては何よりも迅速性が必要であり、第2段階で行われる測定ほど精度は要求されない。
第1段階モニタリングは、原子力緊急事態の発生直後から速やかに開始されるべきものであり、この結果は、放出源の情報、気象情報及びSPEEDIネットワークシステム等から得られる情報とともに、予測線量の推定に用いられ、これに基づいて防護対策に関する判断がなされることとなる。したがってこの段階においては何よりも迅速性が必要であり、第2段階で行われる測定ほど精度は要求されない。
(2) 第2段階モニタリング
第2段階モニタリングは、事故状態の予測が確実になり、放射性物質又は放射線の放出が減少してきた段階において開始される。同モニタリングについては、第1段階モニタリングで要求される迅速性より正確さが必要となり、周辺住民等の実際の線量の評価と環境中に放出された放射性物質又は放射線の状況の把握に必要な情報の収集活動を行う。
第2段階モニタリングは、事故状態の予測が確実になり、放射性物質又は放射線の放出が減少してきた段階において開始される。同モニタリングについては、第1段階モニタリングで要求される迅速性より正確さが必要となり、周辺住民等の実際の線量の評価と環境中に放出された放射性物質又は放射線の状況の把握に必要な情報の収集活動を行う。
第1段階では迅速性、第2段階では正確さが大事、ということですね。そして、第1段階モニタリングのやり方として、以下のような記述があります。
緊急時には、放出源情報を迅速かつ正確に入手する必要があるが、場合によっては、放出源情報を仮定して計算を行うこともある。
そしてさらに、SPEEDIシステムの機能不全も想定して以下のような記述まであります。
事故時においては(略)ある程度の時間的余裕がある場合とない場合が考えられるが、SPEEDIネットワークシステムによるオンラインの計算結果が入手できない場合には、簡易計算法における大気拡散式に基づいた計算結果を透明プラスチック板に図示したものから分布図を作成する
ERSSが機能しない場合には、予測される定数をSPEEDIにぶち込んで計算して構わない、そのSPEEDIの計算が上がらないときは、手計算で予測分布図を作って構わない、となっているわけです。



