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南シナ海で中国に対抗へ鍵を握る3国 - 岡崎研究所

 豪戦略政策研究所(ASPI)のロング研究員が、同研究所ブログStrategist の7月25日付記事で、仲裁裁判所の判決で面子を潰された中国は、南シナ海における主導権の回復を目指しているので、ASEAN全体が結束できないまでも、フィリピン、インドネシア、マレーシアが協力関係を強化することが有益である、と論じています。要旨次の通り。

 7月12日の仲裁裁判所の判決は、中国が主張する「九段線」を認めず、フィリピンに有利なものとなったが、中国は判決を拒絶し、「南シナ海における主権を守るためのあらゆる措置をとる」と言明している。東南アジア諸国が対抗するのは容易でない。自国の主権を護る能力が限られ、中国と対決する意志も動揺しがちだからである。

 東南アジア諸国が国際法にも適いレッドラインも踏まえた統一路線を執ることが出来れば理想的だが、このような路線は、フィリピンのドゥテルテ大統領にとっては特に困難な挑戦となる。中国との関係を「リセット」するとの方針を維持するか、最大の貿易相手国である中国と対決するか、選択を迫られるからである。フィリピンの対応は、中国と意見が違う場合の対応の先例となる。

 インドネシアも中国との間に国境問題は存在しないとの立場を判決で認められたことになるが、中国漁民の排他的経済水域への侵入や、中国艦船による漁民保護がやむわけではない。近年、インドネシアは自国の水域での中国の行動への対抗を強化している。ナツナ諸島沖の水域での海洋権益を主張する中国外務省声明を強く批判し、ジョコウィ大統領が同諸島を訪問するなどしている。判決の後、リャミザルド国防大臣は、ナツナ諸島周辺に軍艦、ジェット戦闘機、地対空ミサイル、無人機を配備し、港湾施設を建設すると発表した。

 ASEANの事実上の指導国であるインドネシアにとっては、将来の中国による領域侵害に対抗する先例ともなり得る地域的対応を奨励することが課題となっている。ASEANが結束して南シナ海におけるASEAN=中国の行動規範を仕上げることが出来れば、地域の緊張緩和と海洋の安全保障の将来にとって良い前例となるが、ASEANのように多様で中国との経済依存度も大きく異なる諸国のグループが結束を保つことは難しい。

 伝統的に非同盟政策をとり南シナ海で領有権を主張していないインドネシアが、ASEANの結束を図るための主導権をとるべき理由はない。しかし、ASEANが領土紛争解決の場として役立たないとすれば、インドネシアが信頼と協調を築くための新たな形の防衛外交の枠組みに近隣諸国の参加を求めることはあり得る。具体案としては、インドネシア、マレーシア、フィリピンによるスールー海とセレベス海の合同パトロール構想の実現が考えられる。

 ASEANの政策決定者たちは、領土要求の有無にかかわらず、今回の判決が与えた自信を生かして、自国の主権を守るルールに基づく秩序を築くために活用すべきである。

出典:Amelia Long ,‘After arbitration: enforcing the rules in Southeast Asia’(ASPI Strategist, July 25, 2016)
http://www.aspistrategist.org.au/arbitration-enforcing-rules-southeast-asia/

精いっぱいの努力

 先般の仲裁裁判の判決が中国外交にとって大きな痛手であったことは疑いありません。中国は懸命な外交努力の結果、7月25日に発表されたASEAN外相会議の共同声明では、この判決に直接言及することを阻止することに成功しました。中国としては失点挽回のために精いっぱいの努力をしたということでしょう。

 しかし、判決が最終的なものであることに変わりはありません。今後、中国が埋め立てや人工島の造成・軍事化を進めれば、国際的批判が更に高まることは確実です。中国は9月に杭州市で開催される予定のG20首脳会議を控え、当面は南シナ海における過激な行動を控える可能性もあります。

 7月25日の人民日報は、ライス米大統領補佐官と会談した習近平主席が笑顔で握手を交わす模様を大きく報じ、同主席が「中国は国際秩序に挑戦する意図はない」と述べ、南シナ海については「互いの核心的利益を尊重すべきだ」と述べた、と報じています。

 なお、インドネシア、マレーシア、フィリピンがスールー海、セレベス海で共同パトロールを実施するとの構想は、実現できれば極めて有益でしょう。中国の南シナ海における高圧的行動を声高に非難するだけでなく、沿岸国が自らの海洋管理能力を高めることが不可欠だからです。

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