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全国各地で大乱立「ゴージャスMICE施設」は必要か? - WEDGE編集部(浅野有紀、伊藤 悟),木下斉 (一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事)

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WEDGE編集部(浅野有紀、伊藤 悟),木下斉 (一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事)

 「日本再興戦略」にて訪日外国人数拡大の重要ツールとして位置づけられた「MICE」。その名のもとに、多くの地方自治体で巨大施設の建設計画が進められている─。

 福岡空港から車を走らせること約50分。久留米市の中心市街地にその巨大な施設は現れた。「久留米シティプラザ」という名のその施設は、「積極的にMICEを誘致し、久留米ならではの賑わいと文化、価値を、市民とともに創造・発信する場」(同施設パンフレットより)として、178億5000万円をかけて建設され、今年の4月に開館した。

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久留米市の中心市街地にそびえ立つ、総額178億5000万円をかけて建設された「久留米シティプラザ」(写真・Wedge)

 MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字をとった単語であり、多くの集客が見込まれるビジネスイベントなどを指す。訪日外国人数の拡大を図るべく政府が誘致を推進する肝いりのプロジェクトだ。

 久留米シティプラザに足を踏み入れると、大きなガラスの壁面から陽の光が差し込む快適な空間が広がっていた。施設内を歩いて回ると、約1500人を収容できる4階層の多機能ホールや300人以上を収容できる会議室、約430平方メートルの展示室など、大規模で多機能な会場を備えていた。取材班が訪れた日は、大きなイベントがないこともあり、施設内は閑散としていた。外は35度を超す暑さだったこともあり、高齢者数人が歓談スペースに設置されたイスに腰かけ、涼みながらお茶を飲んでいる姿が目立った。

 この巨大施設を巡っては、地元でも批判の声が出ている。「既存の市民会館を改修すれば20~30年は使えるのに、シティプラザ建設ありきで話が進んでいました。もちろん市民会館よりランニングコストもかかります」と、シティプラザ建設に反対していた久留米市民は話す。2005年の久留米市と周辺4市町村との合併により発生した合併特例債の使用期限が迫っていたことも、建設を焦った理由の一つだと指摘する。

 これだけ巨大な施設が本当に必要なのか。久留米市でMICE誘致を行っている久留米観光コンベンション国際交流協会の辻文孝常務理事と池脇順一誘致担当課長に話を聞いた。

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約1500人を収容できる最新鋭の多機能ホール
(写真・Wedge)

 久留米シティプラザにおける今後の誘致状況について聞くと、16年から18年までの3年間で予定されている国際会議の数はわずか3件だという。国内の会議等を含めると、学会22件、大会3件の計25件であり、このうち、2000人を超える規模のものが4件、1000人~2000人のものが8件、1000人未満のものが13件とのことであった。

 3年間で25件ということは、単純計算で1年あたり8件程度ということになる。これは学会、大会のみの数であるため、他にも集客数を増やす催しもあるだろうが、178億5000万円もの巨額投資をした施設にしては低調な滑り出しだ。

 「MICE誘致は周辺自治体との勝負でもあり、今後ますます厳しくなる。一度久留米に来た人たちに良かったと感じてもらえなければ利用者数は減少していく。最初の3年間が勝負だ」と誘致を担当する池脇氏は意気込む。

 MICEの誘致や運営等を手掛ける業界大手・コングレの武内紀子社長も「国際会議の数自体はそこまで増えていない。最近では、国をあげて誘致をしないと、海外からの集客は厳しい」と指摘する。

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久留米シティプラザのエントランス。ガラス貼りの壁面から、燦々と陽が差し込む(写真・Wedge)

議論噴出する長崎駅西側の巨大施設建設計画

 「長崎駅前に第二の軍艦島がつくられようとしています。いや、軍艦島はもともと稼いでいたことを考えると、軍艦島に失礼かもしれないですね」

 生まれも育ちも長崎市内という長崎市民はそう嘆く。軍艦島とは長崎市の沖合に浮かぶ端島のことで、昨年7月に世界文化遺産に登録された炭鉱の島だ。1974年に閉山し、現在は巨大な廃墟の島として知られている。

 長崎駅前を訪れると、駅の西側に広がる巨大な空き地が目に飛び込んできた。現在、一部が駐車場として利用されているその場所は、長崎市がJR貨物から約68億円で購入し、巨大な複合施設の建設を予定している場所であるが、その用地は長崎市が紆余曲折を経て購入した経緯がある。

 購入にあたっては、田上富久長崎市長が中心となり、「MICEを念頭においた」交流拠点施設用地の取得という目的で予算案を市議会に提出したが、「現時点ではMICE事業による経済波及効果がはっきり見えない」、「市民が納得するような十分な説明がなされていない」などの理由により、14年9月の議会で否決された。

 しかしその後、同年11月の市議会にて、「MICE施設に関わらず」将来の利活用について十分検討するとした条件付きで、予算案が可決された。この間、市長自ら市内の35カ所で市民説明会を行ったが、「市長自ら先頭に立って説明することは異例」と前出の長崎市民は話す。施設建設に対する市長の強いこだわりが感じられる。

 こうした「こだわり」の謎を解き明かすため、長崎市長に取材を申し込んだが、業務で時間がとれないことを理由に断られてしまった。質問状への回答も難しいということであった。代わりに長崎市のMICE事業担当部署である文化観光部交流拡大推進室の牧島昌博室長に取材を行った。

 「まだ事業が決定したわけではないので、何とも言えないですが」と前置きしたうえで、「現在の施設は、稼働率こそ高いものの、3000人規模の学会などになると収容人数の関係で取り逃しているのが現状です。駅西側エリアの土地は購入したので、今後そこにどのような施設をつくるのか決めていく予定です」。

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