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ここにこそ活路がある―参院選の結果と野党共闘の成果(その2)

〔以下の論攷は、『月刊 全労連』9月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

2、野党共闘はどのような成果を上げたのか

成果は議席増だけではなかった

 自民党の完勝を阻んだのは、野党共闘の力であった。野党は32ある1人区で統一候補を擁立して自民党と対峙した。これまでは野党同士の競合もあって自民党が「漁夫の利」を得ることがあったが、今回はこのような形での「取りこぼし」は生じなかった。

 その結果、野党の統一候補は11の選挙区で当選し、11勝21敗という戦績を残した。まだ「負け越し」てはいるが、3年前の2勝29敗という成績からすれば、勝率が5倍を超える大きな前進であった。しかも、福島と沖縄では現職の大臣を落選させた。当選には至らなくても、あと一歩という接戦・激戦となった選挙区も現れた。

 その結果、比例代表での野党各党の得票を上回る形で、統一候補の得票が大きく伸びた。この伸びが最も大きかったのは山形で1.71倍、次いで愛媛が1.66倍、長崎1.40倍、沖縄1.40倍、福井1.38倍、岡山1.36倍などとなっている。このうち、山形、沖縄では議席を獲得した。このような形で得票増の効果があったのは、32の1人区のうち28選挙区に上る。

 接戦・激戦となった効果はこれだけではなかった。「勝てるかもしれない」ということで野党陣営の選挙活動が活発化し、有権者の関心も高まり、投票率がアップした。激戦となった青森は9ポイントも上昇し、26の1人区で投票率アップの効果が生じている。

共闘に加わった各党にも効果があった

 野党共闘の効果は統一候補が立った1人区だけで生じたのではない。アベ政治に対する批判の受け皿づくりに加わった各党も、自民党と対峙する構図を作ったことで野党としての信頼を得て有権者から一定の評価を受けたように思われる。

 民進党は改選議席の43を大きく割り込んで32議席となったが、3年前の前回の17議席から、ほぼ倍増した。7月8日付『朝日新聞』の推計よりも2議席多い結果で、最終盤で勢いを増したことが分かる。野党共闘によって一定のイメージ・チェンジに成功し、3年前の「どん底」を脱することができたのではないか。

 社民党は改選2議席を維持することができず1議席減となった。それでも比例代表では28万票増となって前回の1議席は維持した。

 なかでも、生活の党は共闘の恩恵を大いに受ける結果となった。1人区では野党統一候補として岩手と新潟で党籍のある候補が当選している。また、比例代表でも、事前の予想を覆して1議席を獲得した。小沢一郎と山本太郎の共同代表は安保法制反対運動や野党共闘の実現で大きな役割を演じたことが評価され、報われた形になったと言える。

共産党は倍増したが前回に及ばなかった

 このようななかで、共産党の獲得議席をどう見たらよいのだろうか。共産党は改選議席3から6に倍増し、比例代表での得票も3年前の前回より86万増の601万票となり、1998年の820万票に次ぐ2番目の高みに到達するという成果を上げた、しかし、前回の8議席には及ばず、『朝日新聞』7月8日付の事前の推計から1議席減となった。途中で失速し、3年前の議席にも、それ以上に伸ばすと見られていた予想の議席にも届かなかった。

 途中での失速ということで考えられるのは、藤野政策委員会責任者による自衛隊についての「人を殺すための予算」という発言である。これについては慎重な検証が必要だが、自衛隊予算についてのこの発言は共産党の方針に反しており、藤野氏も責任を取って辞任した。

 しかし、執拗な反共宣伝の材料の一つとして利用され、有権者に一定の影響を与えたことは想像に難くない。選挙期間中、北朝鮮のミサイル発射が相次ぎ、中国海軍の接続水域への侵入など不穏な動きが報じられたから、なおさらである。

 この藤野発言問題の背景には、自衛隊が持っている「戦闘部隊」としての性格と災害救助隊としての性格という2面性や、この間の東北大震災や熊本地震での活動から後者の性格への評価が強まっているという変化がある。しかも、戦争法の成立によって「専守防衛」の「自衛」隊から米軍などの「後方支援」も可能な「外征」軍への変質が生じ、これへの批判を強めるなかで自衛のための戦闘部隊としての認知が高まっている。これらを踏まえて、今後、自衛隊の役割とその位置づけについての政策的精緻化が必要となろう。

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