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ここにこそ活路がある―参院選の結果と野党共闘の成果(その1)

 天下分け目の合戦として注目されていた参院選である。歴史の分水嶺という見方もあった。選挙の結果、改憲勢力が3分の2の発議可能議席を獲得したから、改憲の「危険水域」に入ったことは明らかだ。
 参院選では、「9年目のジンクス」と言われる現象があった。1989年から9年ごとに、参院選で自民党が大敗して首相が辞任するということが繰り返されてきたからだ。しかし、この「9年目のジンクス」は今回、不発に終わった。
 とはいえ、これまでにない新しい光と可能性が見えてきた参院選でもあった。国政選挙で初めて市民と野党との共闘が実現したからだ。その力が実証されたことが今回の選挙での最大の成果だったと言える。

1、与党は勝ったのか


 勝ちはしたが完勝ではなかった

 7月10日投開票の参院選で121人の議員が決まった。その内訳は、自民56、民進32、公明14、共産6、維新7、社民1、生活1、無所属4というものだった。自民党と公明党の与党で改選61議席を突破して70議席となった。安倍首相が掲げていた目標を超えたのだから、勝利したことは明らかである。
 しかし、自民党がめざしていたもう一つの目標である単独過半数には2議席足りなかった。したがって、完勝したわけではない。開票途中に、無所属で当選した中西健治議員を追加公認したが、それでも1人足りない。そこで、選挙が終わってから無所属の参院議員だった平野元復興相を口説いて入党させ、27年ぶりに単独過半数を回復した。
 この参院選の結果、改憲勢力が参院での改憲発議可能な3分の2を突破したことも注目された。これを阻止するとの目標を掲げていた民進・共産・社民・生活の立憲野党4党からすれば敗北である。しかし、この「改憲勢力」は自民・公明・おおさか維新・日本のこころという改憲4党に無所属の議席を加えたものである。「改憲」とは言っても、その内容はバラバラで9条改憲を意味しているわけではない。
 さらに、自民党の議席は3年前の前回2013年参院選に比べれば9議席減っている。比例代表では1増となったものの、選挙区では10減だったからだ。
自民党の議席は12年総選挙と13年参院選がピークで、その後の14年衆院選では2減となっていた。そして、今回の16年参院で9減となった。歴史的に見れば、自民党の党勢は下り坂にあることが分かる。

 与党勝利の要因と背景

 それなのに与党が余裕をもって勝てたのは公明党のお陰であった。公明党は改選議席より5増やして14議席となったが、3年前の前回参院選との比較では3議席増である。定数増となった愛知・兵庫・福岡で新たに候補者を立てて当選させたが、比例代表での当選は前回同様の7議席で得票もほぼ前回並みであった。公明党の議席増は、定数増の恩恵によるものだったと言える。
 おおさか維新の会も改選前より5議席増となった。今回から18歳選挙権が導入されたが、この議席増はその恩恵によるものだった。18歳と19歳を対象にした共同通信による事前のインターネット意識調査によれば、おおさか維新の会に対する支持は民進に次いで高く、公明党を0.2ポイント、共産党を0.6ポイント上回っていた。
 このように、全体としてみれば、自民党、公明党、大阪維新が支持されたことになる。しかし、「評価する」が39%(『読売新聞』6月23日付け)しかなく、「見直すべきだ」が61%(『毎日新聞』6月20日付)もあったように、有権者はかならずしもアベノミクスを支持したわけではなく、野党に魅力を感じなかったのである。
 欧米諸国が既成政治への不信感の高まりによって変容に直面しているのと比べれば大きな違いがある。それは政治不信を高める要因となっている移民問題が政治的な争点とならず、逆に北朝鮮や中国の動向など国民の不安を高めるような周辺環境が存在しているからだ。中国経済が不振で世界経済が不透明になっているもとで国民の不安感が増したため、安定と安心を求める心理が強まったのではないだろうか。
 いまだ民主党政権時代の「暗く停滞した時代」のトラウマから抜け切れていない有権者は、「あの時代に戻っても良いのか」と脅す安倍首相の言葉にひるんでしまい、「もうしばらく様子を見ようか」という気持ちになったのかもしれない。

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