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諮問的国民投票はありだが、天皇の生前退位(譲位)についての国民投票はちょっと無理

国民主権の下でも、象徴天皇の憲法上の位置付けについては基本的に皇室会議と国会の議決で決めるべき筋合いのもので、一般の国民がそう簡単に容喙できるような話ではないだろうな、というのが私の率直な感想である。

象徴天皇の国事行為や公的行為の在り方について行政の立場や国会の立場からあれこれ言うことは出来るだろうが、象徴天皇のもっとも大事なお役目が国民のために祈ること、国家のために祈ることにあるのだとしたら、祈られる私たちがあれこれ口を出すことは憚られる。

憲法改正手続きの一環としての国民投票制度の外に、国政の重要な課題、国民の間で意見が大きく分かれ、容易に決着できないような国民の重要な関心事項について国民投票で国民の声を聞いてみる、という諮問的な国民投票があってもいいとは思うが、天皇の生前退位(譲位)制度について国民の声をどの程度聞いた方がいいのか、いや聞くべきか、ということになると、私はいささか消極にならざるを得ない。

国民投票で国民の声を聞かないでも国民がどんな意見を持っているか知るための適当な方法が別にあるだろう、国民投票の実施のために巨額の国費を使うことにどれだけの意味があるだろうか、ということの外に、その国民投票にはどれだけの拘束力があるのか、という問題がある。

何の拘束力もない、ということになったら、そんな無駄なことを、ということになるだろうし、いやいや事実上の拘束力があるということになったら、それは憲法違反だろうということになる。

イギリスのEU離脱についての国民投票などしなければよかったのに、と思っているが、イギリスの場合は国民投票をしなければならないほど政治家が追い詰められていたのだと思う。
イギリスの国家として、EUからの離脱の可否については国民投票に委ねるしかない、国民投票で示された国民の声に従うのが最もいい、というコンセンサスがイギリスの国民の間に成立していたのだと思う。

日本の場合は、そこまでの切迫した事情はない。
天皇の生前退位(譲位)を認めるか認めないかで一般の国民の生活が大きく左右されるようなこともない。

国民や国家のために祈る存在である象徴天皇の役割をどなたが引き受けられても一般の私たちにはあまり関係がない。
それこそ、皇室会議や国会で決めていただいて結構だ、ということになる。

死刑制度の廃止の可否などは諮問的国民投票になじむだろうが、天皇の生前退位(譲位)についてはどうも国民投票はなじまないな、というのが私の感想である。

「動態的憲法研究」という書物の共同執筆者である南部義典氏の貴重なご提言だが、あえて異論を申し上げておく。

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