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- 2016年08月24日 13:27
RIO閉会式で日本文化を知らしめたのは安倍ではなくMARIO
2/2アベマリオの対外訴求力は「安倍」でなく「首相」にある。
これをオーソライズするのが首相・安倍晋三をマリオにしてしまうことに他ならない。「みなさんご存じの日本のキャラクターたちを、よろしくね」と国家の首相がそれに扮してやってしまえば、それこそ、「この文化はお墨付き」ということになる。そして、こうやって日本を紹介することで、東京オリンピックが「本気である」というメッセージを十分に伝えることができる(ここで、本当に本気であるかどうかは問わない。メディアの効果として、少なくとも受け手にはそう映るとご理解いただきたい)。安倍が登場したことに批判を加える論客たちのモノノイイは「安倍はオリンピックを利用して自己顕示を行っている」的なものが多いが、これは的を射ていない(仮に本人がそのつもりであったとしても、実は自己顕示としての効果は薄い)。聴衆(スタジアム、テレビ視聴者)が見ているのは「首相安倍晋三」のうちの「首相」の方であって「安倍晋三」ではないからだ。「僕らのヒーローを生んだのが日本という国の文化で、今、それを日本の『首相という権威』が認めている」。こうなると、これらキャラで育ってきた世界中の人間たちが日本という国・文化にインティマシーを感じることになる。「日本って、すごいじゃん!オレたちのこと、よくわかってるじゃん」となるのだ。その一方で「アベ」の名前なんかすぐに忘れるはずだ(まあ本来の効果を考えれば、それで十分なんだけれど)。そして、この目論見は見事に成功した。スタジアムは熱狂し、たかが10分程度の日本紹介が閉会式のメインどころを持って行ってしまったのだから。アニメ・ゲームキャラ=日本文化として認知させた点で、日本文化の世界へのアピールは絶大だったといえるだろう。
日本人のアイデンティティをくすぐる?
今回の企画、サブカルチャーと呼ばれていたマンガ・アニメ・ゲームがもはや日本文化の本丸になったことを印象づけたことは確かだろう。かつて、消費文化の権化、典型的なくだらない低レベルな存在と蔑まれ、しばし排斥されてきたマンガ・アニメ・ゲーム。つまり「文化でも何でもない」と一蹴されていた。一方、これまで戦後日本は著しい経済復興を遂げ、世界レベルに達することができたが、「経済やテクノロジーはよいけれど文化発信力に欠けている」と常々指摘されてきた。そこで音楽や芸術の側面で世界に匹敵しようといろいろ努力したけれど、まあことごとくダメだった。その傍らで政府がテコ入れしたわけでもないマンガ・アニメ・ゲームが「日本の文化」として認められることもなく世界にジワジワと定着していった。それが、今や国家を支える重要な文化的なコンテンツとして認められることになったのだ。「世界に誇る日本文化がここにある。だから胸を張ってよい」というふうに、多くの日本人(60歳以下)には映ったはずだ。それが日本国内に向けての効果,つまり「日本人が、自分が日本国民であることの認知」だろう。これもマンガ・アニメ・ゲーム文化をメディア=媒介にして日本文化を国内に認知させたということになる。(もっとも、これがそのまま国威発揚に繋がると短絡するのはあまりに脳天気すぎるが。事はそう単純には行かないだろう。これを見て安倍がヒトラー的と懸念するメディアもあったが(恐らくベルリン・オリンピックをイメージしているのだろう)、ちょっと軽率すぎる解釈。時代も状況も全然違うんだから)。たしかにそうだ。もはやマンガ・アニメ・ゲームは世界中を席巻している。先月初旬、ロサンゼルスでアニメEXPO2016が開催されたが、四日間の開催中の入場者は26万人に達している。そこにはキャラクターはもちろん、日本語もあちこちに見ることができた。日本の文化の勝利といっても過言ではないほどに。
しかし、これもまたちょっと違うのである。アメリカのこういった日本発のオタク文化はクレオール化、ローカライズ化され、もう日本のとはちょっと違ったものになっている。アメリカ人がピザやパスタ、寿司を日常としているのと同じだ。これらはいずれもオリジナルとはちょっと違っている。だからこそ、それが生まれたところなどには関心がないということになるわけで。こっちはこっちで勝手に普及する。だから、まあ日本の文化が広がったことをうれしく思うのはよろしいけれど、メディアが執拗に喧伝するような、さながら「日本の文化が世界を制覇した(笑)」的なモノノイイは無視した方がいいだろう。
いずれにしても、このショーが日本文化を内外に知らしめることについては大いに貢献したということは認めるべきだ。ちなみに、それがよいことなのか悪いことなのかについてはここでは議論しない。そして、オリンピックは国家ではなく都市が開催するのが原則。でもどこでも国策みたいにやっているということも念頭に置いておいた方がよいだろう。
この演出は、メディアの効果としては傑作なのである!



