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バックチャンネル

8月14日に中国人民解放軍の陳炳徳総参謀長がイスラエルを訪問し、ベニー・ガンツ参謀総長と両軍の協力について協議したそうです。イスラエルは以前、中国にアメリカのF−16がベースとされているラビ戦闘機の技術を提供し、中国のJ-10(殲撃十型)戦闘機の開発に手を貸したとされています。当時はアメリカの反発もありイスラエルは中国から手を引いたようなのですが、ここ数年、イスラエルの対中兵器輸出の勢いは凄く、中国の兵器市場ではロシアに次いで二番目の地位を確保するまでになっています。
 
もちろんイスラエルの最新軍事技術の多くはアメリカからの流用でありますし、アメリカがこの状況を傍観しているとは思えないのですが、今年の5月に陳炳徳総参謀長はアメリカも訪問しています。穿った見方をすればアメリカは中国との関係を改善し、イスラエルと中国の関係を黙認している、すなわち兵器市場では米中イスラエルのトライアングルが形成されつつあるのかもしれません。
 
インテリジェンスの分野ではバックチャンネルという言葉がありまして、これは国家間の外交や軍事関係が良好になる前には、インテリジェンスという裏口を通じて政府間の意思調整が行われるというものです。例えば1977年、イスラエルは宿敵エジプトと和平条約を結ぶためにまずは両国の情報機関を通じてお互いの意思疎通を図ることから始めました。また最近では2003年、リビアが核放棄を決断した際、まずリビア政府が接触したのはイギリスの情報機関でした。情報組織がバックチャンネルとして利用されるのは、内密に事を進めることができるということであり、敵同士や国交のない国、要は外交関係のない相手に対しても情報機関であればアプローチが可能ということになります。また大抵の国では対外情報機関は政治指導者に直結していますから、その点でも都合が良いわけです。
 
このように考えると、イスラエルの情報機関と中国の情報機関、そしてアメリカの情報機関の間では思惑はそれぞれあるにせよ、既にある程度のインテリジェンス関係が構築されているのだと思います。これが我が国の安全保障問題にどのように影響を与えることになるのかはまだ何とも言えないのですが、少なくとも注視していく必要性はあるのではないでしょうか。
 
それに比べると我が国は対外情報機関もなく、また外務省による外交の一元化が原則とされているため、このようなバックチャンネルを通じた調整というものができないわけであります。対外情報機関には情報収集や秘密工作以外にも国際関係の裏の関係を調整する役割があるのです。

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