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FRB内の意見交錯、議長のジャクソンホール講演に注目集まる

 米カンザスシティー地区連銀が今週ワイオミング州ジャクソンホールで開く年次経済シンポジウムには、文字通りあらゆる関係者の目が向けられている。背景にそびえる雄大な山脈に失望することはないだろうが、次回利上げを巡る大きな手掛かりが得られると期待しているならば、肩すかしにあう可能性もある。

 年次シンポジウムのヤマ場となるのは26日のイエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演だ。このところFRB当局者の論点は四方八方に散らばり、利上げ経路を巡って市場関係者をすっかり混乱させている。タカ派寄りもあればハト派寄りもあり、奇跡的にその両方に傾いてみせた当局者さえいる。UBSのアート・カシン氏は電子メールで、タカ派やハト派といった区分だけでなく、各派に属する当局者の見解にも矛盾が生じていると指摘。例えば「(サンフランシスコ地区連銀の)ウィリアムズ総裁は極めてハト派的な講演をした直後に早期の利上げを呼び掛けている」と述べた。

 カシン氏が挙げているのはウィリアムズ総裁が先週行った二つの講演だ。週初には、インフレ目標の廃止や長期にわたる過熱気味の物価上昇を許容し、必要ならばマイナス金利も認めることさえ含め、金融・財政政策の抜本的な「再考」について語った。多くはこれを、FRBの政策が効果を上げていないことを暗に認めたものと受け止めた。ところが同総裁は18日、景気が改善しており早期の利上げが正当化されると述べた。公正を期すために言えば、ウィリアムズ総裁は「再考」に言及した一週間前にも利上げを呼び掛けていた。だがそれも単に、FRBが透明性を掲げる時代にあって、当局者自らがその正確な意図の解明を難しくしていることを浮き彫りにするものだ。

 そこで関心はイエレン議長に向かうことになる。言うまでもなく、FRB講演者の中では議長が最重要人物であり、今週の議長講演は利上げを巡る綱引きの「同点決勝戦」とみなされている。ジャクソンホール会合はFRBの歴代議長が重要なメッセージを発する絶好の舞台と広くみられてきた。イエレン議長は昨年の会合を欠席したが今年は出席するため、先行きを占いたい向きは何かしら重要なことがあると期待している。もとより、何もないかもしれないのだが。

 バンクオブアメリカ・メリルリンチのエコノミスト、ミシェル・メイヤー氏はリポートで、「イエレン議長の講演で次回利上げ時期の大きな手掛かりがあるとは期待していない」と述べた。そればかりか、ウィリアムズ総裁が「再考」に触れた講演で挙げた「自然」利子率に関する議論など、いくつかのテーマについてイエレン議長も語るとみている(ウィリアムズ総裁は自然利子率を「アール・スター(r*)」と称していたので気に留めておくと良いだろう。今週もこの言葉を耳にするかもしれない)。これは基本的に市場に基づくインフレ率で、同総裁の試算によると米国では現在0%近辺となっている。重要なのは、その発表論文でウィリアムズ総裁が、現在の環境ではたとえ健全な経済であっても、この金利がほとんど上昇しないかもしれないと述べていることだ。つまり、FRBに行動する必要が生じたとしても、その時点での政策余地はこれまでより少ないということだ。こういうわけで、2%のインフレ目標廃止やマイナス金利が議論に上るのだ。

 メイヤー氏は「アール・スターが恒久的に低迷し、中銀のバランスシートが恒久的に膨張すると想定」し、イエレン議長が上記の議論を持ち出すと予想する。また、今年の会合テーマは「抵抗力ある金融政策の枠組み設計」だと指摘した。イエレン議長が何を言うかはもちろん予測不可能だが、議長に就任した際に自身の後任としてサンフランシスコ連銀総裁に就いたウィリアムズ総裁と考えが近いため、この二人の見解が一致するとみるのはあながち外れではない。

 とはいえメイヤー氏は、たとえ異様に思えるようなものであれこうした議論が注目されるということは、投資家に広義かつ具体的な視点を与えると指摘する。つまり「FRBの観点からすれば、利上げを後押しする短期的な指標と(中略)慎重を要する長期的な懸念とのバランスを取る必要がある。その結果、FRBの利上げ局面は極めて緩やかとなる」と説明した。

By PAUL VIGNA

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