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【7月、民主主義の死】

The Week Democracy Died(民主主義が死んだ週)というタイトルが衝撃的。オンラインメディアSlateにハーバード大学のYascha Mounk教授が書いた文章です。

7月11日に始まった週は、▼Brexitの選択を受けて英メイ首相の就任、▼仏ニースのテロ事件、▼トルコのクーデター未遂、▼米トランプ氏による副大統領候補の指名がありました。

わずか1週間に相次いだ出来事が官僚による統治の失敗ポピュリスト的な独裁者の台頭イスラム過激派によるテロという今の課題を象徴しているというのです。ヤシカ・マンク教授「ベルリンの壁崩壊に匹敵するほど短時間に世界に大きな影響をもたらした」と総括しています。

そして、トランプ候補らが移民排斥といった基本的人権を害するようなことを訴えても、それは国民の声であるため、Illiberal Democracy (自由民主主義ならぬ、非自由な民主主義。えせ民主主義とも)であり、世界に広がっている。一方、移民排斥はとんでもないと言いつつヌクヌク暮らしている政治家は、言っていることが正しくても国民とは疎遠で、国民の声が政策に反映されないという意味UndemocraticLiberalism (非民主的な自由)だと分析。
原文はかなり長いですが、こちらです(音声付き)。
http://www.slate.com/articles/news_and_politics/cover_story/2016/08/the_week_democracy_died_how_brexit_nice_turkey_and_trump_are_all_connected.html
要点はこんな感じ(全文の翻訳ではありません)。

7月11日にメイ氏がイギリス保守党党首に選出された。「EU離脱が決まったからには、離脱する」と述べて、残留派の望みを打ち砕き、13日に首相に就任。

フランス革命記念の14 、ニースで84人死亡のテロ事件が起き、直後に極右政党のマリー・ルペン党首がオランド大統領の無能ぶりを批判。テロの度に国民は一歩ずつ独裁を受け入れる衝動にかられる。かつては想像すらできなかったが、7月14日の恒例の大統領記者会見を来年、ルペンが行うことも考えられる。

15日、トルコのアンカラでエルドアン大統領を追放しようとクーデターが起きたが、未遂に終わり、大統領はクーデターを口実に反対派を徹底的に粛清。 

16日、トランプ氏が副大統領候補としてペンス氏を指名。しかし、紹介する際に自分の話に終始しエゴイズムを露呈。人口 3億の国にこうしたいじめっ子が登場すること自体は新しいことではないが、こんな筋の悪い候補にすら投票しようというくらい国民の不満が高まっていることは新しい。

トランプにしてもルペンにしても、イギリスのEU離脱派にしても共通点がある。過去 50年、民主主義国家では見たことがないほどの怒りを背景に台頭 し、一般の国民のために立ち上がると主張して、腐敗した政治エリートを駆逐し、宗教や人種の異なる人たちを追い出す と訴えていること。国民の意思に反するのであれば、司法の独立や報道の自由が不要だとしていることも。これが新しい政治体制=Illiberal Democracy (非自由な民主主義)だ。

トランプやルペンを「民主的でない」と批判するのはお門違いだ。というのは、現状や政治的な正しさ(politically incorrect) に反発を強めている国民の思いをある意味、民主的に反映しているからだ。

いまの構図はこうだ。トランプやルペンのIlliberal Democracy(非自由な民主主義)と、対する政治エリートによる Undemocratic Liberalism(非民主的な自由)
前者は権利なき民主主義(democracy without rights) 、後者は民主主義なき権利 (rights without democracy)を意味する。 仮に国民が求めているのが移民の権利の剥奪だとすれば、それは権利なき民主主義につながるものだが、政治エリートが国民の声を受け入れられないと、 国民の意思が政策に反映されず、民主主義なき権利となる。
どちらも行きつくところは独裁である。
米議会の議員は、裕福な白人のエリート層で一般のアメリカ人を代表していないし、経済政策は中央銀行のFRBのような独立した機関で決められ、国際機関が礎をつくる。その結果、一般の国民は民主的なプロセスから閉め出されていることに気づいている。

ヨーロッパでも、エリート層による欧州議会の官僚組織が力を持っていて、有権者の意見が政策に反映されない。選挙は実施されるものの、EUはいま やUndemocratic Liberalism(非民主的な自由)の象徴なのだ。

安定した民主国家ではかつて、国民の所得は順調に伸び、人種的に同質で、世界最強だった。しかし、アメリカではブッシュ元大統領(父)の頃から所得は実質的に伸びておらず、人種は多様化し、覇権は中国に脅かされている

アメリカ、イギリス、フランス、トルコでいま広がっているのがIlliberal Democracy(非自由な民主主義)である。

慣れは無関心につながる。あらゆる人が人種・信条・宗教にかかわらず基本的人権を持っていることはみな知っているが、あまりにそれが普通なので、その意味や素晴らしさを忘れがちだ。

トランプのような連中に対抗するには、自由民主主義の価値について説得力を持って説明し、闘わないといけない

危機感を抱いているのは、自由主義と民主主義、それに国民による統治と個人の権利を信じる人たちのはずだが、いまやすっかり身を潜めて防御一辺倒だ。価値ある自由民主主義を守りたいと思いつつ、行動できていない

テロリストともポピュリストとも闘うためには、自由民主主義を信じる者が立ち上がらないといけない。一般の国民が経済成長の果実を手に入れられるよう新たな経済政策を作らないといけない。

いま問われているのは、現在の政治秩序を維持できるかどうかではない。それはもう無理だ。自由主義と民主主義という貴重で脆弱な組み合わせを地球上から消せないためにどんな改革を実行するか。それが問われている。 (Harvard University)
Yascha Mounk (ヤシカ・マンク)は、1982年ドイツ・ミュンヘン生まれ。お会いして、直接お話を聞きたいと思いました(^ ^)

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