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2020年に向けた企業イメージに潔い誠実な選手の活用を(ベルニャエフ選手やダンフィー選手の功績)

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今朝の記事,「英国が愛するトム・デイリー(Tom Daley)選手と影に隠れても良いというグッドフェロー(Goodfellow)選手」では,日本メディアがあまり報じないイギリスのスター選手と彼のペアを組む謙虚な銅メダリストについて紹介した。予選1位の高得点で通過したデイリー選手だったが,準決勝では失敗が続いてしまい決勝には進めなかった。

前回大会銅メダリストで今大会ペアのシンクロでも銅メダルに輝いたイギリスのイケメン飛込み王子のまさかの事態にイギリスはショックを受けているようである。本人も「傷心しきっている(Truly heartbroken)」と述べている。

オリンピックには魔物が住んでいると良く聞くが,まさにその魔物がイギリスの期待の選手を襲ったのかもしれない。ただ,既に2020年の東京に向けて頑張るとの発言をインタビューでもしているようである。

さて,2020年の東京五輪に向け,多くの企業は五輪サポーターなどになり,企業イメージの向上のため日本で人気のある日本人選手を起用したCMが今後も多く流れるかもしれない。

しかし,日本は開催国である。

単に日本人アスリートが活躍し多くのメダルを獲得してほしいというだけでなく,多くの海外選手や海外からの観客を迎え入れる国家として,その企業も国際的なイメージ戦略を考えたCM起用が企業の先進的なイメージ戦略には重要であるのではなかろうか。

そこで,今朝の記事の続きであるこの記事では,私が考えるこの大会で最も日本人に注目され,今一番日本人の好感度が高いであろう海外トップアスリートに関する情報を紹介するとともに,そこまで日本では有名でなかった彼らを活用した企業イメージ戦略について私見を述べたい。

1.スポーツマンシップの象徴となったオレグ・ベルニャエフ選手

既に多くの人がご存じのとおり,体操の個人総合で銀メダル,平行棒で金メダルを獲得したウクライナのオレグ・ベルニャエフ(Oleg Verniaiev)選手は,今や日本人にとってはもちろん,世界的にもスポーツマンシップを体現したイケメン選手として注目を浴びている。

以下はベルニャエフ選手のInstagramの投稿。

Как то так ✌

Олег Юричさん(@verniaiev.gym)が投稿した写真 -

日本ではスポーツについてあまり報道するイメージのない日経新聞までもが「敗れざる魂 体操男子・ベルニャエフ 採点「フェア」強く潔く 」と題した記事でベルニャエフ選手の精神を賞賛している。

ウクライナ政府と親ロシア派勢力による紛争で、中心地となった東部ドネツクの出身。疲弊した国から支援はほとんど受けられない。かつての代表仲間は好待遇の誘いを受けてロシアなどに国籍を変えたのに、自身は母国を背負う道を選んだ

1点近いリードを手に迎えた最後の鉄棒。勝利を確信したかのような雄たけびを上げたが、着地が1歩動いた分だけ点数が伸びなかった。場内はブーイングも起きた

試合後の記者会見。隣の内村に対して「あなたは審判から好意的に見られていると思うか」と質問が飛んだ。鉄棒の採点について聞いているのは明らかだった。

これに不快感を示したのはベルニャエフだ。「採点はフェアだと選手みんなが分かっている。無駄な質問だ」。潔い態度に拍手が起きた

悔しさのにじむ表情が笑顔に変わったのは、内村から「次はもう勝てない」と言われた時。「恥ずかしいくらいうれしい。でも彼は絶対にそんなこと思っていないはずだよ」。良き敗者がいてこその名勝負だった。

日本のメディアだけではない。例えば,The Indian Expressは,次のようなベルニャニフ選手のコメントを掲載し彼のフェアなスポークスマン精神を紹介している。

「金メダルを望んだし,それを意識しなかったとはいえないね。でも,上手くいかなかった。」

(“I hoped, and I can’t say I didn’t think about it,” he told reporters. “But it didn’t go that way.”)

22歳のウクライナ選手は,最終的には内村選手が金メダルを受ける価値のある演技をしたと述べた。

(Ultimately, Uchimura deserved the gold, the 22-year-old Ukranian said.)

「僕はこれまでどの選手もできなかった彼の得点に最も迫るということができた。彼は体操界のマイケル・フェルプスだからね。」

(“I have come as close as possible to him, as nobody has before,” he said. “He’s the Michael Phelps of gymnastics.”)

(略)

「金メダルを取れないんじゃないかと航平をとても不安にさせることができたことは結構嬉しいよ。次に向けて頑張ります。」

(“I’m quite happy that I managed to make Kohei very nervous,” he said. “We’ll be preparing for next time.”
さらに米国のヤフースポーツのEric Adelson記者の英字記事は,試合後のベルニャエフ選手の態度や記者会見の様子を次のように具体的に紹介し,彼の敗者としての潔さを賞賛している。

ベルニャエフは採点に関する議論に対し火に油を注ぐようなコメントをすることもできた。金メダルを内村に奪われたという趣旨の主張だってできたし,そのようなコメントがなされることは十分想定できるような状況だった。しかし,彼はそのような主張をしなかった

(Now it was up to Verniaiev to respond. He could have raised hell. He could have made the case that he was robbed of the gold, and it could have been a credible case. He didn’t go there.)

彼は,「スコアは公平なものだったと皆がそう思っています。こうした質問はこの場には不適切な質問です。」と述べたのである

(“We all have feelings,” he said, “but we know the scores are fair. All the questions are superfluous here.”)

まさに敗者としての一流の言動であったこの姿勢は彼の真摯な姿勢から出たものであったように思われる。彼はスコアに対する疑義という問題から距離を取ることで一段と喝采を浴びたのである。

(It was a classy gesture by a defeated man, and it seemed a sincere one. He steered further away from the controversy and then added a layer of praise.)

ベルヤニフ選手は「体操界における航平は競泳界におけるフェルプス選手のようなものです。体操界にフェルプスがいるんですよ。」と述べた。

(“Kohei in gymnastics is like Phelps in swimming,” he said. “We have our own Phelps.”)

この瞬間,日本のメディアからは拍手が起こった。

(At that, the Japanese media applauded.)

これは少し不思議な状況だった。緊張感のある質問,拍手喝采,そして,ウクライナのレポーターの中には立ち上がり「ベルニャエフ選手は我々のチャンピオンだ」と発言する者もいた

(It was a bit of a strange scene: the pressing question, the applause and there was even a Ukrainian reporter who stood up to say Verniaiev was “our champion.”)

最終的に,ほとんどの人がこうした会見での疑義に関する議論は忘れ去り,内村が作った歴史のみが皆の記憶に残るかもしれない。

(In the end, though, few will remember what came after the athletes left the podium. Uchimura’s history is what everyone will remember.)

ベルニャエフ選手は,さらに「メダルの数ということでいれば,内村はこれまでも伝説だったし,今も伝説的な人物です。」と付け加えた。

(“When it comes to the quantity of medals,” Verniaiev said, “he is a legend, he was already a legend.”)

それだけでスコアに対する議論が無意味であることが良く分かる。

(That much is beyond argument.)

様々な競技があり,様々な境遇にある選手が必死で人生を掛けて4年に一度の夢の舞台での勝利を目指し,想像を絶するトレーニングや苦痛を乗り越えてオリンピックの舞台に立っていることは,スポーツとは縁遠い私でも容易に想像できる

それだけに,負けるというのは本当に悔しいことであろうし,直ぐに受け入れられない選手の心情も良く分かる。

しかし,私はベルニャエフ選手のような潔い敗者としての態度こそがオリンピック精神を体現する最もあるべき姿ではないかと思うし,これこそが全面的に賞賛されるべき姿であろう。そこには,ある種の武士道に通じる清々さがあるのであり,私は一観客として今回の五輪で彼から大変学ぶことができた

これは,レスリング男子で審判の採点に疑義がついたものの抗議が認められず,銀メダルとなった樋口選手が「自分に何かが足りなかった」と語ったと真摯に語った姿にも良く表れていた

また,競歩50kmで妨害行為について抗議が一時は認められたものの国際陸連の裁定により,4位に終わったカナダのエバン・ダンフィー(Evan Dunfee)選手の姿勢は日本ではそれほど報じられていないものの,素晴らしいものであり,本当に賞賛に値する

荒井選手によれば,彼は荒井選手に謝る必要がないにもかかわらず,荒井選手にあった際に,Sorryと謝罪しハグをしたという。このような謝罪があったのは,同じ選手として荒井選手の気持ちが良く分かったからであろう。

ダンフィー選手は次のような潔いコメントをカナダ国民に対して発表しており,本件は終局的解決となった。

日本メディアはあまり彼の誠実性に関する情報を報道していないことから,以下声明の一部を紹介する。彼のスポーツマンとしての誠実性の哲学が良く表れている文章である。

私にはスポーツ仲裁裁判所への上訴という手段を行うか否かという選択肢が残されていました。

しかし,選手村に戻り,今回の接触事件について見返した結果,私は更なる上訴を行わないことを決意しました。なぜならば,私はそれが正しい判断であると信じているからです。

(It was then left for me to decide whether to pursue this further with an appeal to the Court of Arbitration for Sport. Following my return to the village and my viewing of the incident I made the decision not to appeal, as I believe the right decision stood.)

約3時間半に及ぶ極限のレースにおける選手の痛みがいかなるものかというのは,あまり多くの人が理解できるものではないかもしれません。日本の選手と私自身との間で生じた接触により私の精神力が途切れてしまいました。そして,その集中力を失った時,私の足はもはやゼリー状のような状況だったのです。接触というのはこの競技の一部であり,明文か不文律であるかにかかわらず,それは良く生じることなのです。

また,私は今回の接触が悪意又は故意によりなされたものではないと信じています仮に私がスポーツ仲裁裁判所に更なる上訴をし,それが認められたとしても,私はこの銅メダルを確たる自信を持って受け取ることはできませんそのような形で銅メダルを受領したとしても,それは私が胸を張って受けられるメダルではないのです

(Not many people can understand the pain athletes are in three and a half hours into such a grueling race. I believe that both the Japanese athlete and myself got tangled up but what broke me was that I let it put me off mentally and once I lost that focus, my legs went to jello. Contact is part of our event, whether written or unwritten and is quite common, and I don’t believe that this was malicious or done with intent.  Even if an appeal to CAS were successful I would not have been able to receive that medal with a clear conscience and it isn’t something I would have been proud of.)

今夜はぐっすり眠れると思います。そして,今後の人生においても,今回下した自分の決断が正しいものであったと思えるでしょう。私は,表彰されることではなく人生において誠実な行動をとることが正しいと考えています

(I will sleep soundly tonight, and for the rest of my life, knowing I made the right decision. I will never allow myself to be defined by the accolades I receive, rather the integrity I carry through life.)

最後となりますが,皆さん私とチームメートのマチュ・ビロドウを応援してくれて有難うございました。競歩という競技について,これだけ広い層から反応してもらえたことは本当に素晴らしいことです。私のチームメートと競合選手はこの競歩という種目で,私を常に刺激してくれます。今日,私たちが彼らにも同じように刺激できるパフォーマンスを示すことができたのであれば幸いです。

(Finally, thank you to everyone who supported myself and my teammate Mathieu Bilodeau today. To see race walk receiving such a wide reception is absolutely amazing! My teammates and my competitors in this event never cease to inspire me and I hope that we have done the same to you today.)

彼の声明を見ても,選手としての潔さとともに競争相手であった荒井選手のことをおもんぱかる姿勢は,これも武士道精神に通じていると感じてならない。

抗議は正当な結果を担保するために行われるべきである。

しかし,結果が確定した後は潔い姿勢を示すということこそがスポーツマンシップであり,五輪精神そのものであろう。

実際,日本のネットでも,かなりベルニャエフ選手やダンフィー選手を賞賛するコメントが相次いでいる。

ダンフィー選手は誠実性こそが最も重要であるという考え方を体現したような選手だったようである。

今から約1年前の2015年8月22日付けカナダメディアの記事によれば,彼は反ドーピングとクリーンなスポーツの実現をSNSで明確に訴え続けてきたようで,ニューヨークタイムズは彼を「自警団の競歩選手(Vigilante Race Walker)」と呼んでいるという。

そんな彼がだからこそ,自分自身にとっても誠実性という観点から,例え抗議を続けてメダルがもらえるとしても,それは自分が満足するものではないとして,潔さを選んだのかもしれない。ちなみに,彼は今年の3月神戸に来ていたようである。

私はメダルの数や色よりも,ベルニャエフ選手やダンフィー選手,さらには日本の樋口選手のような潔い敗者の姿勢こそが賞賛されるべきであると思うし,後述のとおり,こうした選手への企業の投資こそが企業イメージの向上につながると考えている。

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