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オバマが遺産にしたい核の新政策 - 岡崎研究所

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7月10日付のワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのロギンは、核の先制不使用や核実験禁止などの新政策を打ち出すことをオバマ大統領が考えていることを紹介しています。論説の要旨は、次の通りです。

プラハでの提案を前進させる

 オバマ政権は大統領の核政策を前進させるために行政措置を採択する決意をしている。外交上の遺産を残す努力の一環である。オバマは核兵器の役割を減少させ、最終的には廃棄することを、2009年、プラハで明らかにした。ロシアとの新START条約締結、核セキュリティ・サミット、イラン核合意など成果を上げてきた。

 最近、国家安全保障関係閣僚は核政策について2度会合をした。検討中の選択肢は論議を呼ぶものであるが、議会の正式な賛成を要しない。国家安全保障会議のローズ次席補佐官は、6月6日軍備管理協会で、「オバマ大統領はプラハで提起した問題を前進させる方策を検討している」と述べた。

 高官によると、米国が「核の先制使用をしない」と宣言することも含まれている。これは画期的な変化になる。もう一つの選択肢は核実験禁止を確認する「国連安保理決議」の採択である。上院が包括的核実験禁止条約を批准しない中、核実験をしないとの米国の意思を確固たるものにする。またロシアに対して、新START条約の有効期限を2026年まで5年間延長する提案をすることを検討している。次期政権がこのSTARTを失効させないためである。さらに長距離巡航核ミサイル開発の中止や遅延、核警戒態勢の緩和も検討されている。

 共和党の議会指導部は、オバマが議会との約束に反し、米国の核抑止力を弱める措置を最後の数カ月で決めることに反対している。上院の外交委員会のコーカー委員長と軍事委員会のマケイン委員長は、START条約批准は核兵器を近代化する約束と共に行われたとの書簡を送付した。反対派はまた、米国の核の傘の下にいる同盟国への影響を考慮していないとしている。

 軍備管理推進派などは、オバマは出来る限り多くのことをやるべきで、核についての自身の約束を守る最後のチャンスであるとしている。オバマは核兵器についての遺産を残す機会と見ているが、議会の支持のない一方的な政策は彼の大統領任期を超えては続かない危険がある。

出 典:Josh Rogin ‘Obama plans major nuclear policy changes in his final months’ (Washington Post, July 10, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/obama-plans-major-nuclear-policy-changes-in-his-final-months/2016/07/10/fef3d5ca-4521-11e6-88d0-6adee48be8bc_story.html

オバマ大統領は、核兵器のない世界を目標として掲げてきました。同時に、この目標が、自分が生きている間には実現しないだろうとの現実も認めてきました。しかし、大統領任期も終わりに近づく中、米国による核兵器の先制不使用や核実験の禁止を約束し、米国の核兵器および運搬手段の近代化を中止するために何ができるかを検討している模様です。

ロシアが応じるとは考え難い

 核の先制不使用については、冷戦中は欧州正面においてソ連の通常兵力の方が強いとの状況があり、米・NATO側は柔軟反応戦略として、核の先制使用がありうることを抑止力としてきました。ソ連とワルシャワ同盟の崩壊後は、NATOの通常兵力でロシアの通常兵力は抑止できるので、核の先制不使用を宣言することは可能かもしれません。ロシアが核兵力に頼る度合いを強め先制使用を認めている中で、先制不使用を宣言し、ロシアにも同様な姿勢を要求することは考えられます。しかし、ロシアがそれに応じることは考え難いです。

 核を先制使用する能力は、他の大量破壊兵器である化学兵器や生物兵器の使用抑制にも役立ってきました。第1次湾岸戦争の前に、ベーカー米国務長官はイラクのアジズ副首相に、紛争になった時に化学兵器は使うな、我々には報復する手段があると脅しています。イラクはイスラエルにミサイルを撃ちこみましたが、化学兵器を弾頭にはしませんでした。当時イラクは化学兵器を持っていて、国内のクルドに対し使用しています。イラン・イラク戦争でも使用しました。核兵器先制使用の可能性は、そういう抑止の効用もあります。

 核兵器の先制不使用については、こういう点をどうするか、同盟国も巻き込んで協議する必要があります。北朝鮮には化学・生物兵器があることは確実です。核攻撃には核で報復するとしても、先制不使用を約束すれば、化学・生物兵器の抑止をどうするかの問題があります。

 核実験禁止については、米国としては、包括的核実験禁止条約を批准する努力を上院との話し合いで行うのが正道です。上院は批准しないとの姿勢ですが、だからと言って安保理決議で実験禁止を決めると言うのは少し邪道です。
米国の核政策の重要な変更は、議会、同盟国との協議を経て行うことが適切で、あまり性急なやり方でやると、持続性がない政策になりかねません。

 まだ検討している段階ということですが、重要な問題です。日本としては検討状況についての説明を求めてもいい案件ではないかと思われます。日本はどうしてほしいか、意見を固める必要もあります。

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