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奇抜な候補者を生み出すほどに、世の中は政治に無関心-“無頼系独立候補”たちの戦い(4)-

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ギリギリに立候補した候補者たち

撮影:畠山理仁

選挙戦では活動がほとんど報じられなかったものの、21人中15番目となる4605票を獲得して大健闘した候補がいる。それが元塾講師の武井直子候補だ。

武井氏のキーワードは「ぎりぎり」だ。立候補届出の締め切りは告示日7月14日(木)の午後5時までだが、武井さんが届出会場に現れたのは4時52分のことだった。必要書類が欠けていたり、内容に不備があれば受理されない可能性大。しかも、書類の事前審査も受けていないため、選管の人たちもドキドキ、ギリギリのタイミングでの立候補届出となった。

実は今回の都知事選の選挙公報は候補者21人全員の原稿が掲載されているわけではない。武井氏だけは選挙公報への原稿掲載がなかったのだ。

これは武井氏に政策がないからではなく、選挙公報の原稿締め切りに間に合わなかったからだった。

筆者は選挙戦中、毎日候補者たちに連絡を取っていたが、武井氏はそのたびに、「選挙公報は間に合わなかったんですぅ〜! すみませ〜ん!いまポスターも作っているところなんですぅ〜」と謝罪の言葉を述べていた。政策がないわけではなく、「ものすごくたくさんあります。数百どころか、数千ある」と言う。本を書くとなったら目次だけで一冊できる量だ。政策が多すぎて締め切りに間に合わなかったパターンだ。

たとえば今回の都知事選で掲げた政策としては次のようなものがある。

・政治の首都を「福島県」へ移設。天皇主導の観光都市へ。
・2020年東京五輪パラリンピックは首都震災後へ延期。開催権をトルコ・イスタンブールに移譲する
(※筆者注:これは首都直下型地震が30年間のうちに70%の確率で起きると言われていることから、地震が起きてから復興事業としてやるべきじゃないか、という主張)。
・防災目標「被災死ゼロ」(前述の通り、上杉隆氏と重なる政策)。

撮影:畠山理仁

ポスターも1万5千枚作ったが、できあがったのは7月29日金曜日とギリギリ。都内のポスター掲示板は1万4千か所以上あるので、現実的にすべて貼るのは無理。ツイッターでポスター貼りのボランティアを呼びかけたところ、3名がボランティアを買って出てくれたという。

しかし、結局、武井氏自身では5枚しか貼れなかったそうだ。筆者はそのうち2枚を貼る場面に立ち会うことができた。

街頭演説はするのか、しないのか、と聞くと、最初は「します」と言っていた。しかし、だんだん、「できないかもしれない…」と弱気になっていった。

しかし、ポスターができたのでポスターを貼りながら街頭演説をする、と、これまたギリギリのタイミングで連絡が取れた。そこで選挙戦最終日の7月30日(土)の朝8時に新橋駅SL広場で待ち合わせをした。

ところが、武井さんに密着していたテレビ局のスタッフから、「武井さんが家から出てこない。このままではバスに遅刻する」と連絡があった。私も武井氏に電話をしたが、出ない。結局、武井氏はバスを2本も乗り過ごしてしまった。

武井氏があまりにも長時間出てこないので、お母様が家の中で拡声器を使って「直子さ〜ん! 直子さ〜ん!」と呼びかけたそうだ。街頭演説では一度も使われなかった拡声器は、武井氏の自宅で活躍していた。

結局、武井氏は待ち合わせに2時間遅れで到着。最後までハラハラ・ドキドキする選挙運動だが、武井さんの政策ビラにはこんな言葉が綴られていた。

武井の主張:誰もがみんな愛し愛され慈しみあうために生まれてきます。なかよく たすけあって 暮らしましょう
武井の理想:「誰もがほどほどやってける社会。/みんなが納得ゆく社会。/毎日ひなたぼっこしてても赦される社会。」

これを否定する人はいないのではないか。しかし、このビラも公職選挙法で定められた「証紙」を貼るのが選挙戦最終日に間に合わなかったため、数十枚しか配れなかったという。とはいえ、一人でも受け取った人がいたなら、作ったかいがあるというものだ。

撮影:畠山理仁

ちなみにこのギリギリの武井さんよりも、さらに後に届け出た候補者がいる。それが前回2014年の都知事選にも立候補していた、内藤久遠候補だ。内藤氏は、

「16時59分50秒をお知らせします、プッ、プッ、プッ、ピーン!」
「17時0分ちょうどをお知らせします。プッ、プッ、プッ、ピーン!」

そんな時報が鳴り響く中、急いで書類にサインをして提出するという、とても慌ただしい立候補だった。

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