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焦点:プーチン大統領の対ウクライナ強硬姿勢、真の目的は制裁解除

[モスクワ 16日 ロイター] - ウクライナ政府は新たな侵攻をロシアのプーチン大統領が計画していると考えているが、無理もない。プーチン大統領は国境地帯で軍備を強化し、2年前のクリミア編入直前のような強硬姿勢を示しているからだ。

ただ一部専門家は、プーチン氏が少なくとも現時点では、戦場ではなく外交を通じて優位な立場に立つことを狙っているとみている。

ロシア外務省に近いシンクタンク、ロシア国際問題評議会のコルトゥノフ所長はロイターに対して「目的は制裁」と指摘。親ロシア派がウクライナ政府軍と対立するウクライナ東部の危機解決に向けた「ミンスク和平合意の西側参加国に圧力をかけるためだ」との見方を示した。

米国と欧州連合(EU)は、ロシアによるクリミア編入とウクライナ東部における親ロシア派への支援を理由に、ロシアを2年にわたる制裁下に置いている。欧州は、ミンスク和平合意が履行されない限り制裁は解除しないとしているが、合意は今や死に体。現地では戦闘が散発し、双方が互いの合意不履行を非難している状態だ。

情勢は今週、急速に緊迫化した。プーチン大統領が突如、クリミアでの破壊工作をウクライナ政府が画策したと主張し、報復措置を取ると警告したのだ。プーチン氏は、クリミア半島に送り込まれたウクライナの工作員との戦闘でロシア側の兵士2人が死亡したとしている。

ウクライナ政府は、クリミアでの破壊工作の企てを否定した上で、新たな侵攻の口実を作るためにロシア側がでっち上げたと主張している。米・EU当局も、こうした事件が起きた証拠はないとしている。

破壊工作が事実であれ、単なる想像であれ、ロシア政府はクリミアでの軍事活動を積極化し、現地で軍事演習やミサイル配備を行ってきた。

プーチン大統領は安全保障会議を招集、ウクライナ東部の停戦を永続的な和平につなげるための次回の国際協議をキャンセルした。

ただ、プーチン氏の一連の行動は、ウクライナ東部情勢と和平合意の履行が遅れている現状に国際社会の関心を再び集めようとしているとの解釈もできる。つまり、最近のクリミア危機は、結果的に西側の制裁を終わらせようとするロシアの外交戦略の一環ではないか。

<しびれを切らしたプーチン大統領>

和平合意の履行に向けたロシア、ウクライナ、フランス、ドイツの協議は行き詰まっている。ヌーランド米国務次官補とロシアのスルコフ大統領補佐官との間の協議でも、突破口を開くことはできなかった。

一方、ウクライナ東部のドンバスでは、親ロシア派が2つの「自称共和国」を引き続き支配。ウクライナ政府軍との戦闘も散発している。

和平合意では、ウクライナ政府はドンバスに「特別な地位」を与えるほか、親ロシア派戦闘員の赦免、選挙などを約束した。しかし、2年以上に及ぶ戦闘で国が疲弊、多くの領土で支配力を失ったウクライナ政府にとって、この約束を実行することは政治的なリスクが大きい。

ウクライナは、合意履行が進まないのはロシア側が義務を果たしていないからだと主張。ロシアがウクライナ東部の戦闘をあおり続け、ウクライナの東部国境を実効支配していると批判している。

前述のロシア国際問題評議会のコルトゥノフ所長は、プーチン大統領の最近の強硬姿勢について、「合意の履行をウクライナ政府に働き掛けるよう」西側諸国を動かすためではないかとの見方を示す。

プーチン大統領が目指す最終的な目標は、ロシアによるクリミア編入を世界に認めさせることだ。東部での戦闘を凍結し、ウクライナ国内に同国政府の支配が及ばない親ロシア派拠点を残すことを望んでいる。

これはウクライナ政府にとって公式には受け入れがたい解決策だ。一方、和平合意が停滞している限り、対ロシア制裁は続くことになる。

モスクワ・カーネギー・センターのシニアアソシエート、アレクサンドル・バウノフ氏は「ロシアはクリミアでの破壊工作の話を西側諸国への最後通牒にしようとしている」と指摘する。「和平が実現できないのであれば、ロシアは独自に次の措置を取る権利を留保しているという西側へのメッセージに他ならない」との見方を示した。

*写真を差し替えました。

(Andrew Osborn記者 翻訳:吉川彩 編集:橋本俊樹)

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