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ポピュリズムからの脱却?南米で起こる実務派回帰 - 岩城薫

ポピュリズムという言葉は、ロシアの農村運動に起源を持ち、エリート主義に対抗する言葉として使われ始めたという。日本では人民主義、大衆主義などと訳されていたが、要は、既成勢力、権威、富裕層が悪い、と民衆の欲求不満をあおり、勝ち上がる政治姿勢を指す。最近では欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国の国民投票をめぐり、離脱派の政治家たちが「大衆の情緒や感情をあおるポピュリズムだ」と非難された。

“ポピュリズムの本場”で起きた変化

 ポピュリズムの本場などというと言い過ぎかもしれないが、過去20年、大衆誘導政治が席巻した南米で最近、「ポピュリズム疲れ」が起きているという指摘がある(6月23日付フィナンシャル・タイムズ紙「ラテンアメリカ:新たな政策の下で」)。

 6月のペルー大統領選で、ポピュリストの典型だったフジモリ元大統領の娘、ケイコ・フジモリ氏を小差で破ったクチンスキー元首相。さらには、2001年の財政破綻以来、左派ポピュリズム政権が続いてきたアルゼンチンで、昨年選出されたマクリ大統領。いずれもカリスマ性は低いが、経済に明るい実務派という評判だ。独裁よりスタッフとのチームワークを重んじ、大衆をあおるタイプでもない。

結局既存勢力に抱きこまれた左派

 こうしたトップが登場したのは、南米でポピュリズム疲れが起きているからだというのが同紙の指摘だ。

 南米の最近のポピュリスト大統領を列挙するとこうだ。ベネズエラのチャベス氏(99~13年在任)、ブラジルのルーラ氏(03~11年)、ボリビアのモラレス氏(06年~現在)、アルゼンチンのキルチネル氏(03~07年)とその妻フェルナンデス氏(07~15年)、ペルーのウマラ氏(11年~現在)――。

 いずれも、市場優先、緊縮策を基礎にした新自由主義を嫌い、貧困解決、格差解消を唱えて圧倒的な支持を得た。しかし、実際に政権に就けば、旧来の新自由主義体制を放棄することなどできず、既成勢力に抱き込まれた。貧困対策と言えば、その根を解決できないばらまきに終始、公約は果たされなかった。

 それでも彼らの在任時は世界経済が追い風だった。中国など新興市場の需要が急増し原油や鉄、非鉄、農産物など1次産品価格の上昇、経済規模が順調に伸び、財政がいい加減でもボロを隠すことができた時代だ。だがここ数年の経済の逆風で、左派ポピュリスト政権の財政は悪化。汚職が暴露されるようになり、政権を追われた。ブラジルのルーラ氏の弟子に当たるルセフ大統領も弾劾に遭い、風前のともしびと言え、左派ポピュリズム政権がよみがえる可能性は低い。

 では、新たな実務派たちに奇策はあるのか。微妙なところだが、再び新自由主義体制の強化を進め、財政再建を図る以外にない。容易ではないが、彼らにとって大きな味方が一つある。「左派が語る夢」は幻想に過ぎなかった、カリスマなど必要ないと民衆がすでに冷めていることだ。

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