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「意外にも充実した政策」「サラ金で供託金を調達」…候補者たちの報じられぬ一面-“無頼系独立候補”たちの戦い(2)-

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小池百合子氏の「一番最初に手を上げた」は間違い

筆者にとって、今回の都知事選は舛添要一都知事(当時)が6月15日に都議会議長に辞職願を提出した時から始まった。辞職願は6月21日付けのものだったが、6月20日には「一番最初の出馬表明者」が現れたからだ。

今回の都知事選で当選した小池百合子氏は、選挙期間中、何度も「一番最初に手を上げた」と主張した。メディアも小池氏の主張をそのまま受け入れた。

しかし、筆者は断言する。一番最初に手を上げたのは小池氏ではない。二番目ですらない。実は小池氏は「三番目」だ。小池氏の出馬表明は6月29日だったが、その前に2人が立候補表明をしている。

マック赤坂氏出馬会見

一番最初に出馬表明をしたのは、6月20日に出馬表明をしたマック赤坂氏だった。マック赤坂氏は、2011年から、12年、14年、16年と、4回連続で都知事選に出馬している。

マック赤坂氏と言えば、エンジェルやスーパーマン、ガンジーなどのコスプレ姿での政見放送や街頭演説が有名だ。しかし今回はスーツ姿で記者会見に臨み、これまでとは違う戦略で選挙戦を戦うことを宣言していた。

「今回はコスプレはしない。真面目にやる。NHKに好かれるような選挙運動をする」

筆者はマック赤坂氏が最初に立候補した2007年4月30日の港区議会議員選挙時から取材をしてきたが、最初の選挙はスーツ姿に蝶ネクタイのポスターだった。同年7月29日に行なわれた参議院選挙も同じポスターだったが、マック赤坂氏はこの時から街頭演説の際に派手な衣装を着るようになった。

「派手なパフォーマンスをしなければメディアに取り上げられない」
そんな考えがマック赤坂氏の選挙運動を支えてきたのだ。

「ふざけて立候補してるんだろ」
「うるせえ、邪魔だ」

そんな言葉とともに空き缶を投げつけられたり、唾を吐きかけられることもあった。それでもマック赤坂氏はくじけずに街頭に立ち続け、「スマイルダンス」という独特のパフォーマンスを続けてきた。

マハトマ・ガンジーの姿で戦った2013年7月の参院選後には、一度は引退宣言もした。しかし、2014年に猪瀬直樹都知事(当時)の辞任による東京都知事選が告示されると、「黙ってはいられない」と立候補した。その際、筆者が行なったインタビューで、マック赤坂氏は次のように答えた。

「報道がこんな状況じゃあ、どんな人間が立候補しているか有権者にわかるわけがない。まともなことをやっていたら、おれは一生『泡沫』の棺桶の中に入れられて出てこれない。コスプレをし始めたのは、メディアの差別的な扱いに対する反発。意地ですよ」

マック赤坂氏は自身のことを「政見放送芸人」と言う。たしかにYouTubeでのマック赤坂氏の政見放送は何十万という再生回数を誇る。しかし、マック赤坂氏の目的はそこではない。

「今の日本にはスマイルが足りない」

撮影:畠山理仁

そんな訴えを具現化するために、マック赤坂氏は立候補を続けてきた。そして今回の選挙ではコスプレを封印し、出馬会見で次のように宣言した。

「50億円の経費を使わないで新しい都知事を選ぶ方法があります! それはいの一番に出馬表明した私よりも後に出馬しようとする人の立候補を有権者が阻止することです。そうすれば無投票当選でマック知事が誕生します! どうかご協力をお願いします!」

マック赤坂氏の希望が実現することはなかった。しかし、今回は過去4回の選挙で自己最多の得票数となる5万1056票を獲得した。ちなみに都知事選挙における報道で大手メディアから「主要候補」とされるためには、「10万票」が一つの目安になる。マック赤坂氏の戦いは、まだ道半ばだといえる。

「政策本位の選挙」なら、なぜこの候補は注目されなかったのか

撮影:畠山理仁

小池百合子氏よりも先に手を上げたもう一人は、前兵庫県加西市長を2期務め、その後、橋下徹市長時代に公募が行なわれた大阪市北区長も務めた中川暢三氏だ。中川氏は小池百合子より5日も早い6月24日に東京都庁の記者クラブで都知事選への出馬表明記者会見を行なった。

中川氏の初選挙は2001年の参議院議員選挙である。鹿島建設本社開発部次長在職時に、会社の了解を得た上で有給休暇を取得して立候補した。民間の感覚をもった人材が政治の世界に入ることは大切だが、日本ではいまだに「変わった人」と見られてしまう。それほど政治の世界は新規参入が難しい。

松下政経塾一期生でもある中川暢三氏と筆者が初めて会ったのは、2002年の長野県知事選挙の時だ。その当時から、「お金をかけない政策本位での選挙」を訴えていた中川氏は、今回の選挙でも独自の政策を訴えた。

「行政を効率化し、一人2万円など大幅減税します」

大幅減税や行政の効率化は選挙戦時に候補者がよく言う公約の一つだ。しかし、他の候補と中川氏が違うのは、加西市長時代に行政の効率化を実現してきた実績があるということだ。

中川氏は加西市長を務めた6年間で、市税収入の11年分にまで膨れていた借金を33%減らしている。また、同じ税負担のまま水道料金も下げている。一方、ゴミの有料化を進めることによりゴミの量を3割減らし、そのことによる焼却コスト、回収コストも減らした。しかし、そのことはほとんどメディアで報じられることはない。

撮影:畠山理仁

今回の都知事選では、当選した小池百合子氏も含め、「知事報酬半額」または「知事報酬ゼロ」を訴える候補が複数いた。中川氏もその一人だ。また、中川氏は昨今の低投票率を嘆き、

「投票したら1万円クーポン支給」

というユニークな政策も掲げた。オーストラリアのように投票が義務付けられている国もあるから、別に不思議な政策ではない。

中川氏は、

「住民投票条例(常設)と議会基本条例の制定、通年・夜間休日議会」
「議員の世代交代を促す在職定年制度(通算15年以内)」
「一定得票以上の落選者を臨時職員で3年間雇用できる仕組み」

など、地方自治の先行事例を導入しようという意欲も見られた。実際に、夜間休日議会などは導入している地方自治体もある。「いい加減な政策」との批判はまったく当たらない。

また、中川氏が訴えた「TOKYO FIRST」は小池百合子氏が当選後に何度も繰り返している「都民ファースト」とも通じる。ちなみに「都民ファースト」は、元在特会(在日特権を許さない市民の会)会長で政治団体代表の桜井誠氏も掲げていた。

こうして「報道されない候補たち」の政策を見比べていくと、「主要3候補」の政策だけが特に優れているわけではないことがわかる。有権者が一番の投票理由に「政策」を挙げるのであれば、なぜ中川氏が1万6584票しか取れなかったのだろうか? 筆者は不思議で仕方がない。

撮影:畠山理仁

また、政策という観点で言えば、上杉隆氏も「主要3候補」と比べて決して見劣りはしていなかった。むしろ、候補者に対する好き嫌いはさておき、「主要3候補」よりも具体的な政策を提示した候補の一人だったと言える。

たとえば今回の都知事選では、待機児童の問題が大きくクローズアップされた。「待機児童解消」を掲げた候補は主要3候補以外にもいたが、具体的な成功事例である「練馬こども園方式」を取り入れると表明していたのは上杉氏だけだ。これは有権者にとって、非常にわかりやすい例示だった。

また、首都直下型地震対策についても上杉氏は「死者ゼロ」を掲げており、その対策として防災グッズを全660万世帯に配布することも提案した。ちなみに「首都直下型地震死者ゼロ」は、武井直子候補も主張していた。

さらに、上杉氏はこれらの政策実現の裏付けとなる財源にも言及しており、「東京オリンピックまでの地方法人税の再配分の凍結により1兆2800億円が確保できる」と訴えていた。地方法人税の再配分は増田寛也候補が総務大臣時代に決めた特例だったため、増田氏への攻撃にもなった。それはさておき、財源まで提示した候補は珍しかったといえるだろう。

一方、今回の都知事選で、もっとも多くの候補者が関心を持ったテーマの一つは米軍横田基地の問題だ。候補者によって横田基地の返還から軍民共用化までと幅はあったが、選挙戦中、横田基地の問題に言及した候補は少なくとも5人いた(谷山ゆうじろう氏、後藤輝樹氏、小池百合子氏、上杉隆氏、せきくち安弘氏)。このことは特筆すべきトピックだろう。

小池百合子新都知事は、有権者の多くが「政策で選んだ」という都知事選で誕生した。小池知事には、選挙戦で有権者に訴えた政策を実現するための努力が必要になってくるだろう。

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