- 2016年08月16日 06:00
Kindle読み放題は出版社の福音となるか?
1/2Amazonが月額980円で電子書籍が読み放題になるサービスを開始した。定額サービスにより出版社の収益はUPすると筆者は予想するが……。
Kindle電子書籍の読み放題サービスが始まった
8月3日、Amazonの定額制電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」が始まった。開始当初は、月額980円(税込)で和書12万タイトル以上、雑誌240タイトル以上、洋書120万タイトル以上の読み放題を実現。参加する出版社も、講談社、小学館などの大手を筆頭に、多数の版元が名を連ねている(図)。
サービスの利用登録も簡単だ。クレジットカードにひも付いた既存のAmazonアカウントがあれば、サイトやアプリからKindle Unlimited会員として簡単に登録できる。最初の1カ月は無料で利用可能だ。お試し期間という位置づけなのだろう。
Kindle Unlimitedに対応した電子書籍は、従来のKindle本と同様に、Kindle端末、Fireタブレット、スマホやPCなど各OSの専用アプリで読むことができる。1契約で複数の端末から利用できる点も従来通りだ。
Amazon.co.jpのサイトの「Kindle本」の項目を開くと「Kindle Unlimited読み放題」の項目が追加されており、利用可能な電子書籍のラインナップを確認することができる。Kindle Unlimitedに対応した電子書籍は、サムネイルの上部に「kindleunlimited」のロゴが記載されており、単品販売のKindle本と区別している。
「月額980円で本が読み放題」という、読書家にとってはパラダイスにも思えるKindle Unlimitedだが、現状のラインナップを見る限りでは、まだまだ発展途上といった印象はぬぐえない。実際に利用してみると、新刊を見つけ出すのは難しい。出版社としても、刊行から一定期間を経たタイトルを登録し、まずは様子見……というところであろう。
Kindle Unlimitedで出版社の収益は拡大するか?
これまでも電子版コミックや雑誌の読み放題サービスは存在したが、単行本も含めた総合的な読み放題サービスを、Amazonのようなメジャーな、しかも日本の電子出版流通において大きな力を保持するプラットフォームが開始したのは大きな変化といえる。一方、これまで電子書籍で一定の収益を上げていた出版社や著者からすると、今回の読み放題が自分たちの今後にどのような影響をもたらすのか、期待と不安が入り交じった心境ではないだろうか。
音楽制作業を営み、iTunes Storeなどの音楽配信サービスに楽曲を提供して一定の収益を上げている筆者は、昨年の今頃、Apple Musicなど定額制聴き放題サービスの開始を受けて、未知なるビジネスモデルに対峙する必要に迫られ同様の心境でいた。あれから1年。定額制聴き放題が収益にもたらす傾向が見え始めたので、その経験を踏まえて、Kindle Unlimitedが出版社などの権利者の収益にあたえる影響を予測してみたい。
結論から言おう。マクロな視点で見た場合、多くの電子書籍タイトルを抱える出版社は、Kindle Unlimitedへの参加により、収益が拡大する可能性がある。現時点ではこの結論に明確な根拠があるわけではないが、音楽の定額制における弊社の楽曲の再生回数の傾向を見ていると、ロングテールの尻尾の部分に埋もれ、従来のダウンロードでは見向きもされなかった楽曲が少ないながらも再生され、収益源になり始めている。
弊社の場合、合計で2000曲弱しか配信していないのだが、たったそれだけでも今年に入ってからのストリーミングの再生回数は上昇傾向にある。大手で、数十万曲、数百万曲を提供しているレーベルであれば、トータルの再生回数は、かなりの数字になっているはずだ。
このようにロングテールの尻尾からも収益が得られるようになったことに加え、もう1つ注目したい動きがある。音楽の場合、ストリーミング再生が増加した分、従来型のダウンロード販売が大きく減少したかと言えば、それはなく、横ばいでほぼ変わらなかった。つまり、定額制ストリーミングの収益が上積みされたというわけだ。
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