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国産水陸両用車開発は単なる税金の無駄使いに終わる。

防衛省が国産水陸両用車開発へ 米国製AAV7より高性能化 日米共同開発も視野
http://news.livedoor.com/article/detail/11875905/

防衛省が離島奪還作戦などを念頭に、国産の水陸両用車の開発に着手する方針を固めたことが10日、分かった。
 平成29年度予算案概算要求に研究開発費40億~50億円を計上する。防衛省は25年度予算以降、米国製水陸両用車「AAV7」の調達を行っているが、速度面などでより高性能の車両が必要と判断した。将来的には日米共同研究を行い、防衛装備輸出につなげたい考えだ。

重工業が開発を進める技術をベースとし、31年度末まで初期研究を行う予定だ。

 一方、米国との共同研究に向けた交渉を早期に開始し、早ければ30年度予算案に共同研究に必要な経費を盛り込む。三菱重工が開発を進める水陸両用車はエンジン小型化技術に優位性があり、AAV7の水上速度(時速13キロ)を大幅に上回るとされる。

どう考えても無理筋な話です。
そもそも陸自に水陸両用装甲車の運用構想がありません。
AAV7を選定するにしても、他の候補はろくに調べもしませんでした。それは運用構想がないからです。LCAC使うならば、通常型のAMVやピラーニャあたりの水陸両用型でもよかったし、バイキングのようなより路外能力の高い車輌でもよかったわけです。あるビーチングができる揚陸艇との組み合わせもあったでしょう。その場合、
水陸両用装甲車と揚陸艇のコンビネーションを考えるべきでした。
装甲車が直接揚陸船から岸辺にたどり着かなきゃならないという法律もありません。

そもそも近年では強襲揚陸は米海兵隊でも想定していません。

また揚陸は水上からではなく、ヘリを使う方に、重点が移っているのも近年のトレンドです。例えば英海兵隊はそうです。

AAV7の採用の過程も極めて胡乱なものでした。
3年かけてAAV7を試験して採用不採用を決めるといっていたのに、「アメリカ様から言われました」と、殆ど試験もしないままでAAV7を採用した胡乱な組織(あるいは政治決定を押しつけた政府)がまともに運用なんか考えているはずがありません。

AAV7は設計も古く、能力的にも問題です。南西諸島の多くのリーフや防潮堤を乗り越えられません。恐らくそれがわかっていたから、陸幕は南西諸島でもAAV7の試験をしなかったのでしょう。試験の結果不可ならば、AAV7が買えなくなります。

常識的に考えればいわゆる島嶼防衛でAAV7は役に立ちません。
まあ、AAV7が使えるのは宮古島や沖縄本島などの一部のビーチだけでしょう。
野党から「政府は本来の島嶼防衛を放棄し、沖縄本島の地上戦を想定しているのか?」と尋ねられたらどうするんでしょうかね?

しかも米海兵隊はお前らうちの中古を買えよ、ウチも近く近代化するから、その時は一緒にやろうや。そのほうが現用型の新品買うより安いよ」と忠告したのですが、「お兄ちゃんのお古の玩具は嫌だい!新品の玩具が欲しいよう!!!」と新品を注文しちゃいました。
恐らく陸自のAAV7が近代化され、米海兵隊と相互互換性を持つことはないでしょう。

こんな組織がまともな開発をコンダクトできますか?

そもそもまず、陸自は何両の新型車輌を調達するのでしょうか。そしてどのような運用構想をもっているのでしょうか。得てして防衛省、自衛隊は調達と運用計画を考えずに、開発を進めます。これで素人です。
普通の軍隊はこれだけの能力のある車輌を何個中隊分調達し、想定するシナリオに沿ったこのような作戦を可能とする、などといったプランを作ります。そして、何両をどの程度の期間で、調達単価がいくらで、調達コストがどの位、そして開発費用とあわせた総予算を出して、これが議会で揉まれます。それで予算化されます。

我が国では得てしてこのようなプロセスを経ずに、開発や調達が決まります。
これでは素人以下です。

軍事に暗い政治は素人以下の軍人に調達を丸投げです。まあ、自民党には自衛隊様は常に正しい、彼らを疑うなんてアカか非国民だ、みたいな話をする世耕、佐藤、丸川などのセンセイ方がおりますが、これで文民統制が効いていると思っているんですから、観念左翼並みのお花畑です。

まして米軍との共同開発も極めて難しいでしょう。まず経験がない我が国はいいとだけ取れられて、開発費用を押しつけられる可能性が高いでしょう。

常識的に考えてAAV7であんないい加減な調達を決めた連中をまともなパートナーとアメリカ人が考えるでしょうかね。それに開発するにしても、米軍の開発費用は一桁二桁多くなります。彼らはあらゆる試験を行います。つまりR&Dのコストは日本よりも遥かに多くかかります。それに付き合わないといけない。国産兵器のような「なんちゃって」で安直に作ることは許されないでしょう。EFVにどのくらいカネをかけたか思い出すと宜しいかと。
仮に独自開発にしろ、共同開発しろ、買っちゃったAAV7はどうするんでしょうか今後20~30年は使うでしょう。であれば、例えば10年後に生産を開始すると、長い間AAV7と新型が併用されることになります。その間兵站も訓練も二重でコストも人間もとられて、戦闘力は低いという状態になるでしょう。しかも先述のように新型車輌にカネを取られて既存のAAV7の近代化はされないでしょう。

記事では三菱のエンジンが能力高いと書いてありますが、どうでしょうか。大型車輌のディーゼルエンジンの評判は高いものじゃありません。海外では軍用以外でもMTU、キャタピラー、カミンス、シュタイアー、イベコなどのメーカーが有力ですが日本の製品はそこまで評価は受けていません。船舶用でも同じです。取材先の自己PRをそのまま信じるのは危険です。

更に申せば、AAV7のような図体の大きい水陸両方装甲車はつぶしが効きません。
陸自の水陸両方部隊はエリート部隊であり、そのような部隊はPKOなどにも投入されてしかるべきでしょう。ですがそのような任務に図体のでかい水陸両方装甲車は向きません。RPGなどのいい的になります。それに図体が大きすぎるし、どうやって現場でメンテするんでしょうか。米海兵隊のように、装輪装甲車も併せて調達するんでしょうかね?そんなカネがどこにあるんでしょうか。

それに上陸作戦にしてもAAV7は本来装甲はしけであり、あくまで母船と、ビーチの往復が主任務であり、せいぜいがビーチヘッドの確保までがお仕事です。内陸では別な装甲車が必要です。陸自はそのような装甲車両のポートフォリオを考えているのでしょうか。これまた先に申し上げた通り、水陸両方部隊を編成するにあたり、まともなリサーチはやっておりません。頭のなかで「ぼくのすいりくりょうようだん」を妄想してきただけです。常識的に考えれば、要員を参考になりそうな各国に派遣して、それぞれの水陸両用部隊をリサーチするぐらいは普通やるでしょう。ところがなんとなく米海兵隊ってこんなことやっているよなあ、と思っているだけ。そもそも巨大な米海兵隊がモデルになるわけでもないでしょう。ぼくは英海兵隊の基地を日本人ジャーリストとして初めて約3年前に訪れたわけですが、陸自が人員を派遣して調査したのはその翌年、すでに水陸両方部隊の構想が固まってからです。

ぶっちゃけた話、そもそも我が国にまともに兵器を開発するノウハウがありません。そして陸海自衛隊の統合運用はもとより、陸自全体のまともな戦力整備構想などもありません。
なんとなくらしく見えるものを作っているだけです。それが実戦で使用されたことも、市場で競争にさらされたこともありません。

そして技本も各幕僚監部も、メーカーも世界の現状と競合他社の動向に極めて無関心です。

情報も集めずに、希望的な観測やら、情念やら、天下り先の確保やらの大人の事情で開発や調達がきまります。もうそろそろ、普通の国のような開発や調達をするべきではないかと思いますがねえ。こんないい加減な考えで、世界の先端をいく装備が開発できるならば、どこの国も苦労をしません。


Japan in depth に以下の記事を寄稿しました。
オリンピックでドーピング、何が悪い?

http://japan-indepth.jp/?p=29562
IRONNAにいかの記事を寄稿しました。
安倍総理よ、憲法改正は「魔法の杖」ではない

http://ironna.jp/article/3795

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