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「土用は年何回?」ウンチクの王様・うなぎに、ニュータイプが生まれる可能性はあるか

子安大輔=文

うなぎはウンチクの宝庫!

7月30日は「土用の丑の日」でしたが、みなさんはうなぎを食べたでしょうか。私はというと、当日の混雑を避けるべく、一足お先に食べておこうかと数日前にうなぎ屋さんに入ろうとしたのですが、店頭に掲げられた値段を見て、思わず引き返してしまいました(この数年のうなぎの値段の高騰はなかなか厳しいものがありますよね)。

さて、うなぎは数ある食材の中で雑学の宝庫と言えるくらい、さまざまなウンチクがあります。「土用の丑の日にうなぎを食べるというのは平賀源内が考案したプロモーション」「関東は切腹を嫌って、腹ではなく背開きにする」「うなぎのタレが腐らないのは、熱いうなぎを浸すことで低温殺菌されるから」「関西の一部ではうなぎを『まむし』と呼ぶ」「うなぎと梅干しは食い合わせが悪いと言うけれど、科学的根拠はない」などなど。

そんな中、意外に知られていないのは「そもそも土用って何?」ということでしょうか。一年の間には「立春」「立夏」「立秋」「立冬」といわゆる季節の変わり目とされる日があります(これらはいずれも旧暦なので、私たちの実感とは1カ月ほどのズレがありますが)。

そうした変わり目の前の約18日間のことを「土用」と呼ぶのです。つまり、年に4回土用の期間はあるのですが、いつしか説明なく土用と言うと、それは夏の土用を指すようになったようです。今年の立秋は8月7日なので、夏の土用は7月19日から8月6日までとなります。

実は難しいうなぎの「差別化」

実は今、「新しいうなぎ屋さんをつくる」というプロジェクトに関わっています(私の本業は飲食店のプロデュースです)。これが想像以上に難易度が高くて、毎日頭を悩ませています。というのも、既存のうなぎ屋さんを比べてみると、そこには明快な差がないことに気付き、まずは困惑してしまうからです。

もちろん、店によって「おいしい・まずい」「高い・安い」「有名・無名」などの違いはあります。しかし、文章や写真を通じてそれぞれの店の違いを伝えられるかというと、一筋縄ではいきません。食材としてのうなぎはほぼ100%に近いくらい養殖で、一般人にはそれぞれの差はなかなかわかりません。強いて違いをあげるならば、国産か(国内で養殖されたのか)、中国産かという程度でしょう。

メニューも蒲焼きや白焼きがほとんどで、それをお重に乗せるか丼に盛るかの違いです。松竹梅や並上などの違いは大抵の場合、うなぎの大きさの違いであって、クオリティの差ではありません。少し変わったところとしては、ひつまぶしがあるかどうか、あるいはうなぎの串焼があるかどうかという程度なのです。

皆さんがご存知のうなぎ屋さんのことを思い起こしても、それが他の店と比べてどういう違いがあるかは、なかなか説明できないのではないでしょうか。競合が横並びだったら差異化は簡単で、むしろチャンスじゃないかと思うかもしれません。しかし逆にそこが落とし穴なのです。

ナマズの蒲焼きが当たり前の時代に!?

ここで無理矢理にオリジナリティを出そうとして、奇をてらうような試みをしたとします。例えば、蕎麦のメニューを加えて「蕎麦とうなぎを楽しめる店」にしようとか、ビールや日本酒ではなく「ワインでうなぎを味わう店」にしようなど、アイディアを膨らませることは簡単です。

しかし、仮にそのような店をつくったとして、一度は来店してくれても、なかなかリピートはしてくれないように思います。うなぎの場合、多くの人が「行きたい」とか「オーケー」と思ってくれる領域は実はかなり限定的で、そのフィールドから外れると途端に「正統ではなく異端である」として、そっぽを向かれる可能性が高いのです。こうした傾向は寿司や天ぷらなど、他の伝統的日本料理にも共通しています。

うなぎの世界で、新しいチャンスはあるのだろうか……。こんなことで悩んでいたら、マグロの養殖で有名になった近畿大学が「うなぎの味がするナマズ」を開発したとの衝撃的なニュースが飛び込んできました。うなぎについては資源の枯渇がかなり不安視されていますし、結果的に価格も高騰しているので、確かに代替できるものへのニーズはあるのでしょう。

なかなか実用段階に到達できていないうなぎの完全養殖(卵からの養殖)が普及する前に、果たしてナマズの蒲焼きが市民権を得ることになるのでしょうか。10年後くらいにはひょっとして、そんな状況になっていてもおかしくないのかもしれません。

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子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食プロデューサー。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/

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