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日銀「三次元緩和」の終了は日本を再びデフレに突き落とす - 安達誠司

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長期金利の上昇は債券市場関係者の「誤解」

AP

さて、このようなドル調達コストの上昇は、ドルを保有している投資家にとっては、割安で日本円を調達できることを意味している。そのため、ドルを保有している投資家は、マイナス金利で日本国債を購入しても、十分利益を確保できる。ましてや、将来も日本がマイナス金利で国債を購入するという「期待」があれば、債券価格はさらに上昇することも期待できる(いわゆる「日銀トレーディング」)。

以上の要因から、日本の長期金利は急低下してきた。さらにはこうした要因に加え、ドルベースの安全資産に対する需要増は、海外投資家の米国債への選好を高めたことから、アメリカの長期金利をも低下させてきた可能性がある。そして、先進国の長期金利はグローバルに連動しているため、これも日本の長期金利低下に寄与してきたと推測される。

このような長期金利急低下の構図を、9月の日銀の金融政策スタンス変更の思惑が変えた。日銀が「3次元金融緩和」を放棄すれば、前述の「日銀トレーディング(日銀の国債購入による長期金利のさらなる低下を前提とした債券投資)」が機能しなくなる。さらに、2016年7月29日の金融政策決定会合で、日銀は、日本の投資家・企業のドル資金調達コストの増大に対応するため、米ドル資金供給枠の拡大を決めた。この措置は、ドルの調達コストを急速に低下させた。そのため、ドルを保有する海外投資家が「日銀トレーディング」を進めるインセンティブが失われ、海外投資家の日本国債売りが増加したことも、一時的な長期金利の上昇につながった側面もある。

以上のような、一連の長期金利上昇のメカニズムは、日銀によるドル資金供給のスキームを除けば、債券市場関係者の「誤解」、もしくは「希望的観測」に基づくものである可能性が高い。従って、長期金利の上昇も一時的であると考える。

政府・日銀は、現在の日本経済の状況が厳しいこと、とくに再デフレ懸念が台頭しつつあることを十分に認識している。デフレ克服に際して、日銀が採りうる政策メニューは、金利引き下げか、マネタリーベースの拡大以外に考えられない。前述のとおり、債券関係者を中心に台頭した思惑は、金融政策の枠組みでいえば、いわゆる「テーパリング」を意味しており、これは、デフレ脱却後の「出口政策」のスキームにほかならない。デフレ懸念が台頭するなかで、日銀が「テーパリング」することはありえない。

成長戦略の実施はデフレ圧力を高める


また、多くの識者は、日本経済が長期停滞から脱するためには、「構造改革」が必要であるとして、「成長戦略」の実現を強調する。だが、もし仮に、有効な「成長戦略」が実施された場合、日本の潜在成長率が上昇するため、マクロでみた日本経済の「需給ギャップ」は拡大し、逆にデフレ圧力が高まることになる。従って、政府が「成長戦略」を本気で実施する際には、金融緩和は逆に強化されなければならないはずだ。

日銀が9月にどのような追加緩和策を出してくるかは不明だが、アメリカの学界では、量的緩和による「流動性の供給」が、金融資産のリスクプレミアムの低下を促す効果が注目されつつある。しかも、この「流動性の供給」という観点では、「On-the-Run」よりも「Off-the-Run(発行されて相当期間が経過し、流通量が減少したもの)」銘柄の購入がより効果が高いとされつつある(Christensen and Gillan[2016])。現行の日銀の金融緩和政策の限界が「On-the-Run」中心の国債購入によってもたらされているとすれば、このアメリカの学会での研究結果は要注目であろう。

そう考えていくと、長期金利は再び低下基調で推移していく可能性が高いのだ。

なお万が一、日銀が「テーパリング」を選択した場合、日本は再びデフレに襲われるだろう。この場合、国債への選好が高まることが想定されるため、あっという間に長期金利はゼロパーセント近辺まで低下することになろう。そこでマイナス金利政策が廃止されていれば、その時点で債券市場の機能は失われる。残念ながら債券市場の機能回復は、デフレ脱却による「出口政策」局面入り以外に考えにくく、「日銀がテーパリングする」という「希望的観測」も、債券市場にとっては決して希望ではないのではなかろうか。

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