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テスラが巻き込まれるバッテリー戦争 - 土方細秩子

8月1日、テスラ・モーターズがついにソーラー・シティの買収を26億ドルで行うことを発表した。7月26日にはネバダ州レノでバッテリー工場、ギガ・ファクトリーのオープニングセレモニーも行われ、EV用と家庭用、両方のバッテリー分野でのシェア拡大を狙うと考えられている。

早くも黄色信号? 続々とバッテリー工場

ギガ・ファクトリーでは2018年までに年間50万ユニットのEV用バッテリーの生産能力がある、という。しかもこれは第一フェーズのみの数字で最終的な目標は年間に150万台のEVをカバーできるバッテリー生産だという。
しかしながら、ソーラー発電、EV、家庭用バッテリーで究極のエコシステムを作り上げ、それをテスラ1社が管理、世界中に広げる、というイーロン・マスク氏の狙いに早くも黄信号が灯りつつある。

まず、ライバルたちの動向だ。EV「ボルト」をテスラ・キラーと位置付けるGMは、現在北米で自動車メーカーが運営するバッテリー工場としては最大規模のグローバル・バッテリー・システムズを有するが、今年に入りその規模を3倍に拡大させた。さらに今後中国、ドイツでもバッテリー研究所を立ち上げる予定だという。

また、中国企業に買収された米最大のバッテリー・メーカーだったA123も、電力会社のグリッド用バッテリーから再び自動車用バッテリーへ生産をシフトする、と発表した。同社は今後2年間で中国を含めた世界中の工場での自動車用リチウム・イオン電池の生産を倍増し、1.5ギガワット時にする、とも発表した。

GMとA123のバッテリー生産増により、バッテリー価格が今後急激に下落するのでは、という予測も飛んでいる。ギガ・ファクトリーは完成したが時すでに遅し、利益を生み出せない、あるいは初期投資を回収できない施設になるのでは、と囁かれる。

家庭用充電システムでも強力なライバルが登場した。ドイツのソーネン社だ。ソーネンは家庭用充電システムの先駆者で、今年1月にアメリカ支社をオープンさせたばかりだ。しかしテスラが独自の家庭用充電システム「パワーウォール」を最初の3カ月で2500ユニット販売した、と発表したのに対し、ソーネンでは同時期に2600ユニットを販売、とテスラを上回る。ソーネンは今年1月に米ソーラーパネルメーカー、ソーラー・ワールド社との提携も発表しており、今後テスラ/ソーラー・シティとの激しいシェア争いが期待される。

リチウムイオン電池は今後もEVの中心か?

もっと深刻なのは、リチウムイオン電池が今後もEV用バッテリーの中心でいられるか、という問題だ。ナビガント・リサーチ社によると、リチウム・サルファー、リチウム・ソリッド・ステート、次世代フロー、リキッド・メタルの4つの技術が次世代バッテリーとしてほぼ完成の域に近づきつつある、という。

さらに注目されているのが、MITの研究者らが開発を進めるリチウム・オキシジェンだ。このバッテリーは「リチイム・イオンの5-15倍の能力がある」として一時脚光を浴びたが、エネルギーのおよそ3分の1が熱として奪われる、寿命が短いなどのマイナス面が発覚し、下火となっていた。

ところがMIT、北京大学などの研究者が共同で、こうした弱点を克服できるリチウム・オキシジェンの開発に取り組んでいる、という。研究チームによると今後1年以内にプロトタイプを発表、18ヶ月以内にメーカーに販売できるレベルに持ち込める、という。

リチウム・オキシジェンはスマホからEV、家庭用充電システムまで様々な機器に対応でき、研究者は「毎日スマホを充電しなくても良い、というだけでも十分なアピールになる」と自信を見せる。チームは現在目標に向け投資を募っているが、実現すれば現在のバッテリー地図を大きく塗り替えるものとなる可能性がある。

自動車メーカーが現在EVに求めているのは「継続走行距離200マイル(320キロ)レンジ」だ。現在このレベルに到達しているのはほぼテスラモデルS(走行条件による)のみと言える。しかし次世代バッテリーが登場すれば走行距離が飛躍的に伸びる可能性があり、EVを生産する各自動車メーカーも新しい技術に注目している。

こうした環境の中でオープンしたテスラのギガ・ファクトリー。果たしてその勝算は。

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