- 2016年08月10日 09:06
それでも必要な無人機攻撃 - 岡崎研究所
米シンクタンクCSISのJames Andrew. Lewis上席副所長は、7月5日付の同研究所のサイトで、無人機による攻撃は、一般市民に被害を与えるリスクはあるが、反乱グループに聖域を与えないための重要な手段である、と述べています。論説の要旨は以下の通りです。
テロはそのために使われる一つの戦術
無人攻撃の対象をテロリストと称しているが、より正確には、シャリア法に基づく国を作るために現存の政府を倒そうとしている反乱グループとして理解すべきである。テロはそのために使われる一つの戦術である。
反乱を成功させる重要な要素は聖域である。もし聖域が他国の領土にある場合には、その国は領土を他国の攻撃に使用することを禁じる国際法を遵守していないことを意味する。この点が、自衛権と並んで、無人攻撃の合法性の議論に含まれなければならない。
反乱グループを打ち負かすのに、聖域を与えないことが重要であり、そのためには無人攻撃が最善である。当然ながら反乱グループは無人機の使用をやめさせるため政治的手段を講じようとするだろう。よく使われる手段は一般市民の死傷者の数を膨らませ、西側の世論に働きかけることである。しかし米国が一般市民に死傷者が出るリスクを取らなければ、テロによる一般市民の死傷者の出るリスクが増える。
無人機攻撃の反対派は、無人機の攻撃の数とテロリストの襲撃の数との間には明確な関係は無いと批判する向きがあるが、反乱グループとの戦いは簡単なものではない。通常の航空機で爆撃することや何もしないことはより望ましくない。無人機は正統な防衛手段であり、簡単には終わらない困難な紛争でたちの悪い敵に対処するのに必要である。
出 典:James Andrew. Lewis ‘Drone Strikes: Complicated but Necessary’ (CSIS,
July 5, 2016)
https://www.csis.org/analysis/drone-strikes-complicated-necessary
最近、無人機による反政府グループなどへの攻撃が脚光を浴びています。さる5月には、米無人機が、パキスタンに潜伏していたタリバンの最高指導者マンスールを殺害して注目を集めました。
無人機による攻撃批判の一番の理由は、一般市民を巻き添えにする死傷です。この問題は、世論に訴えやすいので、無人機攻撃批判派がよく材料に使います。論説は、もし無人機攻撃をしなければ、テロリストは一般市民を攻撃するので、ある程度の犠牲を払って無人攻撃するのはやむを得ないと言っています。これはあまり説得力のある議論とは思えず、一般市民の巻き添えに対する非難は続くと思われますが、巻き添えを最小限にするための努力はしつつも、ある程度は割り切らざるを得ないのでしょう。
無人機による攻撃で特に問題とされるのが、他国の領土での攻撃です。最近の目立った例では、タリバンの最高指導者マンスールのパキスタン領内での米無人機による殺害があります。米国の目的はタリバンのアフガニスタンでの活動を抑えこむことですが、マンスールがパキスタン領内に隠れていたので、パキスタン領内で無人機で殺害しました。
他国の領土での無人機の殺害については、国際法上の主権侵害の問題が生じます。2012年、国連の人権問題調査官は、米国のパキスタンでの無人機による攻撃は、パキスタンの主権の侵害である、と述べました。これに対しては、パキスタンがタリバンにパキスタン領内に聖域を許し、そこからタリバンがアフガニスタンを攻撃しているのは、パキスタンがアフガニスタンの主権を尊重していないことを意味し、米国のパキスタン領の攻撃を主権侵害という資格はないとの議論があります。
また、「9.11」の直後、米国議会は「軍事力行使権限法」を可決し、「9.11」を計画し、許可し、実施しまたは支援した国、組織、個人に対し、すべての必要かつ適切な力を使用することを米軍に許可しました。タリバンへの対策をこの法律に基づくものとみれば、米国にとって自衛権の発動であり、パキスタン領内のタリバン攻撃も国際法上違法ではない、との解釈もあります。
他国の領土での無人機の使用の国際法上の問題は、一概に違法といえない面があり、今後とも議論が行われるでしょう。このように無人機による攻撃は、一般市民巻き添えの問題、他国の領土に対するものの場合には主権侵害の問題を抱えていますが、米国はその攻撃が有効であるので、これらの問題に対処しつつ、今後とも攻撃を続け、さらには強化していくと思われます。
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