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ケニアでの中国企業襲撃事件の報道にみる中国メディアの変化(六辻彰二)

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8月4日、北京で中国政府とアフリカ各国の首脳による国際会議が始まりました。その直前の2日、ケニアで鉄道建設の事業を行っていた中国企業を、現地の若者らが「不十分な雇用」や「不十分な賃金」への抗議活動の末に襲撃。14人の負傷者を出す事態となりました。

中国によるアフリカ進出には、主に欧米メディアの間で、2000年代半ばから批判的な論調が珍しくありません。中国によるインフラ整備、投資、貿易の活性化がアフリカの経済成長を促す一因になった一方、中国企業による人権侵害や環境破壊は数多く報告されています。中国とアフリカの首脳が一堂に会する会議が行われているタイミングを計ったように発生した襲撃事件は、「アフリカにおける中国」のネガティブな側面を象徴します。

しかし、その一方で、今回の一件からは、中国のメディアワークの変化をうかがうことができます。それは、中国のメディア活用が、新たな段階に入ったことを意味します。

FOCACフォローアップ会合

中国政府は2000年からアフリカ各国を招いた会議、FOCAC(中国・アフリカ協力フォーラム)を3年おきに開催しています。今回は、昨年の第5回FOCACで合意された援助などの進捗状況について確認するフォローアップ会合です。

「アフリカにおける中国」は、アフリカのみならず、世界のパワーバランスにも大きな影響を及ぼすといえます。中国にとってアフリカは、1950年代から、時期によってトーンに違いはあっても、国際的な足場として重要な位置を占めてきました。西側諸国との摩擦が深まるにつれ、国連などでの支持を確保するうえで、数の多いアフリカ各国の重要性は増し続けています

そのため、今回のフォローアップ会合では、昨年の第5回FOCACで約束された600億ドルの資金協力のうち、その90パーセントが既に実施されたことが発表されるなど、両者の良好な関係ぶりがアピールされています。

「一帯一路」構想とケニア

ユーラシア大陸を網羅する経済圏「一帯一路」構想を掲げる中国は、アジアから中東にかけての各地で、高速鉄道網の整備などを推し進めています。

しかし、「一帯一路」は、アフリカにとっても無縁ではありません。今回のフォローアップ会合に先立ち、張明外交部副部長は、アフリカの経済成長の前提としてインフラ整備の重要性を強調しています。さらに、その海上ルートには、インド洋に浮かぶセーシェルや、紅海に面したジブチだけでなく、東アフリカ有数の港モンバサを抱えるケニアが含まれています。

かつて英国の植民地だったケニアは、独立後も総じて西側に近い外交方針をとってきました。冷戦期、ほとんどのアフリカ諸国と異なり、ケニアでは早くから(植民地時代の名残である)サファリなど観光業が盛んだったこともあって、西側とのヒトの出入りが比較的自由だったことは、それを象徴します。トヨタをはじめとする日本企業の進出も盛んで、ナイロビにはアフリカ大陸で珍しい日本食レストランがあります。

しかし、「一帯一路」構想における重要なポイントになったこともあり、近年ではケニアでも中国の進出が目立ちます。中国は大陸有数の産油国である南スーダンからケニアへのパイプライン建設も進めており、それと並行して、内陸のウガンダやルワンダと結ぶ鉄道網の整備も進められています。

中国企業への批判と襲撃

8月2日、そのケニアの首都ナイロビから約140キロ離れた、同国南西部のナロクにある中国国営のCRBC(中国路橋工程有限責任公司)の建設現場に、ナイフなどで武装した約200人の現地の若者らが乱入。14人が負傷した事件は、警官隊が空に向けて発砲するなどして鎮圧されました。現地では、それまで約2週間にわたって、CRBCが現地に十分雇用を生んでいないことを批判する抗議デモが発生しており、今回の襲撃は、その果てのものでした。

アフリカにおいて、中国企業に対する現地の人々からの襲撃は、これが初めてではありません。2000年代以降、爆発的にアフリカに進出するなかで、中国企業は現地とのトラブルを各地で経験してきました。

アフリカでは植民地時代から労働組合の結成が認められ、さらに各地の独立運動では主な政治勢力となりました。そのため、アジア各国と比較して、「労働者の権利」が重視されており(もちろん正規労働者と非正規労働者の間でずいぶん異なる)、法定賃金以下の給料しか払わない、有給休暇や産休・育休を取得させない、超過労働分の給与を支払わないといった中国流、あるいはアジア流の扱いは、アフリカでは労働者からの拒絶に直面しがちです。また、中国企業は多くの中国人労働者や、中国人より賃金の安いパキスタン人などをアフリカに連れていくため、現地で雇用を生まないという批判も集めました。2009年に、アフリカ10ヵ国の労働組合系研究者が中国企業に関する調査結果を発表したことは、これらについての批判がアフリカの労働界から噴出する様相を象徴しました。実際、2012年にはザンビアで、法定最低賃金が支払われないことから、鉱山労働者が2人の中国人マネージャーに暴行を加え、1人が死亡しています

中国の反応

日本を含む西側諸国からの批判に対して、中国は「倍返し」の反論を躊躇しません。しかし、アフリカに対しては事情が異なります。中国にとって、自らの国際的な立場を維持するうえで、アフリカとの友好関係は欠かせないものです。したがって、アフリカから中国批判が噴出するにつれ、中国政府が中国企業への管理を強めようとしたことは、不思議でありません

実際、2007年に既に、アフリカを歴訪した胡錦濤国家主席(当時)は、各国で中国企業に現地の法令を順守するよう呼びかけました。そのこと自体、いわば「恥」とさえいえますが、最高責任者が「法令順守」を呼びかけたことは、「アフリカで大国らしくふるまう」という中国政府の政治的意志を示すものだったともいえます。

政府のこの方針が、中国企業に何も変化をもたらさなかったわけではなく、現地での雇用も目立つようになりました。例えば、エチオピアでは2008年、農業技術の研修を目的とするATDC(農業技術デモンストレーション・センター)の設置が両国政府の間で合意され、2012年には52ヘクタールの土地に学舎、温室、寄宿舎などの建設が完了し、約30人の中国人農業研修員が派遣されるようになりましたが、その造成・建設を受注した広西海外建設集団有限公司は、32名の中国人技術者とともに、約200名のエチオピア人を雇用していました。

つまり、「アフリカとの友好」を強調したい中国にとっては、「現地との軋轢を回避すること」が重要課題となったのです。

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