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原爆投下から71年後ということ

 朝になって広島の原爆記念日であることに気がついた。テレビは広島からの中継になり、「原爆は絶対悪」との広島宣言を伝えていた。しかしその後、画面はリオデジャネイロ・オリンピックの開会式に切り替わり、NHK総合は以後はずっとオリンピック一色になるようだ。

 たまたまチャンネルをBSに切り替えたら、BS1は再放送だそうだが「BS1スペシャル・原爆救護~被爆した兵士の歳月」だったので、それを見ている。当時、江田島にいた「陸軍船舶特攻隊」の少年兵たちも、命令を受けて被災者救護のために爆心地へ派遣されたというのだ。その体験者たちが交互に記憶を語り、映像資料がそれらを裏付けていた。被災者の救護とはいっても、作業の大半は死体の収容とその焼却だった。悲惨をきわめたそれらの証言は、当時の地獄絵図をよみがえらせる。

 当時10代だった少年兵も、今は90歳に近づいている。その人たちが明瞭な記憶で証言できるのは、そろそろ終りに近づいているだろう。71年たったというのは、そういうことだ。沖縄の「ひめゆり挺身隊」の語り部も、初代から次の世代への引継ぎを始めたと聞いている。過去の出来事を「民族の歴史」として記憶するためには、それだけの努力が必要になるということだ。

 番組は私の後ろで今も続いていて、音声が聞こえている。広島への救護に入った軍人たちは、少年兵に限らず、多くが放射能による二次被曝の影響を受けた。番組の主題は、むしろ間接被爆した人たちのその後を追っているようだ。不安を感じながらも、原爆手帖を申請しなかった人が多かったという。原爆にかかわったという事実は、ある時期までは社会的差別の対象だったのだ。これは多くの広島市民をも悩ませた。

 間接被曝した元兵士が、反核の活動家となって世界に向けて発信していることを伝えて番組は終った。考えてみると、あれから71年が経過したというのは、あれから71年間は原爆は使用されていないということだ。使ってはならない兵器として廃絶ができるのか、それとも未来への「安全保障」として整備して保存を続けるのか、その決定をする時期がめぐってきているような気がする。

 カントの智恵を借りるまでもないが、相互の殲滅戦による巨大な墓地の上に「永遠平和」を実現する方法もある。そこまでしても「勝ち残りたい」人たちがいるのは事実だが、自分が滅ぼされるリスクは考えないのだろうか。もし勝ち残ったにしても、死人の山を築いて勝利を喜ぶことができるのか。広島は、この世に「絶対悪」があることを伝えている。

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